※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

企業のバックオフィス部門の業務は、経理、財務、人事、労務、総務、法務など多岐にわたる。外資系企業の場合、特に、これらの業務はアウトソーシングに頼りがちだ。

ジパングアウトソーシングサービス株式会社は、これらの業務サービスを、外資系企業に特化して誠心誠意提供することにより、顧客の日本での成功に貢献し、高い満足度を得ている。

今回は、同社社長の横倉弘和氏から、起業までの道のり、企業理念、今後の抱負などについてうかがった。

猛勉強で旅行業界から転身!持ち前のチャレンジ精神で独立するまで

――バックオフィスサービス業界に入ったきっかけなどを教えてください。

横倉弘和:
大学卒業後、国内系の旅行会社に入社して営業の仕事をしていました。

当時、英語がそれほど得意でなかった私は国内旅行の担当で仕事は楽しかったのですが、英語を使う業務に憧れ、猛勉強を始めました。インターネットがない時代でしたから、ラジカセでNHKのラジオ英会話をひたすら聞き、独学で学びました。そしてその後、株式会社クラブメッドという外資系の旅行会社に転職しました。

私はいわゆる昭和のコテコテな営業マンで、負けず嫌いな性格。いつも1番の営業成績を目指していました。

その後、同社のメディアマーケティングをメインで利用する営業部署に異動します。ちょうどインターネットが普及し始めた頃でもあり、ホームページの作成にも携わることになりました。客観的に数字を分析することで、お客様の満足度向上や営業の効率化につながることにも自ずと意識が向き、数字の面白さに気付いたのもこの頃です。

同社は海外旅行や来日外国人向けの旅行販売がメインだったため、当初は英語力の更なる向上がメインの目的で、米国税理士という資格を目指すことにしました。初めは分からないことだらけでしたが、簿記や会計から勉強し、努力の結果、合格することができました。

――その後、異業種に転職を考えられたそうですね。

横倉弘和:
旅行業界でもそれなりに結果を出していたため、周囲から「もったいない。なぜ180度違う世界に入るのか」とかなり止められました。

しかし、私自身に全く違う道を歩むという意識はありませんでした。良いサービスを提供してお客様に喜んでいただくという意味では、本質は同じだからです。

――会社でのご活躍から独立までについて教えてください。

横倉弘和:
私が入社したのは、世界四大会計事務所の一角を占めるアーンスト・アンド・ヤングというかなり大きな組織の日本法人(現EY税理士法人)です。最終的にはその関連会社のアウトソーシング会社で執行役員になりました。

私の父親が文具店の経営者で、その反動でサラリーマンに憧れていましたが、知らないうちに父に似てしまったようです。また、妥協できない自分の性格もあり、その後思い切って起業する決断をしました。

外資系企業に特化した「かかりつけ医」を目指す

――事業内容、基本理念、大事にしていることを教えてください。

横倉弘和:
弊社のお客様は95%以上、外資系企業、外資系日本法人など国際的なつながりのある会社です。管理部門、バックオフィス部門に関する知識経験のある社員の方が1人もいないような会社も多くあります。

弊社はそのような会社の経理、給与計算、社会保険、総務など多種多様な業務に関して、顧客企業の海外本社ファイナンス部門や人事部と直接連絡を取りながら一から十まで相談に乗り、柔軟に対応してサポートしています。弊社の事業指針は「外資系企業のかかりつけ医を目指す」です。

そのような、きめ細かなサービスを提供するためには、弊社社員の人間としての創造力、つまり「人間力」がとても重要だと思っています。ですから、昨今のAI化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の台頭に関しては全く心配していません。むしろこれから弊社の需要がますます増えると考えています。

――社員の採用や、語学も含めた教育はどのように行っていますか?

横倉弘和:
新入社員に対して、プロフェッショナルファームとしての税務や会計、人事労務関連の研修を豊富に準備しています。語学に関しては、英語に興味がある、これから上達したいという方も積極的に採用しており、希望する社員にはビジネス英会話の研修も会社負担で行っています。研修をサボらない工夫も施しているため、努力すれば早い人は2年ぐらいで驚くほど上達します。

また実務面だけでなく弊社の理念や、お客様に対する考え方なども重点的に教育しています。
例えば社員に求める3つの行動指針です。

1つ目はホスピタリティ。仲間やお客様の立場になって考え、役に立ち、喜んでもらうことで、それが結果的に自分を成長させることにつながると信じているからです。

2つ目はプロフェッショナリズムです。常に自己研鑽を積み、仲間やお客様、自らとの約束を守り、困難から逃げない。「外資系企業のかかりつけ医」を目指すためにはそれに相応しい能力を備えておかなければと思っています。

そして最後、3つ目はアダプタビリティです。他人の考えを認め、自らの考え・常識・習慣・経験則を柔軟に見直していくことで、これから先のニーズに応えていける人間になっていってほしいと思っています。

変わりゆくバックオフィスサービス業界と未来へのビジョン

――日々目まぐるしく進化していく業界にどのような対応を行っていますか?

横倉弘和:
弊社はかなり先進的にDXに取り組んでいます。直近ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を検討しており、サービスのクオリティは下げずに自動化できるところは徹底的に自動化したいと考えています。

今ここに存在しないものを生み出していくイノベーション的な分野にも力を入れていくつもりです。また、人間にしかできないアドバイスを提供することを重視し、教育や研修も引き続きしっかりと行っていきたいと考えています。こういった分野はやはりAIでは難しいと思いますね。

――貴社への転職を考えている方や若い人へのメッセージをお願いできますか?

横倉弘和:
外資系のお客様へのサービス提供において、とても複雑な日本の税金や社会保険の仕組みを文化の違う海外の方に説明することは本当に大変なことです。しかし、お客様が私たちのサービスを喜んでくれれば、それが自分自身の成長の糧になります。そのような成長を望む方には、弊社は最適だと思います。

これからは日本の人口が減少し、海外の人々が日本でビジネスを行う機会が増えると考えています。そのため私たちは異なる文化をより広く学び、共存共栄に貢献しながら進歩と発展を遂げることを目指しています。弊社は顧客満足度の調査を毎年行い、95%前後の好結果を維持し続けていますが、その水準を下げないようにしたいと思っています。

編集後記

旅行業界からキャリアチェンジし、起業して10年を迎えた横倉社長は、サービス精神に溢れ、努力を怠らず、社員の成長を願う誠意の人である。今後も仕事を楽しみつつ世界を相手にさらに活躍してほしい。

横倉弘和(よこくら・ひろかず)/1971年東京都生まれ、明治大学卒。国内系や外資系旅行会社の営業を経て、2000年に太田昭和アーンストアンドヤング株式会社(現EY税理士法人)に入社。その後、関連の会計・人事労務アウトソーシング会社のディレクター、執行役員を経て、2013年にジパングアウトソーシングサービス株式会社を設立、代表取締役社長に就任。