※当コンテンツは取材費や試供品等をいただき記事を掲載しています。


型枠工事業や不動産事業、建築工事業、資材加工業、さらにはレストラン経営などの飲食事業と、谷口実業ホールディングスが手掛ける事業は多岐に渡ります。

1995年に創業し、一代で業界屈指の企業へと成長させた谷口社長の想いや窮地を脱した方法とは?

ホールディングス化した目的や描くビジョンについてもインタビューしました。

仕事にとって最も重要なのは「信頼関係」

ー2022年で創業27年とのことですが、起業当時のエピソードなどをお聞かせください。

谷口和則社長:
谷口実業を創業する前は、通信制高校に通いながら型枠大工職人の見習いとして働いていました。

父親が勤務していた下請け会社で2年半、腕試しとして他の型枠会社で2年半の経験を積み、高校を卒業した翌年に仲間3人で起業しました。

たしかバブルが弾けて間もない頃でしたね。当初たった3人だったメンバーは、4人、7人、9人、15人と増えていきました。創業メンバーの3人は現在も全員、在籍しています。

ー創業当時から変わらない想いや経営理念はございますか。

谷口和則社長:
私の根底にあるのは「お客様に喜んでもらいたい」という想いです。

商売は儲からないと意味がないからこそ、末端のお客様にまで喜びを届けられるようなビジネスモデルを構築しています。

例えば、不動産投資用の新築アパートを建造する場合を想定してみましょう。当社は、新しい建物を建て、その建物をお客様に購入してもらえば、利益を得ることができます。

しかし、お客様がアパートを売りに出す際に、満室の契約を取ることができなければ、賃料を下げなければなりません。

シミュレーション通りの利益が得られないというのはよくあることです。しかし、当社には利益があってもお客様には利益がない。

そうではなく、当社はそのプロジェクトに関わるすべてのお客様に喜びを届けられるような事業を展開しています。

「お客様に喜んでもらうこと」が「信用」に繋がる


谷口和則社長:
もう1つ、当社が大切にしているのが「信用」です。

谷口実業の創業時は誰かから引き継いだお客様など誰一人いなかったため、「谷口実業の仕事」を評価してもらうことが次の仕事につながる唯一の道筋でした。

だからこそ、自分たちで責任の負えない仕事はやりません。常に強い責任感を持って業務にあたっています。

当社の都合で「工期が間に合わない」「人手が足りない」「精度が足りない」ということは、自分たちの仕事を制限することになるので、どんなことでも責任を持って、お客様の理解を得てから仕事に臨むという姿勢を大切にしています。

リーマンショックを乗り切った苦肉の策とは

ー創業から今までで一番困難だった出来事は何ですか。

谷口和則社長:
たくさんありますが、特に大変だったのは2008年のリーマンショックですね。

それまで手間請負の平米単価1,600〜1,700円くらいで受注していた仕事ですが、リーマン当時はワンコイン(500円)ほどになっていました。

しかも現在の手間請負の単価程で、リーマン当事は材・工一式の工賃、材料及び運搬費込みでの単価競争での受注でしたので、本当に大変でした。

そうなると、儲けは出ません。当然、職人さんたちに支払う日当も減ることになるので、彼らに苦しい状況を強いることになってしまったのが非常に心苦しかったです。


ーその状況をどのようにして乗り切ったのでしょうか。

谷口和則社長:
会社の所有物を売却しました。当社は健全に経営できていたので、幸い土地や建物を保有していたんです。

一時しのぎですが、不動産や一軒家などを売って、どうにか乗り切りましたね。

その当時、付き合いのある鉄筋工事会社からお金を貸してほしいという依頼があり、当社も苦しくないとは言えない状況でしたが、?千万円ほど、お貸しした記憶がございます。

とても感謝され、その会社との信頼関係は20年以上経った今現在も続いています。

会社は新しい風を吹き込んで循環させることが重要

ー2021年にホールディングス化し、代表取締役に就任してから社員との関係に変化はありましたか。社長と社員の距離や感覚は近いのでしょうか。

谷口和則社長:
距離感は近いですね。最近こそ少なくなりましたが、社員から細かいことまで逐一報告がきます。

私も体一つなので、すべて対応するのは難しいですが、私がCEOという立場だからといって連絡するなとは一切言いません。

しかし、会社の業務拡大や効率化のためには、各事業部の幹部や上司に報告できる仕組みを整え、各事業部の組織力の強化が必要です。

ホールディングス化によって、その流れが確立されつつあるので、「以前より社長との距離が遠くなり、寂しい」という声も上がってくることもあります。

私自身も寂しさを感じることもありますが、会社の成長とともに社員一人ひとりが成長し、当社の社員としての誇りを持ってもらえればなと思います。


ー職場環境について重要視されていることはございますか。

谷口和則社長:
長く勤めてもらえる環境を整えることを意識しています。

今は、会社が100社あれば、10年後に存続している会社は20社にも満たない時代です。

会社を持続するには、若い人たちに私の想いを伝えながら、引き上げていくこと、そしてさらに若い人に入社してもらい、新しい風を吹き込んで循環させることが重要だと考えています。

そのためには、従業員が居やすい場所、働きやすい環境を会社とともに作っていく必要があると思っています。

嫌なことを何でも言い合える、社長に対しても風通しの良い会社を目指しています。

また、社員に同じことを繰り返しさせていると、飽きてきたり、嫌になったりすることは当たり前だと思うので、会社自体も拡大したり、成長したりと変化していく必要があるのです。

だからこそ、フレッシュな人材に入社してもらい、新しい風を吹かせることは非常に重要です。そして、若い社員に後輩を育てる楽しみや充実感を得てもらいたいですね。

ですので、若者に対しては、常にアンテナを張っています。人材紹介があれば、すぐに会いに行ったりもします。

会社が大きくなっても、好きなのは「現場」

ー社長自ら、会いに行かれるのですね。

谷口和則社長:
そうですね。「そしてちょっとうちに来ない?」と飲み会などに誘うと若い子たちの反応も良く、その後「社長のところで働きたいです」と連絡が来ることも多いですね。

私が今、職人に戻って、もし現場に入るとすれば、現場の段取りを若い人たちと一緒にやりたいですね。周りを遊ばせない、仕事の段取りや流れを覚えて頂きたいと思っております。

これまでにやってきた過程をもう一度、教えていくということはとても意義のあることだと思います。

今は必要以上の干渉は控えていますが、時間がある時に現場に行って、若い子たちとコミュニケーションをとりながら、支えていきたいというのが本音ですね。

このような感じで、今も親方などには若い人たちを大事にするように口癖のように言っています。


ー現場がお好きなのですか?

谷口和則社長:
はい。若い子たちに自分の感覚を教えたりできる現場が好きですね。スーツで現場に行くと、現場の子たちが嫌がりますが(笑)

一緒に行動して初めてわかってもらえることが多いので、現場で感覚を教えるというのが大事だと思っています。

今まで職人さんには「かずさん」と呼ばれるくらい親近感を持ってもらっていたのですが、最近は「社長」か「CEO」と呼ばれるようになってきました。何となく、距離があるように感じていて寂しいですね。

社員にもクライアントにも「即対応」

谷口和則社長:
私は社員に何かあれば「即対応」することを心掛けています。

物事の大小や性別に関わらず、何かあればその場でコミュニケーションを密にとってきたことや気軽に話せる環境作りをしてきました。それが当社の風通しの良さに繋がってると思います。

言いたいことを言いやすい環境だからなのか、当社を一度辞めてから戻ってくる社員もいますよ。辞めていくのは社員の自由ですが、他を見て戻ってきた社員は非常に強いですね。

この社員への「即対応」は当社のクレーム対応にも生かされています。クレームは、即対応していたら収拾していたことも、少しでも放置することで収まりがつかなくなることがほとんどです。

コミュニケーションもクレームも放置してしまうと、社員やお客様が離れていく要因となるので、スピード感を持って対応しています。

「真面目さ」「素直さ」を重視した採用方針

ーコロナ禍も採用活動は行っていらっしゃいましたか?

谷口和則社長:
当社はずっと採用を行っていますが、今は採用が難しくなっています。

みんな良いところに入りたいという思いがありますし、「この会社面白いな」、「こういう会社で勝負してみたいな」というような面白くて魅力のある会社を作っていかないと、良い人材が確保できません。

今は、谷口実業も駅の大型ビジョンで90秒の動画が1時間に7回くらい放映されています。八王子の市民に、「谷口ホールディングス、この会社聞いたことあるから、ここに就職してみたい」と思ってもらえればありがたいですね。


ー新卒・中途など採用形態問わず、どのような人材を求めていますか。

谷口和則社長:
「真面目さ」「素直さ」それだけです。

それさえあれば、何もいりません。全面的にサポートし、出来るようになるまで育成します。


ー採用面接で重視されることはどのような点でしょうか?また、社長ご自身も採用面接に参加されるのですか?

谷口和則社長:
ある程度までは、担当者が対応していますが、最終的には私も会っていますね。

先程も述べたように、当社の採用で重視しているのは真面目で素直という性格なので、内容というよりかは、自分を大きく見せるような言動がないかを見抜きますね。

「人」が動いている現場が多い業界なので、学歴等に関係なく、コミュニケーションを上手くとって、人の気持がわかる人、人を動かすことのできる人が上に上がっていくことができると思います。

不動産業で得たノウハウを生かし、異業界への進出も

ー不動産関連の事業のイメージが強いですが、2007年には飲食業界にも進出されていますね。

谷口和則社長:
そうですね。焼肉・ジンギスカンのお店である【ZIN-GIS 環(ジンギス タマキ)】を展開しています。

本業である型枠・外構・リフォームなどの知識やノウハウを生かし、こだわりを詰め込んで作り上げたお店です。

今後も、本業から派生し、事業を拡大していきたいと考えています。


ー焼肉屋さんに見えないお店の外観に驚かされたのですが、特にこだわられた部分はどこでしょうか。

谷口和則社長:
とにかく、普通の焼肉店とは違うスタイルのお店を造りたかったという思いがありました。

店内はスタイリッシュな感じで、鏡やメラミン材を使用し、テーブルは敢て白にしまして、清潔感を出しております。

焼肉屋なのでどうしても店内が油っぽくなってしまうので、掃除は手を抜けないですね。

もちろん、内装や外観だけではなく、お肉には強いこだわりを持っています。

ジンギスカンは北海道から直送、お肉は最上級の和牛を提供しています。やっぱり和牛は旨味が全然違いますね!

次の世代にバトンを渡し、事業を拡大していきたい

ー最後に今後のビジョンをお聞かせください。

谷口和則社長:
5つのグループ企業を管理・統括するために設立したのが「谷口実業ホールディングス」です。

ですので、各社にトラブルが発生した時のために、様々なシミュレーションを想定することや財務系や事務系を強化していきたいと思っています。

そして、私がいなくても、会社が機能する体制を構築していきたいですね。

次の世代にバトンを渡していきたいと考えています。

私には息子がいるのですが、親族だからといって経営を任せようとは思っていません。

私自身が経験してきたからこそ分かりますが、会社を経営し、事業を拡大することは本当に大変です。だからこそ、実力がある人間が上に上がるべきなのです。

次世代にバトンを渡すことを視野に入れながら、組織力の強化と事業の拡大に尽力したいですね。

谷口 和則(たにぐち・かずのり)
1971年生まれ、石川県出身。昭和第一学園中退後、型枠大工職人の見習いとして働きながら、1994年にNHK学園高等学校を卒業。1995年に大手ゼネコンや工務店の型枠工事の二次下請け・手間請負として、東京・八王子に株式会社谷口実業を創業。その後、株式会社谷口ハウジング、株式会社谷口実業BC、株式会社TJ加工サービス、株式会社TJカンパニーを設立し、事業を拡大。グループ全体の経営を管理、統括する持株会社として、2021年に株式会社谷口実業ホールディングスを設立し、代表取締役に就任。


編集後記

「信頼」と「即対応」が大切だという谷口社長。その言葉の裏には、「人との縁を大切にしたい」という人情の深さを窺い知ることができました。

クライアントはもちろん、社員との信頼関係は会社の業績に影響するといっても過言ではないでしょう。

その証拠に同社の売上は、2020年は47億、2021年は51億円と、このコロナ禍であっても躍進を遂げています。今後も同社の動向に注目したいと思います。

会社概要

社名:
株式会社谷口実業ホールディングス

設立:
2021年

代表者名:
谷口 和則

WEBサイト:
https://www.taniguchijitugyo.jp/

事業概要:
・型枠工事業
・不動産業
・建築工事業
・資材加工事業
・飲食事業