※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

ノベルティやグッズの製造・販売に始まり、トレンドを押さえた自社ブランド品まで手掛ける「JS貿易株式会社」。代表取締役の姜言徳氏に、日本で起業するまでの歩みや、グッズ製作会社として選ばれ続ける理由についてうかがった。

受験失敗から大きな冒険へ――日本への留学

ーーこれまでのご経歴を教えていただけますか。

姜言徳:
高校まで中国で暮らしていたのですが、中国で希望する大学に入れなかったため、思い切って日本への留学を決めました。先進国において日本は中国に近く、親戚もいるので心強かったのです。日本語学校でイチから日本語を学び、国士舘大学を受験しました。

リーマン・ショックの頃でしたので、就職活動では苦労しました。なんとか浅草の老舗企業に就職でき、今でもそちらの会社とは良い関係を続けさせていただいています。

ーー初めて勤めた会社では、どのようなお仕事に就かれたのでしょうか。

姜言徳:
ビニール関係(MP)の卸業を行っていました。ある時、お客様から「材料の提供だけでなく製品化もしてくれないか」とご要望があり、私が中国で生産工場を探すことになったのです。

中国出身の自分ならば、海外で生産したものを日本のお客様に一貫してお届けできると感じ、ものづくりに対する意識が芽生えました。自分なりにもっと勉強したいと思い、転職を経て、社会人7年目で起業しました。

ノベルティメーカーの枠を超えた独自性

ーー多数のノベルティメーカーがある中で、貴社の強みとなった部分をお聞かせください。

姜言徳:
取り扱いアイテムを拡大していって、現在はノベルティよりも販売品(OEM)の方が多くなっていますね。在庫を持たないことで多様な製品を作れる点は強みです。

基本的に仕入れ先は中国ですが、納期や品質面は日本基準でやってもらう必要があります。仕入れ先と上手く打ち合わせしつつ、各所へ誠実な対応を心がけ、お客様の信頼を得てきたことも結果的に自社の強みとなっています。

ーー主な営業手法はどういったものでしょうか。

姜言徳:
お客様から新たにお客様をご紹介いただくことが多いです。新型コロナ感染症の流行をきっかけに、対面が必須である新規獲得用の電話営業はやめています。

自社サイトの検索効率を上げたことで、ネットからお問い合わせをいただくケースも増えています。

コロナ禍におけるOEMの販売戦略

ーーコロナ禍で受けた打撃はかなり大きかったと思われます。

姜言徳:
コロナ禍で集客系イベントができなくなったことで、ノベルティよりも販売品の営業を強化していきました。本業に関しては不利な状況でしたが、マスクの販売に注力したことで売上が落ちることはありませんでした。

マスクは業種を問わず使用されるものなので、これまで関わる機会がなかった企業と接点を持つこともできました。

中国は「世界の工場」と表現されることがあります。中国に取引拠点があるからこそ、迅速に対応することができたという実感は強くありますね。

故郷・中国で築いた絆を武器に

ーー姜社長のご出身地である青島(山東省)は綿の産地だとうかがいました。母国での取引先は思い入れがある地域に多いのでしょうか。

姜言徳:
情報の収集源が日本の方とは違うという自負はあります。青島・上海・深圳など、地域ごとの得意分野を生かした方が良い結果を生めるでしょう。

取引前には現地へ行き、工場の決定権を持っている方とお話をします。つくるものが日本向けであることを前提にした「意識の共有」は必須です。コロナ禍を経て対面の機会は減ったものの、これまでに築いた信頼関係が今も仕事を回してくれています。

今後の展望――クラウドファンディングの活用法

ーー今後のご展望についてもお聞かせください。

姜言徳:
最近では卸売の企業がBtoCの個人向け販売に取り組む事例が増えていると思います。弊社でも自社ブランドの展開は力を入れていきたい部分です。将来的にオーダー品との割合は半々ぐらいを目指し、自社ECサイトも運用していきたいです。

自社ブランドの認知度はゼロに近いので、ネットから広げていき、ゆくゆくは量販店などでも取り扱っていただけるようになるのが理想です。

ーークラウドファンディングを始められたのは戦略の一つでしょうか。

姜言徳:
お客様が求めているものを把握することが重要ですので、「マーケットの反応を見てグッズを展開していこう」と考えました。

ご注目いただいているサウナハットは、もともとノベルティとしてのOEM生産に関する問い合わせが多かった商品です。クラウドファンディングの結果も良かったので、自社ブランドでも販売することになりました。

弊社のお客様は、アパレルや芸能事務所など業界が多種多様です。そのため自社ブランドに関しては、生産時の手応えや流行度、各企業からの要望をヒントにチャレンジしていくことができます。若い子たちに売れる商品をリサーチしてもらい、取り扱うアイテムを決めています。

さらなる成長に向けた採用の強化

ーー採用活動におけるアピールポイントをお知らせください。

姜言徳:
営業職やものづくりに興味がある方を歓迎しています。大きな会社ではないので、いろいろな商品に触れることが成長につながり、自分のやりたいことを見つけやすいでしょう。

「人が増えないと仕事量も増やせない」というのが弊社の現状です。仕事と生活のバランスを大切にしたいので、さらに売上を伸ばすためには若い人材の力が必要になると思っています。もちろん、未経験の方が一人前になるためのフォロー体制は万全です。

編集後記

若者の声をリサーチしているという「JS貿易」のオリジナルブランドは、メイク用品などの生活雑貨を扱う「RAKUSE」、オリジナルサウナハット「SOU」と、いずれも流行への感度が高いものばかりだ。日本と中国をまたにかける姜社長から飛び出す、柔軟かつスピード感のあるビジネスに今後も注目したい。

姜言徳(きょう・げんとく)/1983年、中国・青島生まれ。2003年に日本の国士舘大学へ留学し、2009年に卒業。2009年〜2015年をサラリーマンとして過ごす。2015年、JS貿易株式会社を立ち上げ現在に至る。