※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

建物の地下や天井裏など、普段私たちの目に見えないところで重要な役割を果たしている、配管のバルブ。身近なところでいうと水道の蛇口だが、工場や駅の中、高層ビルや船舶など私たちの生活に広く活用されている。

1902年に滋賀県で創業した株式会社オーケーエムは、ノコギリの製造所として始まり、現在は特殊バルブの企業としてグローバルニッチ市場をリードしている。日本を中心にマレーシア、中国などを生産拠点とし、世界に向けて販売展開中の同社は、2020年に上場を果たした。

創業から100年を超える老舗企業が、コロナ禍の最中に上場した理由とは?今回は、代表取締役社長である奥村晋一氏に、入社までのエピソードと、上場を決意するまでの経緯、今後の展望などをうかがった。

ものづくりの楽しさに魅入られて入ったオーケーエム

ーーオーケーエムに入社されるまでのエピソードを教えてください。

奥村晋一:
大学を卒業後、東京の横河電機に入社しました。というのも、最初は会社を継ぐことは考えていなかったからです。父は3人兄弟の次男で、当時は叔父が社長を務めていました。叔父の息子もオーケーエムに入っていたので、私が社長にならなくても良い状況でした。

横河電機に6年間勤めた後、叔父から「事業を手伝ってほしい」と話があり、1997年にオーケーエムに入社しました。弊社はバルブメーカーですが、当時は上場を目指すべくバルブ以外の新商品の開発に励み、24時間風呂などの一般消費財の製造にも取り組んでいました。

そういった新たな取り組みに関われる環境で、「ものづくりに携わりたい」という気持ちを強く持ち、自ら望んでオーケーエムに移りました。

ーー入社後は、どのような業務をされていたのですか。

奥村晋一:
入社当初は、バルブ以外の新商品の開発部隊に所属していましたが、今は全て撤退しています。顧客や市場についてよく理解していなければ、ビジネスでは成功しません。

当時は泥水処理機や電解水生成機などのシステムを開発していたのですが、製作側としては納得のいく商品ができたとしても、顧客にニーズがなければ理解が得られません。開発にそこまで投資する価値があるのかどうかを追求しきれておらず、いかにマーケティングが重要かを学びました。

その経験からマーケティングと開発を両輪で動かすべく、2020年に研究開発センター(現本社・研究開発センター)を新設したのです。

マンネリ打破のため、上場を決意

ーー2020年に上場されていますが、上場を決意するまでの経緯を教えてください。

奥村晋一:
よく「120年と社歴が長いのに、なぜ今上場したのか?」と聞かれることがありますが、今の延長線上でいくと社内がマンネリ化していく可能性があり、それを打破するために大きな刺激が必要でした。120年とはいっても、創業当時のノコギリから50年後にバルブへ転換しているので、まだバルブの事業を始めて70年です。

この先も継続するためには、変化のポイントをつくらなければならず、それが上場だと考えました。船舶排ガス用バルブの拡販が進んだことで、成長ストーリーが描けることも大きかったです。

「脱炭素」への商品開発に向けた社内改革

ーー今後行っていきたい事業などはありますか?

奥村晋一:
「脱炭素」を重要なテーマとして注力していきたいと考えています。近年の成功事例である船舶排ガス用バルブと同様に、お客様の製品開発の段階で、いかに早くニーズを引き出せるかが重要です。

営業担当がお客様の情報を引き出し、開発にフィードバックするのですが、弊社の場合、それが属人化し、似通った業界のお客様にも適用できるところを、営業担当者個人のノウハウに留めてしまうことがありました。

そこを極力情報共有できるよう、SFA(営業支援ツール)などを活用しながら組織的に変革していかなければなりません。現在、利益率を高めて会社の持続的な成長を実現するべく、営業全体で取り組んでいます。

ーー脱炭素事業で、営業の組織変革以外に注力されていることはありますか?

奥村晋一:
まずは液化水素やアンモニア、CO2に対応するバルブの開発に力を注いでいます。新たに設立した本社・研究開発センターでは、技術者がしっかりと開発できる環境を整え、そこから人員を含めた強化を今後もしていきたいと考えています。

人員の確保でいうと新卒・中途ともに採用を進めていますが、本社を移して上場した後は、新卒採用の応募者が10倍以上に増えました。上場前は10名程度応募者がいれば良い方でしたが、今やエントリーが100名を超えています。

「諦めないこと」と「論理性」のバランス

ーー仕事をしていく上で大切にされているキーワードはありますか?

奥村晋一:
「決して諦めない」ことを非常に大事にしています。私が品質保証部にいた頃、大きなクレームが発生したことがありました。2ヶ月ほどそのお客様に対応させていただいたのですが、「どうしたら解決できるのか?」ということを品質保証部だけでなく、開発、設計、製造を含めて全社を挙げて考え抜きました。

諦めずに粘り強く解決への糸口を探り、最終的に解決したときにはお客様から大変評価いただきまして、次の大きなプロジェクトの注文につながりました。何か問題が起こったときに逃げずに諦めないという姿勢が、今の事業を支えているのだと思います。

その一方で、論理的に考えなければ、諦めずにやっていても無駄になってしまいます。問題が起こったときに、何が原因なのかをしっかりと突き詰め、論理的に判断することが大切です。それは予算策定、あるいは商品開発の際の考え方にもつながるのですが、「なぜその目標値を計画したのか?」「これはどうしたら売れるのか?」ということは、論理性をしっかりと軸に置いて考えなければなりません。感情や人としての道理の部分は残しつつ、論理性を重視して仕事をしていくことを意識しています。

ーー最後に、新卒など若い方へのメッセージをいただけますか。

奥村晋一:
言われたことだけを行うのではなく、少しでも多くのチャレンジをしてください。大きなチャレンジは必要ありません。若い時期に小さなチャレンジを繰り返し、いくつもの失敗を重ねることで、成長した先で大きなチャレンジをしたときに、うまくリスク回避ができるようになります。大小は問わず、とにかく挑戦をし続け、失敗を経験してください。

編集後記

2020年に上場、2021年に社長就任と、会社として大きな波を起こしてきた奥村社長。社内改革にも積極的に取り組み、会社をより高みへと導いていく姿勢を崩さない。

2030年度の連結売上高200億円の達成に向け、株式会社オーケーエムの飽くなき挑戦はこれからも続く。

奥村晋一(おくむら・しんいち)/滋賀県出身。青山学院大学大学院物理学専攻修士課程修了。横河電機株式会社を経て、1997年4月に入社。2006年取締役就任。生産統括本部長、国際統括本部長などを歴任。常務、副社長を経て、2021年6月から代表取締役社長に就任。