【ナレーター】
「コクヨのヨコク」は、同社を象徴するキャッチフレーズのひとつであり、パーパスにも組み込まれている。その言葉の真意に迫った。
【黒田】
当社の社会における存在価値は、単に商品やサービスで、この世の中の社会課題を解決することではありません。不透明な未来に対して働き方、学び方、暮らし方をどう新しくしていくか。それを世の中に提案し続けることが当社の役割ではないかと考えています。
参画している社員の目的は、未来にイノベーションを起こしていくこと。チャレンジをしていくこと。そのうえで、「未来のあり方をヨコク」していくことが、コクヨの社会における役割です。それを社員やパートナーと一緒に実現していきたい。
これまで、過去から現在において当社はたえず「ヨコク」をし続けてきました。。今後もそれは変わらずに、お客様のニーズに提案し続けていくこと。それこそ、これからの当社の役割です。「コクヨのヨコク」というキャッチフレーズにはそういう思いがありますし、その思いを皆様が受け止めてくれていると思っています。
【ナレーター】
企業規模が大きくなるにつれ、全従業員が同じ方向をむいて進むことは容易ではない。黒田が、事業に取り組むうえで重要だと語る、あることとは。
【黒田】
やはり「お客様のためになっているのかどうか」。それが一番の評価基準だと思います。たとえば、ある社員が他の人の3倍の成果を出した。そういう人も素晴らしいのですが、お客様にとって何の課題を解決したのかは見えにくい。
チャレンジした結果、お客様にとってよい価値がもたらされたらみんなで大喜びする。それこそが私たちの価値になります。言い換えると、ターゲットとする顧客のシェアと、そのお客様から得られる粗利率。それによって生み出される総利益率が高いかどうか、です。
たとえばスポーツ系のペンケースがあるとします。この商品のターゲットは、中学生全員ではなく、中学生の男子限定です。この属性に当てはまる層に買ってもらえているかどうか。
その商品が、ペンケース市場の中で売り上げが大きくなくても、ターゲットとするお客様に対して、半分もしくは30%ぐらいのシェアがとれたら、それは大成功なのです。そうしたことを、当社はずっとやってきました。
売上規模が大きいかどうかではなく、狙った層のシェアが高いのかどうか。粗利率が上がっているかどうか。これらを重視して、社員のみんなと一緒に振り返り、PDCAを回しています。
【ナレーター】
自らの社会における役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義したコクヨ。見据える展望に迫った。
【黒田】
今の事業をもっと「コト化」していく。キャンパスノートも、来年には50周年を迎えます。リブランディングについて今、社内で議論していますが、「キャンパス」というブランドが、ノートのブランドとしてだけではなく、「学生を応援していくブランド」に変わるとどうなるのか。
もっと便利に、もっと安心して使ってもらうために、ノートの品質や機能の向上を追究していますが、それにより学び方はどう変わっていくのか。それをノート以外にも展開していけば、よりお客様にとって、さまざまな課題を解決できる可能性が広がるのではないかと考えています。
具体的な事例で言いますと、2023年にはキャンパスブランドの自習室「STUDY WITH Campus」を、トライアルで1店舗オープンしました。そういう場所を提供したらどうなるのか、新しい試みを今、どんどん広げています。
お客様の未充足ニーズをいかに新しいサービスや事業に展開できるか。これを続けていくと、おのずとWORK &LIFESTYLE Companyという目指す形に進んでいくのではないかと思っています。
【ナレーター】
求める人材像について、黒田は次のように語る。
【黒田】
世の中をより良くしていくことに、高いモチベーションを持っている方に来ていただきたいですね。また、当社にはいろいろな種類の仕事があります。その中で、ひとりの人として自分の意見をはっきり言えること。お客様の立場に立って自分の意見が持てる人だといいですね。
要するに、お客様に対してこうしていきたい、お客様の課題をこう解決していきたい。そのために社内をこう変えていきたい、自分はこう行動していきたい、という意見を持っている人。そういう方に来ていただけると、より面白い仕事を一緒につくっていけるのではないかと期待しています。
■大事にしている価値観
【黒田】
「世界で一番風通しのいい会社をつくりたい」。それが「私のヨコク」です。風通しのよさが個人の幸せや組織の成長につながることを、私自身が証明してみたい。そう思っています。
風通しというものは、なかなか定量化できません。企業の成長や仕事で勝った負けたという部分と比べれば、風通しの良さというのは後回しにされてしまうことが多いでしょう。
でも、やはり風通しがいいことが、新しいイノベーションにつながりますし、個人のやりがいにもつながると思います。だからこそ、コクヨがそれを社会に証明することができたらいいなと考え、「世界一風通しのよい会社」という目標を掲げています。