【ナレーター】
調理や下ごしらえを均一な品質で行う「セントラルキッチン」は、効率を重視するチェーン店運営に欠かせない要素だ。しかし、サンマルクホールディングスにはそれが存在せず、全店でスタッフが調理を行う。
一見、非効率に見える現場の裏には、客観的でシビアな経営ロジックが隠されていた。
【藤川】
理由は二つあります。一つはシンプルに、お客様に「できたて」を提供したいから。もう一つは、セントラルキッチンを置いてしまうと、「工場を稼働させること」自体が目的化してしまうリスクがあるからです。
工場である以上、「最低ロットでこれくらいは生産する」という計画に基づいて動きます。そうすると、万が一お客様からの評価が芳しくない商品があったとしても、生産をストップすることが難しくなる。「評価はイマイチだけど、工場が動いているから作らざるを得ない」という意思決定に陥ることを懸念しています。
店内調理であれば、お客様の反応を見てすぐに見直すことができます。よりお客様に喜んでいただくことを最優先に考えたとき、当社にはセントラルキッチンを持たないスタイルが望ましいという結論に至りました。
【ナレーター】
2026年5月、サンマルクホールディングスは本社を岡山から京都へと移転した。それは単なる移転ではなく、グローバル展開と次なる成長を実現するための重要な一歩だった。
【藤川】
京都移転には大きく3つの目的がありました。「グローバル化の進展」「商品開発力の強化」そして「採用力の向上」です。
まずグローバル化については、「京都勝牛」をはじめ、日本の食のレベルの高さを海外へ積極的にアピールしていきたいと考えており、京都というブランドがその強い後押しになります。
次に商品開発力の強化。京都は食のレベルが極めて高い街です。人口10万人当たりのミシュラン星の数で見ると、実はパリを抜いて世界1位なんですよ。まさに世界一の美食都市です。
そうした環境で商品開発を行うことが、グループ全体の開発力向上につながると確信しています。
最後に採用面です。京都市は人口の10%以上を大学生が占める学生街であり、関西圏での新卒採用において非常に有利です。また、「きっかけがあれば京都に住んでみたい」と考える方は全国にいらっしゃるため、採用力の底上げに大きく寄与すると考えています。
【ナレーター】
グローバル化の足がかりとなった「牛カツ京都勝牛」などの買収。藤川の「勝てる市場選び」が、サンマルクホールディングスを更なる高みへ押し上げようとしている。
【藤川】
M&Aを検討した当時、訪日外国人(インバウンド)は年間3000万〜3500万人規模でした。政府が年間6000万人を目指す中、日本の人口が多少減少しても、外食需要はインバウンドである程度カバーできると想定しました。
しかし当時の当社の業態を振り返ると、インバウンドのお客様を十分に取り込めているとは言えませんでした。そこで、国内で商売を続けていく上でインバウンド層に強い業態を取り入れる必要があると判断し、寿司、天ぷら、うなぎ、牛カツなどをターゲットに絞りました。
特にカツに関しては、世間的には「とんかつ」が主流ですが、豚肉はイスラム圏の方など宗教上の理由で召し上がれないケースがあります。その点、「牛カツ」であれば宗教的な制約が少なく、グローバル展開もしやすいと考え、買収に至りました。
我々のM&Aの基本的な考え方は、「現在、自社に足りないピースをどう埋めるか」。これが最も重要なポイントです。
【ナレーター】
伝統を「質」で継承し、未来を「決断」で切り拓く。
最後に、これから社会へと踏み出す若手ビジネスパーソンに向けて、藤川から伝えたいメッセージがあるという。
【藤川】
企業とは「環境変化適応業」だと思っています。だからこそ、働く個人の皆さんも、そもそも変化を好み、変化を愛する姿勢を持つことが大切です。
最近は「コスパ」や「タイパ」が重視される時代ですが、たまにはそういった効率性を忘れて、何かに夢中になり、熱中して取り組んでみる経験が、ビジネスパーソンとしての成長に必ず活きてくると思います。
【ナレーター】
環境が変わることを恐れるのではなく、自ら変化を起こす。目指す未来に向けて、サンマルクホールディングスは今日も歩みを進めていく。