【ナレーター】
外食事業における高付加価値戦略を実現するためには、料理とサービス、そして空間のバランスが重要だと語る阿部。その真意とは。
【阿部】
おいしいのはもちろんですが、良いサービスも欠かせません。
良いサービスという基準が何かと言った時に、お客様への思いやりや、この方たちはたくさんの接客を望んでいるのか、望んでないのか、相手の立場に立って考えながら行うことが必要です。
それから、料理とサービスにふさわしいお店づくりができているかどうか。Atmosphere(アトモスフィア)と言いますけれども、店舗の雰囲気、空間づくりも大切だと思います。
頑張らなければいけないと思っていることは、お料理の価値に合った空間づくりとサービス。それがバランス良くできているかどうか。
例えばロイヤルホスト。私が入社した頃よりも、机の幅はお二人様席で20センチぐらい広くなっています。当然ひとつのテーブルに載せられる量も増えます。
食卓としてメインのお料理とサラダ、スープ、ドリンクが載っても十分な広さの空間を用意することで、食が演出されますし、しつらえと言いますか、お客様お一人ずつに与えられた空間をしっかりつくっていくこと。
こういう積み上げに手を抜かず、しっかりと考えて、経営姿勢を守っていくことが大事だと思います。
【ナレーター】
2024年7月、海外初の「ロイヤルホスト」の直営店をシンガポールにオープン。今後、海外展開に力を入れ、改革を推進していくと語る。阿部が思い描く展望とは。
【阿部】
新しいチャレンジをどんどんやっていきます。10年後、日本の人口も当然減少していって、高齢化もさらに進み、苦しい時代が来る。人手不足もきっと解決していないでしょう。
しかし、社会全体で市場が減少しても、守るべき方向性や道筋をしっかり持って進んでいけば、そのようなところに人は集まるのではないかと思います。
外食産業全体が成長せずに縮小したとしても、まだまだ十分成長できるのではないかと思います。そのためにも、まずはしっかりと国内事業を成長させます。
それと海外。今年の7月、シンガポールにロイヤルホストの直営店をオープンしました。そこを起点に、海外事業を拡大させていくつもりです。
そして、ポートフォリオの中ではホテル事業も持っていますので、こちらにも注力していきたい。すでにある4つの事業を、海外を含めた5つの事業にできるようにしていく。その5つの事業がすべて成長していくシナリオに沿った10年にしたいと考えています。
【ナレーター】
5つの事業を成長させるために必要な人材像について、阿部は2つのポイントを挙げた。
【阿部】
チャレンジする人です。とにかく新しいことをやってみたいと思う人。それから、新しいことに臆することなく進めていこうと思う人。
一方、それぞれの企業には主力事業があって、何十年間も積み上げたものがある。その企業の沿革を知ることも大事ではないかと思います。ですから、チャレンジをすることと、これまでの道のりを学んでいくことの両方の視点が必要ですね。
ただ新しいことをやるのであれば、ベンチャー企業でもいいわけです。弊社は75年の歴史をもつ、古く長く続いている企業だからこそ、会社のいいものを残しながら、守るべきものは守り、新しく参入できるものにはチャレンジする。
この2つの考え方を持つことが、歴史ある企業に挑戦する人に求めることです。
ー大事にしている価値観ー
【阿部】
チーム力を最も大事に考えています。改めてコロナ禍が明けてみると、チームの大切さ、人の大切さを強く感じるようになりました。
まずは人がいないとダメだ、ということを実感しています。機械ではなく、人だから成し得ること。それは何だろうと考えながら、しっかりと体現していくことが必要だと思います。
だから今、チーム力を整えていくことが当社にとっての最重要課題です。ロイヤルホールディングス全体にとって必要不可欠なことだと思います。