※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

株式会社ゆかり(1950年創業)は、戦後の混乱期に創業した本場大阪のお好み焼き外食チェーン企業。現在では地元大阪を中心に南関東までエリアを拡大し、直営8店舗、FC1店舗を展開している。

70年を超える歴史がありながら、斬新な営業戦略を繰り出す同社。最近では輸出事業に着手しただけでなく、旅行会社とタイアップしてお好み焼きの体験教室を開くなど、アイデアを実践する行動力が特徴的だ。

2016年に経営を引き継いだ代表取締役の山下真明氏に、若い頃のエピソードや経営方針についてインタビューを行った。

友人との突然の別れをきっかけに感謝の気持ちが芽生えた

ーー家業を継ぐまでの経験やエピソードをお聞かせください。

山下真明:
弊社には16歳の時に本店アルバイトとして入社しました。当時は父が経営していたのですが、18歳のある日、ターニングポイントとなることがありました。同じ時期に入ったアルバイトの方が叱られるのに対して、同じ失敗をした私は叱られなかったのです。

そんなことがたびたびあって「この環境にいたら私はダメになってしまう」と思い、外の世界に出ようと決心しました。そのタイミングで兄弟ともケンカになって、会社どころか家まで出ることになりました。

それからしばらく音楽関係や小売業界の仕事をしながら自活していたのですが、多忙な日々により栄養失調になったこともありました。

それでも実家に戻らなかったのは、「敷かれたレールではなく自分のレールを走るべきだ」という信念に従って、あくまで自立したいと考えていたからです。

しかし、ある日その信念を揺るがす出来事が起こりました。その頃、月に1回ほど会っていた友人がいたのですが、ある日突然、亡くなってしまったのです。彼は亡くなる少し前にこんなことを言い残していました。

「家を継ぐのは敷かれたレ―ルを走ることではない。新しくつくるのと同じ、いやそれ以上だ」

その言葉を重く受けとめ、小さい頃から私のことを知っている親や、社員さんたちに対しても感謝する気持ちがわいてきました。そして「ゆかりというブランドをしっかり広げることが何より大切なことだ」と思い直しました。それからほどなくして頭を丸めて父に謝罪し、家業に戻ることになりました。

コロナショックの対応策として始まったEC事業

ーーコロナショックの影響や対応についてお聞かせください。

山下真明:
緊急事態宣言の1回目が出た頃は、まだ補助金もほとんどない状態でしたから特に大変でしたね。

休業手当といっても国が定めているものではとうてい充分とはいえず、社員は生活に困りますから、本来支給するはずだった給料の平均値を残業代込みで3カ月間渡し続けました。

そんなこともあってキャッシュアウトが凄まじく、毎月3000万円から4000万円が消えていく状態でした。

このまま事態は長期化し、大した進展が見込めないと判断して、2020年5月から通販事業に着手しました。

最初は社員から事業と認められないくらいこぢんまりとしたものだったため、私自身が梱包もしていました。しかし、多方面に積極的に営業をかけ続けた結果、1年弱で月間の売上が100万円を超えるまでに成長しました。国内だけでなく海外にも販売するようになり、本格的に事業化することができたのは不幸中の幸いだったと思います。

私が社長に就任したのはコロナ禍が始まる少し前でした。着任早々に大災難があったことで後先考え過ぎず、経営者として思い切った策を実践するいい機会となりました。

ーー冷凍食品に対するこだわりはどんなところでしょうか?

山下真明:
一般的に通販のお好み焼きの量産品は、機械でプレスするのですが、私たちの冷凍お好み焼きは店舗の製法とほぼ同じように手焼きしています。

プレス機械を使ったほうが同じ時間で大量にできますが、やはり機械ならではの圧縮感が残ってしまいます。

手焼きは非効率ですが、食感はバツグンで、レンジで加熱してもふんわり感を再現できるのがメリットです。

あるメディアの冷凍お好み焼きランキングで1位をいただいてから、国内で一気に認知度が上がりました。また、2022年の日本ギフト大賞では、弊社のどて焼きが都道府県賞を受賞しました。

私たちの会社の源は、1にも2にも商品力ですから、クオリティを上げるために努力を惜しみません。外食業界の他の経営者さんに弊社の原価率を教えると、その高さに皆さん驚かれるくらいです。

EC事業はこうした商品力を背景に、今後ともますます力を注いでいく方針です。

社長自ら年に1回、社員の個人面談を実施

ーー店舗展開の方針についてお聞かせください。

山下真明:
かつては出店ラッシュの時期もありましたが、私が直接店長たちとお話できる範囲は10店舗が限界だろうということで、現在はこれを目安にしています。

店舗営業は口コミが成否のカギを握っています。ただ増やすだけではブランド価値を損ないかねません。既存店のポテンシャルを高め、ブランディングを強化することにより、現在の業績は右肩上がりに推移しています。

ーー人事面での社内の取り組みを教えてください。

山下真明:
月に1回、幹部クラスが集まり最近の出来事について情報交換し、これからの予定や方針を説明する場を設けています。

社員には1人1人に対して毎年1回、1時間をメドに個人面談を行っています。

毎年、個人目標を立ててもらっているので、1月からスタートしてどうだったかというお互いの確認作業ができますね。

成功事例が増えるとより達成感が高まりますから、うまくいっていないことがあれば、改善するためのきっかけづくりも行っています。

編集後記

社名の「ゆかり」は人とのご縁からとったネーミングだという。お好み焼きの体験教室は「鉄板を囲んだ人とのコミュニケーションの場を提供する目的もある」と山下代表。

彼自身は自己鍛錬を怠らない経営者であり、現在も大阪から東京へ日帰りで営業活動を行う日々。その熱意が伝わってきて、会社のさらなる成長を確信できるインタビューとなった。

山下真明(やました・まさあき)/1983年大阪府生まれ、大阪工業大学高等学校卒業。高校卒業後、音楽関係の仕事に従事。2002年、ホテル中央グループ 株式会社関西の小売事業部に入社し百円ショップ、ファミリーマートのFC店に勤務。2006年ゆかりFC店に入社。2007年、株式会社ゆかり入社。2012年専務取締役、2016年代表取締役に就任。2021年、上方お好み焼たこ焼協同組合、理事長就任。曽根崎お初天神通り商店会、副会長就任。