【ナレーター】
業務用厨房機器を製造・販売し、学校給食の分野において国内トップクラスのシェアを誇る「株式会社中西製作所」。
学校以外にも、病院、福祉、学生・社員食堂、外食産業など、販売マーケットを拡大させているほか、全自動の洗浄、炊飯システムの製造も手掛け、大量調理に適したサービスを提供している。
近年では、自社のテストキッチンを活用した他企業との製品開発や、水蒸気による加熱調理技術の研究などを行い、海外展開も視野に入れて事業の拡大を進めている。
変革に挑戦し続ける経営者の原点と、事業を通じて実現したい未来とは。
【ナレーター】
自社の強みについて中西は、創業時から実績を蓄積してきた学校給食事業でのノウハウにあると語る。
【中西】
当社の売り上げの50%以上が、学校給食によるものです。昔からつくり続けてきましたので、機械自体が非常に使いやすいものになっています。
また、学校給食もいろいろなプランニングがあるので、「そちらの学校様にはこういうのがいいですよ」「そちらの給食センターにはこういうプランニングがおすすめです」というのを提案できる。そのように、長年蓄積してきたノウハウがあるのが当社の強みです。
やはり学校給食というと特殊な分野だと思いますので、ノウハウは大事だと感じています。
【ナレーター】
5代目の経営者である中西は、学生時代から家業を継ぐことを意識していたが、当時社長だった父親から別の業界を経験することを勧められ、大手百貨店に就職。
営業職を約4年経験したのち、2008年に中西製作所へ入社した。入社当時の社内の状況と、自身が起こした行動について、次のように振り返る。
【中西】
当社のようなBtoBの会社は、業務がシステム化されているだろうと思っていたのですが、実際は手書きが中心でした。パソコンも課に1台ぐらいしかないような状態でしたので、当時はレトロな会社だと感じました。
また、入社した当時は社員の仕事が非常に忙しく、新人を育成できる環境にはありませんでした。「見て習え」という風潮がまだ残っていたのです。
私が管理部長になったタイミングで変えようと試み、携帯電話の取り扱い方を変えたり、1人1台ノートパソコンを持てる環境を作ったりしました。そして、社外や家でも仕事ができるようにし、時間を創出できるように力を入れました。
【ナレーター】
その後、副社長を経て、2018年に代表取締役社長に就任。業務の効率化をさらに推進する中西に対し、社内では懐疑的な声もあがったが、これからの中西製作所はどうあるべきかを意識して譲らなかった。
【中西】
システマティックな会社にしたいと思っていました。まだDXという言葉が浸透していない頃でしたが、システム化して誰がやってもどんな仕事でもできるような形を取るのが重要だと考えていたのです。
業務をマニュアル化して、属人的な進め方を脱しないと、企業としての今後は難しいと思い、システム化に注力しました。
パソコンを外に持ち出すことは、セキュリティーの面もあり、当時の当社ではNGでした。ただ、さらに深くその理由を聞けば、「これが漏えいしちゃダメ」、「あれが漏えいしちゃダメ」となるわけです。
そこで私は、「それって本当に漏えいしちゃダメなの?」というところから精査しました。
本当に漏えいしちゃいけないもの以外は、たとえ外部に見られて真似されたとしてもいいのではないか。リーディングカンパニーとして、どんどんクリアな会社になり、大きい会社にしていけばいいじゃないか、という話をしました。
特に問題視されたのが、原価のデータが外部に見られたり抜かれたりするという点です。競合他社に見られると、やはり不利になるのではないかという意見がありました。
しかし私は、当社は公明正大にちゃんとした金額のもとに、ちゃんとしたものを作っているわけですから、見られても問題がないという話をしました。他と同じ行動をするのではなく、他より先んじて何かやろうという感じです。