
インタビュー内容
【ナレーター】
松坂屋や三越など、老舗の呉服店業から発展した百貨店の中で、髙島屋は「新規参入のチャレンジャー」であると語る村田。その真意に迫った。
【村田】
1831年に創業した髙島屋ですが、最初は古着商でした。いわゆる呉服系の百貨店だとは言われていますが、呉服ではなく古着で始まっているんです。
たとえば、同業でいうと松坂屋さんですとか、三越さんですとか、大丸さんというのは、もともと呉服系で、弊社よりもっと前に創業して歴史を築かれてきた会社さんです。そういった会社からすれば、我々は後発ですね。百貨店業界において言えば、新参者なわけです。
そのため、いろんなことに対して、ある意味アバンギャルド(革新的)にチャレンジしていくことが大事で、それに髙島屋はずっと取り組んできました。
たとえば、従来の呉服だけではなくて新しいアートを取り入れた呉服を提案するなど、そういうことをやってきた積み重ねが今の髙島屋です。2031年に創業200周年を迎えますが、そういう姿勢は変えてはならないと思っています。
【ナレーター】
「いつも、人から。」という経営理念のもと、社長就任後も従業員の声を直接聞く機会を積極的に設けている村田は、最適な労働環境づくりこそが経営者の役割であると語る。
【村田】
ものすごく頑張っている現場の人たちにできるだけ報いて、いい風土の会社にしていきたいという思いが強いので、カスタマーハラスメントの対策に向けた基本指針を作りました。
対象は、直接雇用の従業員だけではありません。店頭では直接雇用社員が2割ぐらいで、8割の人は取引先からいらっしゃった従業員の方です。「現場全体を守る」という思いから、そういった方たちをすべて包含した、カスタマーハラスメントに関する基本的な考え方を取りまとめました。
それ以外にも、魅力ある産業になるためには、長時間労働や労働環境を改善し、できるだけいい形にしていきたいと思っています。そこで1月1日と2日を休業とし、3日からの営業にするように踏み込みました。
全体の労働時間をできるだけ圧縮し、質の高いサービスをお客様に提供していけるような環境づくりをしていきたいと思っています。
私どもが考えている営業力の強化というのは、魅力ある商品・サービスの提供はもちろんなんですが、それを進めていくのはやっぱり人です。そういった意味から、「日本一の社員食堂を作ろう」と考え、非常に魅力あるメニュー作りをしてもらっています。
従業員の皆さんからも、大変好評を得ている取り組みです。
【ナレーター】
今後は国内、海外の店舗はもちろん、専門店やECサイトにおいても、百貨店ならではの質の高いサービスを一貫して提供していきたいと語る村田。見据えている展望とは。
【村田】
日本経済は、少子化と人口減少の影響で、どうしてもマーケット的には縮小していくことが想定されますので、ASEANの4店舗を主軸に展開を進めていくことを考えています。とりわけ成長が著しいベトナムに集中的に投資をして、商業や不動産関係も含めた開発を強力に進めていくことが今の我々の戦略です。
百貨店と専門店、そしてEC。こういった総合的なサービスの提供が我々の特徴であり、アドバンテージにすることが必要です。その中で一つの課題として挙げられるのは、お客様から見たときに百貨店で受けられるサービスを、専門店でも同じように受けられるかどうかです。
たとえば、どこでも同じようにカードが使えるようにサービスの品質を統一するべきです。国内と海外においても同じです。たとえばシンガポールのお客様が日本に来たときに、同じサービスを受けられるかどうか。日本のお客様が海外に行ったときにも、同じような質のサービスを受けられるかどうか。
そのように、国境を越えたシームレスなサービスの提供が必要だと思っています。それができるかどうかがお客様の支持を得て成長していくための大きなポイントになるでしょうね。
【ナレーター】
求める人材像に「挑戦できる人」を挙げた村田。その理由を、当時感動したという柏店の店長を務めていたときのエピソードを交えて、次のように語る。
【村田】
通常、屋上では焚き火や裸火を使ってはいけません。消防で禁止されているのです。そんな中、「1日何キロだったら炭を使ってもいいか」と消防署に掛け合い、交渉してきた男がいたんです。それに、私は感動しました。
そういう規制がある中でも、「できないだろう」「ダメだろう」と諦めない人が、企業を成長させていくんじゃないか。諦めない人たちが多くいると、会社も新しいことに挑戦していけるんじゃないかと思っています。
―大事にしている言葉―
【村田】
大切にしているのは、「人には親切にしなさい」と、「勇気を持って行動することが必要である」という父の言葉です。いろいろな立場を経験するうちに、これが非常に重要なことだと感じるようになりました。
親切にすると喜ばれるのですが、勇気を持って何かやるとだいたい叩かれますよね。でも、言わなかったことで後悔するよりも、言って多少の波風を立てて叩かれる方が、自分自身の人生にはいい影響があるのではないかと思っていますし、これからもそうやって生きていきたいですね。

経営者プロフィール

氏名 | 村田 善郎 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1961年10月26日 |
出身地 | 東京都 |
座右の銘 | 人には親切に、勇気を持って。 |
1985年 3月 慶應義塾大学法学部卒業
2012年 3月 一橋大学大学院 国際 企業 戦略研究科 経営法務 修士課程 修了
職歴)
1985年4月 株式会社髙島屋 入社
2011年5月 同社 営業本部 柏店長
2013年2月 同社 執行役員総務本部副本部長、 総務 部長 、 賃料管理室長
2014年2月 同社執行役員総務本部副本部長、総務部長、賃料管理室長、企画本部開発グループ長、アジア開発室長、日本橋再開発 計画室副室長
2015年5月 同社常務取締役企画本部副本部長、経営戦略部長、IT推進室担当
2017年8月 同社常務取締役(代表取締役)総務本部長、企画本部副本部長、経営戦略部長、秘書室、IT推進室担当
2018年3月 同社常務取締役(代表取締役)企画本部長、IT推進室担当
2019年3月 同社取締役社長(代表取締役)CSR推進室、業務監査室担当
2020年3月 同社取締役社長(代表取締役)業務監査室担当
2021年11月 同社取締役社長(代表取締役)営業本部担当、業務監査室担当
2024年5月 同社取締役社長(代表取締役)業務監査室担当
現在に至る
会社概要
社名 | 株式会社髙島屋 |
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本社所在地 | 大阪府大阪市中央区難波5丁目1番5号 |
設立 | 1919 |
業種分類 | 小売業 |
代表者名 |
村田 善郎
|
従業員数 | 6845 名 ※単体 2024年2月時点 |
WEBサイト | https://www.takashimaya.co.jp/index.html |
事業概要 | 百貨店業・法人事業・通信販売事業・グループ事業 |