※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されて以降、テレワークをメインに働く人の割合が減っている。全国の正社員のテレワーク実施率は2022年2月をピークに低下し、現在は約22%と報告されている。

そのような状況に対し、引き続きテレワークを推し進めている企業がCLINKS株式会社だ。

同社代表取締役、河原浩介氏は「テレワークは通勤で体力を消耗せずに済むだけでなく、仕事の生産効率を上げる、時代に沿った仕事方法だ」と語る。

自社ツールの開発に取り組み、よりストレスの少ないテレワークができる環境づくりに奔走している。また、エンジニアの経験を活かし、教育研修事業と未経験者育成事業にも注力。これまで5000名を超えるエンジニアを輩出してきた。

河原氏は未来に対し、どんな展望を持っているのか。その経営哲学をうかがった。

コロナ禍においてテレワーク事業のニーズが高まる

ーー貴社の強みを教えてください。

河原浩介:
特に強みとしているのは、テレワーク関連の事業と、未経験者育成を中心とする教育研修事業です。2016年にテレワーク専門のエンジニア派遣サービス「テレスタ」を始めたことが我が社の大きな躍進につながっているのですが、特にコロナ以降、テレワークを希望する優秀な人材が集まって来ています。

同時に、DX・AI系の優秀な人たちがテレワークに魅力を感じて集まってきてくださり、良いスタートが切れました。テレワークへの注力とコロナ禍の影響がマッチし、正規雇用者の中途採用比率が7、8割近く増えたほどでした。

ーーテレワークについてもう少し詳しくお聞かせください。

河原浩介:
CLINKSが提唱する「RES(リモートエンジニアリングサービス)」を通じてテレワークを推進し、ウェブツールを活用してコミュニケーションを図るための方法を模索してきました。在宅ワーク特有の悩みの一つである常時接続によるストレスを軽減するために、弊社独自のツール「ZaiTark(ザイターク)」を開発しました。

このツールでは、顔を映すことも映さないことも可能で、デスクトップを共有するときも柔軟な設定ができます。クライアントと仕事をしていても、社内の上司や仲間とつながっていられる。これができればテレワークによる課題を解決できそうだなと考えているので、RES(※)は引き続き推進したいと考えています。

(※)CLINKSが提唱するRESは、テレワークを基本にし通勤不要で心身の負担が少ない、ITエンジニアの新しいワークスタイルです。テレスタやZaiTarkなどのサービスを通じて、全てのITエンジニアが場所にとらわれずにやりがいのある仕事に携わり、ワーク・ライフ・バランスを実現し、業界全体で魅力的な環境を構築することを目指しています。

「社内コミュニケーションを改善したい」という思いから始まった会社経営

ーー創業に至るまでの経緯を教えてください。

河原浩介:
マツダ株式会社に入社してから5年後、バブルが崩壊して会社が非常に厳しい状況になり、その際に文系入社チームはディーラーに出向することになりました。仕事自体は楽しかったものの、会社の状況が厳しくなってしまったので転職を決意しました。

その後、もともとコンピューターが好きだったのでIT業界に進みました。そして32歳で未経験の状態でプログラマーとしての職に就いたのです。小さな会社だったこともあり、活躍できる機会が多く、上流工程に早期から関わることができました。

ーーいつから創業したいと考えていたのですか?

河原浩介:
もともとは創業の意志はありませんでした。創業について考えるようになったのは創業の半年前で、エンジニアとの交流が増えたことが影響しています。当時の勤務先では自社社員との接点が少なく、客席常駐の働き方でした。

3年経って初めて顔を合わせる社員もいて、接点の不足にはデメリットもあると、改善の余地を感じたのです。さらに、所属していたのが小規模な会社だったので、会社のバックボーンや名刺なしでもエンジニアならやっていけると自信を持てました。

創業後は初めての経営で資金繰りに苦労しながら、2年目から自社サービスの開発に着手しました。当時、社内SNSはまだ一般的ではなく、フェイスブックも存在しない時代で、最初から社内コミュニケーションのツールとしてSNSのようなサービスをつくりたいと思っていました。

通勤で体力を消耗せず、生産効率を上げる

ーーテレワークについては当初から構想をお持ちでしたか。

河原浩介:
テレワークは最初に考えた枠組みだったと思います。「携帯とパソコンだけで仕事ができること」が当時の自分の理念でした。通勤ラッシュが非常に厳しく、毎日疲れた状態で会社に到着し通勤だけで体力を消耗していました。帰宅も深夜になりますし、翌日以降も同じサイクルが続きます。「これが続けられるのか」と常に考えていました。

テレワークを導入したきっかけは、エンジニアの人材不足という課題もありますが、自宅という静かな環境で仕事ができることは生産効率の高さにつながると考えたからでした。

通勤時間がなくなることで、オンラインにより打ち合わせの回数を増やすことができますし、相手先に足を運ぶ必要がないので移動の制約からも解放されて、効率的に業務が進められます。

生産性の向上以外にも、テレワークによって働き方の選択肢が大幅に増え、より多様なライフスタイルが選択可能になります。どこでも働くことができるので、地理的な制約がほとんどありません。コロナの影響で従来の常識が大きく変わったので、テレワークの推進をしやすくなって良かったと思っています。

待遇と技術的側面の向上が急務

ーー現在、目指されていることについて教えてください。

河原浩介:
待遇の改善が最優先だと考えています。エンジニアの給与を引き上げ、1人当たりの売り上げを増やすことが課題です。技術的な側面も重要で、特に危機感を抱いているのは開発分野です。将来的にChatGPTなどのAI技術が進化する中で、コーダーやテスト人材のあり方に変化が訪れるでしょう。

コーダーの業務は変わりつつあり、生成AIを組み込むスキルが求められることが予測されます。この変化に早く適応し、先端技術に対応することが重要です。弊社では特にクラウドとセキュリティに焦点を当て、これからも伸ばしていく予定です。

また、新卒採用も拡大し、若いエネルギッシュなメンバーを迎え入れることで、組織全体のモチベーション向上を図りたいと考えています。新卒の入社により、組織に新しいエネルギーがもたらされ、自らも若手の頑張りに触発されています。

エンジニアの仕事においては、好奇心旺盛であり、最新技術に対する積極的な取り組みが求められます。積極的で上昇志向のある人材を採用していきたいと思っています。

編集後記

CLINKS株式会社代表取締役、河原浩介氏の広い視野とビジョンは、エンジニアとしてのキャリアから起業を決意するなど、独自の豊富な経験によって培われたのかもしれない。テレワークにおける先進的なアプローチがコロナ禍のタイミングと重なって大転換が訪れ、テレワークを希望する優秀な人材が集まり、会社の成長は時代と非常にマッチしている。

河原氏が語る将来の展望も注目すべき点である。ChatGPTやAIの進化により、IT業界では待遇向上と技術的側面への注力がクリティカルな問題だと見解を示している。今後も先見の明と実行力でCLINKS株式会社を牽引し、時代の変化に対応しながら事業の拡大に邁進していくことだろう。

河原浩介(かわはら・こうすけ)/1963年福岡県出身。早稲田大学商学部卒業後、マツダ株式会社に入社。1995年32歳でIT業界に転進し、2002年12月1人でCLINKS株式会社を設立。業界未経験から従業員数1000人規模にまでCLINKSを成長させた。現在、同社代表取締役として、テレワークを日本の働き方のスタンダードとするべく推進中。