【ナレーター】
ロイヤルホスト、天丼てんやなどの外食事業をはじめ、空港・高速道路のサービスエリアや病院など大規模な施設で食を提供するコントラクト事業、リッチモンドホテルを運営するホテル事業、さらに食品事業と幅広く事業を展開する、ロイヤルホールディングス株式会社。
70年以上にわたり、安全・安心で美味しい“食”の追求と、心が通う“ホスピタリティ”を提供し続ける同社は、2024年現在、国内外に668店舗を展開している。
近年では海外展開にも注力しており、グローバルで成長する“食&ホスピタリティ”グループを目指し、その歩みを着実に進めている。
経営者が語る、ロイヤルホールディングスの成長の源泉と、思い描く未来像とは。
【ナレーター】
自社の強みについて、阿部は譲れない2つのポイントを挙げる。
【阿部】
ポイントのひとつ目はセントラルキッチン(集中調理施設)機能があること。ひとつの商品を最初は手鍋でつくりますが、それと同等の品質を大量生産できるセントラルキッチンが最大の強みだと思います。
2つ目は現場力。各店舗には調理人とマネージャーがいます。調理のスペシャリストがいて、料理の責任者が美味しい料理を提供することに責任を負うことが強みだと思います。
マネジメント面では、チェーン店で培われたノウハウが、専門店やホテルのマネジメントでもしっかり活かされています。
そして、今までチェーンのセントラルキッチンでつくっていた調理技術が、ホテルの朝食づくりにも活用できる。その食まわりの強みを最大限に活かせているのではないかなと思います。
さらに、宿泊業の中でも差別化できるポイントは接客です。飲食事業で磨いた接客、調理のノウハウも強みになっている。複合的にできることが増えているのではないかと思います。
【ナレーター】
阿部の原点は、あるお客様とのエピソードにある。新卒で入社後、ロイヤルホストに配属され、現場仕事に従事。より多くのお客様に来ていただきたいと仕事をこなす中、ある一組のお客様との出会いが、その考えを大きく変える転機となった。
【阿部】
家族で来られていたお客さまがずっと私を見ていました。
「なぜ、このご家族はずっとこっちを見ているんだろう?」と不思議に思い、その時、私は店長としてアルバイトに教えている最中だったので「お客さまがこちらを見ている時は、何かしてほしいことがあるかもしれないから、近くに行ってごらん」と店内を回らせるようにしていました。
でも、何回、そのご家族の所に行っても、特に何もご要望はないのです。「おかしいな」と思って私が直接行ってみると、お母さんから「今日この子が店長の絵を描いてきたんです。それを店長に直接渡したくて、ずっと機会を待っていたんです」と言われて。
それをお伺いして、「レストランにはお客様の思いや家族の団らんも大切で、料理を効率的に提供するだけではなく、それ以外のサービスも求められているんだ」と、改めて感じるようになりました。
そこから効率だけではなく、我々が大事にしているホスピタリティーサービスをすごく意識するようになりました。
きっとこの子たちが大きくなった時に、昔、絵を描いたことを思い出したり、子どもの頃、親がよく連れてきてくれたお店に、今度は自分が親になった時に子どもを連れて行ってあげたいとか。
そういうお店にしていきたいな、と強く感じた思い出があります。
【ナレーター】
その後、順調にキャリアを積み、子会社の代表を務めた後、2022年にロイヤルホールディングスの代表取締役社長に就任。打診を受けたときは、まさに青天の霹靂だったと振り返る。
【阿部】
何かの冗談だろうなと、最初は思いました。キャリアを積んだという自信も自覚もありませんでしたから。
ただ、とにかくその時に思っていたのは「早くコロナ禍からなんとかしていきたい」ということ。外食の良さがこのまま廃れていくのは絶対にだめだ。そんな気持ちが強くありました。
2期連続の赤字から早く脱出しなければいけない。自分ひとりでできるものではないので、みんなの力を借りて一緒に乗り越えていきたい、という思いでしたね。