2019年7月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへの2回目の着陸(タッチダウン)に成功し、世界で初めて惑星地中の岩石を採取するという快挙を成し遂げたことで、話題になりました。

熱気を帯びている宇宙産業ですが、この「はやぶさ2」のプロジェクトのように、日本において、宇宙事業は国が取り組むものというイメージがありました。しかし、近年では大企業はもとより宇宙事業で起業するベンチャー企業も増えており、2012年から2017年の5年間で世界の宇宙産業売上高は2,857億ドルから3,835億ドル(日本円だと約42兆円)と30%以上の伸びを見せています。

そんな成長著しい宇宙ビジネスについて、今回、国内の宇宙ベンチャー企業が取り組んでいる4つの事業領域について紹介していきます。それぞれの領域においてどのようなサービスを開発・提供しているのか、また、大手企業の動向や今後の展望についてもまとめました。

これからますます注目度が高くなる宇宙ビジネスについて、紐解いていきます。

【目次】
1.超小型人工衛星
2.ロケット開発
3.惑星探査
4.宇宙エンターテインメント
まとめ

1.超小型人工衛星

人工衛星は、開発に経費や時間がかかるだけでなく、打ち上げ自体にも莫大な費用と大掛かりな設備が必要な宇宙事業の1つです。そのため、多くの人工衛星は、国家プロジェクトとして扱われてきました。

一方、超小型人工衛星は、大きさは縦横高さが10立方センチメートルほど、重さは1㎏ほどとその名の通り「超小型」の人工衛星です。

すでに市販されている部品で組み立てられ、開発に要する時間やコストを大幅に抑えることができるだけでなく、宇宙ステーションから放出される形で打ち上げられるため、打ち上げ時のコストも大幅に削減できるのが大きな特徴です。

すでに小型ロケットの打ち上げや特殊素材の開発などの事業が中小の民間企業で行われており、超小型人工衛星の活用によって、宇宙ビジネスへの参入障壁が低くなりつつあります。

企業の動向・世間の注目度

今までの数百分の1の費用で開発できるため、大手はもちろん中小企業やベンチャー企業も積極的に参加しています。

たとえば東証一部上場の株式会社ウェザーニューズは、超小型人工衛星を開発するベンチャー企業である株式会社アクセルスペースに出資を行い、気象情報サービスの提供に小型人工衛星を活用して天気予報の精度向上に役立てています。

ウェザーニューズ社の天気予報的中率は90%を超えており、最近の天気予報が外れにくい傾向にあるのは、その影響かもしれませんね。

社長名鑑でも、上記2社について取り上げております。

ウェザーニューズ社については、超小型人工衛星を活用したことでのビジネスの変遷、アクセルスペース社については、ウェザーニューズ社との出会いから共同開発にいたるまでエピソードや事業にかける想いなどのお話を社長自らが動画で語られております。

詳細は下記よりご覧ください。

ウェザーニューズ社 インタビュー動画

全世界の天候を網羅せよ!世界最大の気象予報会社が見据える次のステージ

株式会社ウェザーニューズ 代表取締役社長 草開 千仁

アクセルスペース社 インタビュー動画

宇宙に挑む東大発ベンチャー!超小型衛星プロジェクトの舞台裏

株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村 友哉

その他にも、トヨタ自動車株式会社と株式会社三井住友銀行が出資するスパークス・グループでは「未来創生ファンド」を設けて、宇宙ベンチャー企業に出資をする形で協力体制を作っています。2018年には、目標額を500億円に設定した2回目のファンドを設け、出資を募りました。

また、汎用性の高さも、超小型人工衛星が注目を浴びる理由の1つです。

たとえば海水温を宇宙から観察することで漁場のターゲットを定めることで漁業にかかる労力を削減し、遠洋漁業などの長期航海が当たり前であった分野においても時間の削減を目指すことができます。

また、広い範囲の農地で作物の生育を観察することで、農業における人手削減に役立てることができるでしょう。

大学や自治体、民間企業の依頼を受けて超小型人工衛星の開発をおこなうベンチャー企業も増えており、これからも注目が増す分野と言えるでしょう。

2.ロケット開発

人類が宇宙に行くということに目を向けるようになってから、最初に国家としてロケット開発に取り組んだのがアメリカとロシアです。日本は後れをとっていましたが、1963年には航空宇宙技術研究所が設立され、本格的にロケット開発に乗り出すようになりました。

ロケットを開発することで、宇宙空間を利用した幅広いビジネスが可能になります。新素材や新薬の開発、無重力状態での耐久性テストなどにおいては、地球上で実施するよりも経費と時間の節約が期待されています。

また、今までロケットは主に研究目的のために開発されていましたが、個人が楽しみのために利用することも実現化の動きを見せています。

すでに米国に拠点を構える宇宙旅行会社のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)社やロケットや宇宙船の開発を手がけるスペースX社は宇宙旅行のチケットを販売しています。

日本においても、株式会社ZOZOの創業者である前澤友作氏が月旅行に行くことを表明するなど、今後、旅行先に宇宙が選ばれる時代が当たり前になるかもしれません。

企業の動向・世間の注目度

2018年7月にはキヤノン電子株式会社と、IHIグループに属する企業のひとつである株式会社IHIエアロスペース、清水建設株式会社、株式会社日本政策投資銀行の4社が共同してロケット打ち上げサービスの開発をおこないました。

企業単位だけでなく企業を越えて事業に取り組むケースもあることからも、ロケット開発の注目度の高さが分かります。

また、2019年5月に、ロケットの開発・製造を手がけるベンチャー企業、インターステラテクノロジズ株式会社が民間企業で国内初となるロケットの打ち上げに成功したのも、大きな話題となりました。

研究目的だけでなく、観光としての宇宙ビジネスも誕生しており、企業などの法人はもとより個人からも今後は注目が高まるでしょう。

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