少ない投資で最大の成果を! 『パインアメ』のマーケティング手法とは


パイン株式会社 代表取締役社長 上田 豊

※本ページの情報は2017年8月時点のものです。

60年以上親しまれ続けている『パインアメ』を製造するパイン株式会社。近年、様々な企業が『パインアメ』と自社製品とのコラボレーションに乗り出しており、現在でも10種類以上のコラボ商品が市場に出ているという。多くの企業からコラボのオファーが来る状態を、同社はいかにしてつくり出したのだろうか。前回のインタビューに引き続き、同社代表取締役社長、上田豊氏に、コラボレーションに至るきっかけや、今後の戦略などについて話を伺った。

上田 豊(うえだ ゆたか)/昭和24年(1949年)大阪府生まれ。慶應義塾大学卒。食品関係の商社に3年半ほど勤めた後、昭和50年(1975年)にパイン株式会社に入社。平成3年(1991年)4月、代表取締役社長に就任。全国飴菓子工業協同組合理事長(現任)。

コラボレーション 成功の要因

―『パインアメ』とのコラボレーションは、食品に限らず多様なジャンルの商品がありますが、その中でも最大のヒット商品は何でしょうか?

上田 豊:
コラボレーション企画の中で最もヒットした商品は2015年に期間限定で発売された『噛むブレスケア パインアメ味』です。桁違いの売れ行きでしたね。最近では、様々な業界からコラボレーションのご依頼を受けます。『わさビーフ』が有名な山芳製菓さんとコラボした『パインアメ味のポテトチップス』もインパクトがありますよね。食品関連はもちろんのこと、エコバッグや手拭いなどにもコラボレーションが波及しており、『パインアメ』のPR活動に繋がると期待しています。

―コラボレーションに踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?

上田 豊:
認知度を向上させたいという思いが発端です。テレビコマーシャルもかつては行っておりましたが、多額の投資が必要な上、昨今の状況では効果も以前ほどは望めません。『パインアメ』は長年お客様に愛されてきましたが、商品としてやはり売上を伸ばすことは必要です。ご愛顧頂き、利益をきちんと出すことでまたそれを商品に還元していくという、良い循環を作るためにも、なるべくローコストでプロモーションを成功させる手段はないだろうかというのが、課題としてありました。

コラボレーション企画や取材のお申込みを頂いた時には、とにかく先方が必要とする情報を最大限提供し、丁寧な対応を心掛けておりました。そうすることで、徐々にオファーが増えてくるようになったのです。最初の依頼自体は偶然だったかもしれませんが、その偶然を大切に育てていったことが功を奏したのだと思います。特にあべのハルカスの展望台で販売されている『パインアメソフトクリーム』が成功を収めた頃から、コラボレーションのオファーが急増しました。コラボレーションの成功で『パインアメ』自体の売上の伸び率も上昇しています。

地域と「共生」を図る

―コラボレーション以外にもローコストで効果的な成果を出すような取り組みはされているのでしょうか?

上田 豊:
弊社では地域との関係性を非常に大切にしています。地域との共生を図ることで、商品の知名度を上げ、食して頂く機会をつくることができるのです。ローコストにも関わらず、成果が大きいというのも特徴です。やはり足元のお客様ほど大切にしなければなりません。大手企業のように大きな投資で広告を打たなくても、中小企業ならではのやり方で知恵を絞って実行できることはたくさんあります。

自社の強みを理解し、顧客を見極めよ

―今後、どういった市場に注力されていきますか?

上田 豊:
現在、コンビニエンスストアが流通の中では非常に強いというのは事実です。1店舗当たりでの売上が小さくても、店舗数の多さを鑑みれば、全体では大きな利益になります。しかし、コンビニに商品を卸しても、売上が上がらない時にかかる弊社の負担は大きく、リスクもあります。ですので、やはりドラッグストアやスーパーマーケットなどへの流通も並行して力を入れていかなければならないと考えています。

「自社の強みを理解して、自社商品を購入する顧客層の見極めが最も大事」と上田社長は語る。

―海外展開を含めた販路の拡大や新たな市場開拓はお考えでしょうか?

上田 豊:
次の段階に行くのには、まず国内市場に注力し、経営の質を向上させる必要があります。生産力の上限を振り切ってまで量の拡大を求めてしまうと、価格競争など、無駄な体力を使うことになってしまいます。そんな状態では生き残っていけないでしょう。


一番大事なのは、自社の強みを理解し、自社製品を購入されるお客様は誰なのかを見極めることです。1憶3,000万人をターゲットにしてはいけません。それを求めては体力が持ちませんからね。そこに力を注ぐなら、第二の柱となる商品の開発や人材育成を強化する方が先だと考えています。

“伸びる法則”を模索する

―少子化が進む中、近年、キャンディ市場にも影響は出ているのでしょうか?社長のお考えをお聞かせください。

上田 豊:
飴菓子の市場自体は、生産ベースで約1,850億円、飴菓子全体の売上ベースでは約2,400億円です。これはここ10年間大きな変動はありませんので、決して市場が減少傾向にあるとは考えていません。飴菓子は子どもだけがターゲットではなく、シルバーの方も召し上がります。企業数を見れば、弊社が創業した時代より現在の方が減っていますが、逆に販売数は当時から比べたらかなり増加しています。マーケットの規模に関わらず、「伸びているところは伸びている」というのが現状です。ですので、私は、伸びる方法論を探ることのほうが重要だと考えています。試行錯誤を重ねた新しい切り口が、これからもっと市場に出てくるのではないでしょうか。


―今後増えてくると予想される輸入菓子などについてはいかがでしょうか?

上田 豊:
やはり酪農が盛んな欧州のミルク系キャンディは非常に美味だと思います。現在、キャンディには関税がかかっていますが、将来的にもしそれが外れた場合、やはり国内企業にとっては脅威になるでしょう。『パインアメ』はミルク系キャンディの領域とはバッティングしませんが、余波が来るかもしれません。自社を守るためにも、世の中の変化に即応しながら、弊社は『パインアメ』の商品力を更に上げていこうと思っています。

人材育成のための4つの塾

―中小企業の場合、どうしても人材獲得や育成に課題があると聞かれます。御社では社内塾を活発に行っていらっしゃると伺っておりますが、詳しくお教え頂けますか?

上田 豊:
中小企業だから良い人材が来ないということをよく聞きますが、そうではありません。人を育てようとしないから、社員は成長できず辞めてしまい、更にまた人材獲得もできなくなる、という悪循環に陥っているだけです。それを打破するには、どういう人材に成長してほしいかというゴールを見据えて、教育することが大切です。

弊社は現在、4つの社内塾があります。1つは「TODOプロジェクト」です。何をするべきかを考える塾ですが、コーディネーターは工場の課長職が担当しています。2つ目はMG(マネージメントゲーム)の勉強会でして、直接会計での利益の出し方を学びます。次は「ほめ達」という塾です。やはり人は褒められるとやる気が出ますよね。相手のモチベーションをどう上げるかということを勉強します。それと最後はセクションごとの勉強会です。今後は、外部研修をOFF-JTで受けた社員が講師となって、他の社員に学んだことを共有する取り組みも行っていきたいと思っています。OJTと併せてこうした勉強会を重ねることで、「何のために仕事をするのか」ということを意識し、具体的な目標設定を行うことができるようになります。このような一貫した教育制度は中小企業だからこそ可能な制度です。こういった取り組みが、経営の質を高め、利益を生み出す礎になるのだと考えております。

編集後記

多くの人に愛されてきたロングセラー商品『パインアメ』。特徴的なパッケージやパイナップルの香り高い風味は、見た瞬間、食べた瞬間に懐かしさを感じさせる。ひとつの商品を大事に育てたことで、長い年月を経て人々の記憶に留まることとなり、その結果コラボレーション商品に対する新鮮さが更に際立ち、多くの人が手に取るのだろうと感じた。斬新さと普遍性を兼ね備えた『パインアメ』の次の一手を楽しみにしたい。

※パイン株式会社の歴史や国民的商品『パインアメ』の誕生秘話は下記よりご覧頂けます。

■パイン株式会社 インタビュー記事
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