【ナレーター】
調剤薬局の運営を中心に、かかりつけ薬剤師や在宅医療など、地域医療に貢献するサービスを提供する「クオール株式会社」。
コンビニや家電量販店、駅構内など、利用者の利便性を追求した出店形態に重きを置き、現在、グループ全体で全国に約900店舗、展開している。
また、抗がん剤などの高度先端医療に対応できる薬剤師の育成にも注力しており、利用者のクオリティオブライフの向上にむけて、挑戦を続けている。
薬剤師として現場を歩み続けてきた経営者が語る、調剤薬局、薬剤師の目指すべき姿とは。
【ナレーター】
自社の強みについて、柄澤は現場の薬剤師が自ら活躍するアイデアを出し、それを積極的に採用する風土にあると言う。
【柄澤】
コロナ禍の中、薬剤師はワクチンを計画通りに提供するという役割がありましたが、ある社員から東京ドームでワクチンの大規模接種の会場が立ち上がるという情報をもらいました。
約7万人分のワクチンを提供しなくてはいけないということでしたが、それをクオールの薬剤師のみんなでやりませんかというアイデアがあがりました。
そこで、メンバーを選抜して、20人の薬剤師が東京ドームでワクチンを調整したのです。
その時に「薬剤師」と書いたビブス(専用のベスト)を付ければ薬剤師だとわかってもらえるのではないかということで、クオール薬剤師という文字を入れたビブスを作って、それを身に着けた仲間が活躍してくれました。
薬剤師が会社の医療の継続をするために率先して手を挙げてがんばってくれるところが、私の誇りでもありますし、会社の強みであると思います。
【ナレーター】
柄澤のクオールでのキャリアスタートはパートだった。34歳のときに時短勤務の薬剤師として入社。その中で気づいた、薬局の新たな存在価値とは。
【柄澤】
最初は薬局の薬剤師というのはどういった役割なのか掴めなかったのですが、実際に勤めてみると、健康について地域で一番相談しやすいところというのは、病院よりも薬局ではないかと、医療に導くファーストアクセスの一番いい場所なのだと実感しました。
薬局で在宅の患者さんの担当を多くさせていただくうち、薬剤師や医療チームが活躍する場がそこにこそあるのではないかと、やりがいを感じました。
【ナレーター】
着実にキャリアを重ね、部長職に抜擢された柄澤だが、同時期に子どもの病気や親の介護など、プライベートとの両立がうまくいかず、苦悩する。その時、上司から言われたある言葉が、現在も印象に残っていると振り返る。
【柄澤】
抜擢してもらった上司にも迷惑がかかるし、自分に期待してくれる部下にも迷惑がかかるので、いったん部長という職から降りた方がいいのではないかと思い、上司に相談しました。
その時に、「あなたが部長であることが大事で、もし続けられないとか心配なことがあるとか、助けてほしいことがあるなら正直に言ってほしい」と。「ただ、あなたに部長としていてもらいたい」と言っていただきました。
そこまで言われると、何とかがんばらなくちゃいけないと思い、それで乗り越えました。今でもその上司には感謝しています。
【ナレーター】
これまでの経験から、仕事を続けていくためには3つの要素が必要だと柄澤は語る。
【柄澤】
1つ目は部長として感じた「やりがい」、2つ目は部長をやらせてもらえる「環境」、そして3つ目は「支援」というのがとても大事だと思いました。
支援については、会社の制度以外にも、家族の支援や、行政の支援も大切です。
悩みを抱えている社員と話す時は、この「やりがい」「環境」「支援」のどれかが足りていないのではないかと思い、耳を傾けるようにしています。この3つがなければ仕事というものは続かないのではないかと思っています。
【ナレーター】
そして、2020年に代表取締役社長に就任。当時は自身にその職責が担えるのか不安だったが、ある人物からもらった言葉で、決意を固めたという。
【柄澤】
任命していただいた、今のクオールホールディングスの中村(敬)社長から「クオールの企業理念を実現することだけを考えたらいいんだよ」と言われたんです。
弊社の企業理念は「わたしたちは、すべての人の、クオリティオブライフに向き合います。いつでも、どこでも、あなたに。」です。
「あまり深く考えず、悩んだ時は、まずは企業理念に沿っているか沿っていないかということに向き合えば良いのではないか」と、後押しいただきました。