※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

半導体製造に不可欠なガスの除害装置から、液体充填包装機まで、幅広い産業機械の開発・製造を手がける株式会社ホクエツ。同社は1985年の創業以来、確かな技術力と「何でもできる」の精神で顧客の課題を解決してきた。インドネシアでの4000万円規模の案件を皮切りに、数々の企業との取引実績を重ねる代表取締役社長 鈴木正喜氏に、ものづくりへの思いと今後の展望についてうかがった。

夢の実現に向けた、創業への道のり

ーー創業に至るまでの経緯についてお聞かせください。

鈴木正喜:
私は弊社を創業する前は、大手化学メーカーに在籍しており、主に化学プラントの仕事に携わっていました。ただ、働くなかで「自立」という夢がどんどん膨らんでいったのです。起業のために会社を辞めようとしたのですが、結局2年ほど働くことになります。

その上、当時はインターネットもない時代です。本などで調べながら起業の準備を一つずつ、すべて自分で実行していきました。十分な資金もありませんでしたが、1985年に弊社を設立することができました。

ーー創業後はどのように事業を展開していったのですか?

鈴木正喜:
まず取り組んだのはお世話になった方への挨拶回りです。さまざまな企業を訪問するなかで、運が良いことに最初の大きな仕事として、インドネシアの案件をいただくことができました。

当時で4000万円ほどの規模の案件で、まだ経験のない海外での仕事でしたが、現地での工事も含めて取り組みました。そうした姿勢を評価していただき、機器メーカーをはじめとした大手企業との取引が広がっていったのです。

その後は、前職の人脈も活かしながら、着実に実績を重ねていきました。当時は日本の半導体産業が盛り上がっている時期で、半導体の開発やガス関係の開発に携わる機会も多くありましたね。そうしたなかで、規模の大きな案件をいただくこともあり、さらにお客さまとの信頼関係を築いていくことができました。

産業機械装置・ガス除害装置から電解水・殺菌水生成装置まで、幅広い産業を支える

ーー貴社の主力事業と強みについて教えてください。

鈴木正喜:
弊社の主力事業は、半導体製造に使用する排ガスの除害装置です。半導体製造では必ずガスを使用し、酸性系ガスやフッ素系ガスなど、その種類はさまざまです。弊社では、こうしたガスを安全に排出できる装置を開発・製造しています。これは前職から携わってきた分野で、これまでに多くの実績を重ねてきました。

弊社の強みは、図面を支給されて製作するのではなく、お客さまの要望に応えて新しいものを生み出せることです。どんな要望に対しても「できない」とは考えず、「どうしたらできるのか」を考え、それを形にしていくことが私たちの信念であり、強みなのです。

ーーこれまでに手がけた印象的な開発案件はどのようなものですか?

鈴木正喜:
大手食品メーカーと共同で手掛けた微酸性電解水生成装置の開発です。当時、牛乳瓶を次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した際に残るにおいが大きな課題でした。私たちは、電解水を用いた新しい洗浄方式を導入することで、この問題を解決しました。

開発には時間とコストがかかりましたが、多くの努力が実を結び、2002年に厚生労働省から微酸性電解水を食品添加物として認可していただきました。この成果は、全員が力を合わせて取り組んだ結果であり、大きな達成感を得た事業でした。

最近では、飲食店様から調味料の液体充填包装機の依頼を受け、充填作業を効率化したいが大量生産ではないため、小型でコスト面も抑えたものが欲しいというご要望に応え、製作を行いました。「何でもできる」という気持ちで取り組み、常にお客様の期待に応え続ける姿勢を大切にしています。

製造業の誇りと技術を次の世代へ繋げていきたい

ーー今後の展望についてお聞かせください。

鈴木正喜:
現在、新規取引先の開拓と営業部門の強化が必要だと感じています。お客さまとの関係構築を重視できる営業人材を迎え、取引基盤の強化を図っていきたいです。

また、社内での後継者育成にも取り組んでいます。私も年齢を重ねてきましたので、次の世代を育てていくことが重要だと考えています。特に大切なのは、人を見る目を持った人材を育てること。数字だけでなく、人間性を理解できる後継者を育てていきたいですね。

ーー貴社に入社を考えている人材に期待することを教えてください。

鈴木正喜:
まずは、製造業の魅力を知ってほしいと思います。弊社の製品は、日本の産業を支える「縁の下の力持ち」のような役割を担っています。半導体除害装置から食品機械まで、さまざまな製造現場で使われており、産業の基盤を支える重要な役割を果たしているのです。

加えて、夢を持って仕事に取り組む姿勢も大切です。私自身、「夢を形に」を信念に40年近く事業を続けてきました。これからの人たちにも、同じように夢を持って、それを実現していってほしいと思います。

編集後記

産業機械・半導体ガス除害装置の製造から食品機械の製造に関わる、さまざまな産業機械の開発を手がけてきた同社。取材を通じて印象的だったのは、鈴木氏の「何でもできる」という強い信念だ。創業から40年近く、産業の最前線で顧客の課題解決に取り組んできた同社。その実績とチャレンジ精神は、日本のものづくりの未来を支える大きな力となっていくだろう。

鈴木正喜/新潟県生まれ。昭和電工株式会社(現:株式会社レゾナック)を経て、1985年、株式会社北越技研工業(現:株式会社ホクエツ)を設立。代表取締役社長就任。