※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

教育業界は少子化により縮小傾向にある。

文部科学省の調査によると、小学校の児童数はピーク時の1958年に約1349万人だったのに対し、2019年には約637万人と、ほぼ半分にまで減少している。そして学習塾や大学では生徒の獲得競争が激化し、他社や他校との差別化が課題となっている。

そんな中、学習状況を可視化し、学力向上を目的とした学習管理プラットフォームを展開しているのが、スタディプラス株式会社だ。

同社が提供している学習管理アプリ「Studyplus」は、累計会員数800万人以上を達成している。

学習者の最大の課題である“学習の継続”をサポートすること、これこそが教育の根幹であると語る創業者の廣瀬高志氏からお話をうかがった。

学習者の最大の課題である「学習の継続」を支援

ーーまずは貴社の事業内容について簡単にご説明いただけますか。

廣瀬高志:
当社は主に2つのプロダクトを開発・運営しています。ひとつが「Studyplus」という学習者向けのBtoCアプリ、もうひとつが「Studyplus for School」という教育機関向けSaaSです。

「Studyplus」は学習の継続を目的としたスマートフォン用のアプリです。1日・1週間・1ヶ月に何時間勉強したか、どの科目・教材を学習したか入力することができ、学習状況をグラフで可視化できます。

また、SNSの機能があり、タイムライン上で学習記録をシェアし、仲間同士で励まし合ったり競い合ったりすることで、モチベーションの維持に役立てることができるサービスになっております。

「Studyplus for School」は、生徒が「Studyplus」でつけた学習記録データを先生が閲覧し、オンラインでコミュニケーションすることで学習支援ができるサービスです。学力向上のためには、先生が生徒の家庭学習も含めた学習状況を把握し、支援していくことが重要です。

しかし、多忙な学校の先生や塾の先生がお一人ですべての生徒の学習状況を把握するのは難しいことです。「Studyplus for School」を使っていただくと、一人一人の学習状況をひと目で確認でき、オンラインでやりとりができるため、生徒とのコミュニケーションの質と量の改善につなげることができます。

生徒さんへより手厚いサポートを行うことができるため、生徒さんの成績アップや、退塾率の低下、生徒単価の向上に繋げることができたという声を導入校からは伺っています。

ーー廣瀬社長が学習支援事業を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

廣瀬高志:
私は東京の国立にある、中高一貫の進学校に通っていました。

大学の受験勉強をしているときに同級生と話していたのが「受験対策の教材もあるし、やり方もわかるけれど、コンスタントに勉強を続けるモチベーションを維持するのが一番難しい」ということでした。

当時、学校や塾では授業以外の部分のサポートはあまり多くはなかったので、学習者の一番の課題である、モチベーションの継続の支援をするべきだという思いを持っていました。

それから大学3年生のときに出場した学生向けのビジネスコンテストで、弊社のサービスの原型となるオンラインツールで学習記録を管理する家庭教師会社のアイデアを提案し、優秀賞をいただきました。

そのときに優秀賞の副賞としてオフィスを1年利用できる権利を得たので、これはチャンスだと思い、大学在学中にスタディプラス株式会社を起業しました。

ーー「Studyplus」は大学受験生の2人に1人が利用しているというデータもありますが、他の学習サービスと比べて高く評価されているポイントについてお教えいただけますか。

廣瀬高志:
EdTech(※1)事業を行っている企業の多くは、主に教材コンテンツを提供しています。その一方で、「Studyplus」は学習のプラットフォームであることがユニークな点です。

資格取得や語学の勉強など、あらゆる学習シーンでお使いいただけるため、学生の方だけでなく社会人の方々にもご利用いただいています。

評価いただいているポイントとして、アプリ内のタイムラインで同じ志望校や資格取得を目指す仲間の進捗を見ることで、自分も頑張ろうと励みになるという声をユーザーの方からは多くいただいています。

さらに、自分の勉強記録に対して他のユーザーから「いいね」を押してもらったり、励ましのコメントをもらったりすることがやる気に繋がるため、「Studyplus」を通じて今まで続かなかった勉強が習慣化したという感謝の声も多くいただいています。

(※1)Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。テクノロジーを用いて教育を支援する仕組みやサービスのこと。

「学習の継続こそ教育の根幹である」がスタディプラスのモット―

ーー貴社の教育に対する考え方についてお聞かせください。

廣瀬高志:
そもそも教育というのは、教育者のためにあるのではなく、学習者のためにあるものです。たとえば、世間から高い評価を得ている先生がいくらすばらしい授業をしても、生徒たちが何も学んでいなかったら意味がないと思っています。

そう考えると、教育においては学習者の学習を支援することが最も重要です。学習者が何に一番困っているかというと、学習の継続です。そのため当社では「学習の継続をサポートすることこそが、教育の根幹である」という考えのもと、事業を行っております。

学習のプラットフォームという事業はユニークだと申し上げましたが、学習の継続を支援することこそが、教育の一丁目一番地であると考えております。

「学習記録✕コミュニケーション」の支援

ーー学校や塾の関係者の方々に、貴社のサービスをどのように活用してもらいたいとお考えですか。

廣瀬高志:
今の教育のトレンドとして、先生の主な役割が、授業をするティーチングから、授業はデジタル教材にお任せして生徒一人一人の学習状況・習熟度に合わせたサポートを行うコーチングに移行しつつあります。

コーチングを行うためには生徒の学習状況を的確に把握する必要がありますが、オフラインで「最近勉強の調子はどう?」と聞くだけでは十分ではありません。効果的な支援をするためには、生徒の日々の学習記録が必要だと考えています。

学校や塾にいる間以外の家庭での日々の学習状況をデータで把握し、それをもとにオンラインで多頻度なアドバイスを行う「学習記録✕コミュニケーション」の支援がこれからの教育には不可欠であると考えており、より多くの教育機関を支援していきたいと考えております。

編集後記

「人には本来学ぶ喜びが内在しているはずなのに、学校の勉強についていけなくなったとたん、学ぶことが苦しみや辛さに変わってしまう」「学ぶ喜びを感じ、幸せに生きられる人を増やしたい」と語る廣瀬社長。

その姿からは、自社のサービスが多くの人々の学びのきっかけとなり、学習をより楽しむ人が増えることを願う明確な思いが伝わってきた。

学習者の学びの継続を支援するスタディプラスは、日本の教育業界に新たな風を吹かせることだろう。

廣瀬高志(ひろせ・たかし)/1987年生まれ。慶應義塾大学法学部在学中の2010年3月株式会社ネットプライスドットコム(現:BEENOS株式会社)主催のビジネスコンテストに優勝。2010年5月スタディプラス株式会社創業。