
従来の人材マーケットの在り方に囚われず、イノベーションカンパニーとして新しい働き方の仕組みを創出する株式会社グレフ。顧客の課題や要望と徹底して向き合い、本質的な課題解決を追求する同社は、独自の事業モデルで急成長を遂げている。その根底にあるのは、代表取締役 川上寛貴氏が掲げる「経験の前倒し」という力強い成長信念だ。若手育成に力を入れ、若手が主体となって挑戦できる環境はいかにして作られたのか。同社の事業戦略と独自の組織論について、川上氏に話を聞いた。
渡米経験で培った成長への信念と起業の決意
ーー社会人としてのキャリアは、どのようにスタートされたのでしょうか。
川上寛貴:
キャリアの始まりは、大学卒業後に入社したIndeed Japan株式会社でした。私は新卒採用の一期として入社したのですが、当時は整った研修がないまま現場に出されるという、まさに「経験の前倒し」を体現するような環境からのスタートでした。
しかし、座学よりも実践を求めていた私には、その環境が非常に合っていました。その時の実体験が自分を大きく成長させてくれたからこそ、弊社でも若手が恐れずに挑戦し、失敗から学べる環境を何よりも大切にしているのです。
ーー起業を志した経緯についてお聞かせください。
川上寛貴:
事業家だった父の影響が大きいと思います。父から「起業は最高の時も最悪の時も味わえる。生きている実感が一番湧く手段だ」と教えられて育ちました。そのため、社会人になった時から3年で起業すると決めていました。何か特定の事業をやりたいから起業するというより、「起業する」という選択が先にあった形です。
ーー大切にされている価値観についておうかがいできますか。
川上寛貴:
私は中学時代に単身で渡米し、学生時代をアメリカで過ごした経験があります。当時の経験から、現在の経営にも通じる二つの大切な価値観を学びました。
一つ目は「先入観を持たないこと」です。育った環境の当たり前が通用しない多様な文化の中で、国籍や属性ではなく「個」として向き合うことの重要性を肌で感じました。
二つ目は「経験の前倒し」です。これは、分からないことにも恐れずに挑戦し、将来直面するであろう困難を若いうちから経験してしまうという考え方です。同じ経験でも、40歳になって初めてするのと20代で経験するのとでは、その後の成長速度が全く違います。これは、成功するまで成功者のように振る舞うという「Fake it till you make it」の言葉にも通じています。若いうちから高い基準で行動し続けることで、人生はより豊かになると学びました。
失敗から生まれた顧客課題への深い理解と事業原型
ーー貴社の事業内容について教えてください。
川上寛貴:
弊社は「人とテクノロジーの力で、日本の生活インフラ産業を支える」ことを志し、小売・物流・製造・介護といった業界に対し、人材不足を解消するための解決策を提供しています。
注力しているサービスの一つが「myteam」です。これは、企業が外部の人材派遣や単発バイトサービスに依存し続けるのではなく、自社でOB・OGや登録スタッフを管理し、必要な時に働いてもらえる仕組みを構築するサービスです。採用のアウトソーシングではなく内製化をサポートすることで、企業はコストを削減しながら、労働力を安定的に確保できるよう支援します。
また、小売業に特化した業務を包括的に請け負うアウトソーシング事業も大きな柱です。具体的には、全国をカバーする専門部隊による商品陳列や品出しなど、店舗づくりに関わる業務を代行しています。。深夜の補充作業による長時間労働や、新店舗オープン時の急な人員確保といった現場の切実な課題に対し、柔軟に人員を配置します。単に人材を提供するだけでなく、業務品質の向上や管理工数の削減をワンストップで実現し、お客様が本来注力すべきサービス品質の向上に専念できる環境を構築しています。
ーー求職者向けにはどのようなサービスを展開されていますか。
川上寛貴:
「フレタレ」という人材紹介サービスを展開しています。これは、未経験の若手人材と、人手不足の業界をマッチングさせる事業です。私たちは自分たちの経営資源を見つめ直し、「何をやめるか」から戦略を練りました。その結果、キャリア採用に固執せず、ポテンシャルを持った若手人材の集客に特化することにしたのです。
一方で、建築や製造などの業界は、需要はあるものの供給が不足しています。この需給バランスの不均衡に着目し、未経験でも受け入れ体制のある業界へ若手人材を送り出すことで、企業と求職者双方の課題を解決しています。
ーーそもそも、なぜ人材の領域で事業を始められたのですか。
川上寛貴:
父が人材会社を経営しており身近だったこと、そして前職での経験を通じて「人材業界が好きだ」と感じたことが大きな理由です。
ただ、最初からうまくいったわけではありません。起業当初は失敗の連続で、最初に立ち上げたサービスも派遣事業も軌道に乗りませんでした。しかし、その失敗の過程でお客様と対話を重ねることで、顧客が本当に求めていることへの理解が深まり、現在の事業の原型が生まれました。
組織の軸となる規律と思いやりの両立

ーー経営において、大切にしている指針は何でしょうか。
川上寛貴:
事業運営においては「大義と王道」、組織づくりにおいては「思いやりと覚悟」という二つの軸を大切にしています。
まず「大義と王道」ですが、私たちにはお客様や求職者の方々に喜んでいただくという「大義」があります。それを実現するためには、近道をせず地道に成果を積み重ねる「王道」を歩まなければなりません。だからこそ、提出物の期限を守るといった基本的な規律を徹底し、専門家として当たり前のことを当たり前にやる姿勢を厳しく求めています。
一方で、組織づくりにおいては「思いやりと覚悟」を掲げています。社内メンバーには常に関心を持ち、私自身も新卒社員とは定期的に個別面談を行うなど、コミュニケーションの総量を増やす「思いやり」を大切にしています。同時に、プロとしての「覚悟」も不可欠です。仕事の悩みは仕事でしか解決できません。厳しいようですが、成果を出して自分を守るためにも、困難から逃げずに乗り越える経験を積んでほしいと考えています。
ーー貴社に入社した若手社員は、どういった活躍をされていますか。
川上寛貴:
弊社では若手社員でも具体的な戦術や施策の立案から実行まで、主体となって活躍することができます。手を挙げた人にはチャンスを与える文化です。たとえば、お客様にお渡しするポスターのデザインや新しいキャンペーンの企画なども、事業の大きな方向性は私が示しますが、若手メンバーが主体となって発案し、実行しています。コミュニケーション頻度が高いため、アイデアが生まれやすく、それを吸い上げる土壌があるのだと思います。
100億円を通過点とする社会貢献への追求
ーー最後に今後のビジョンについてお聞かせください。
川上寛貴:
まずは売上高100億円を目指していますが、これはあくまで通過点にすぎないと捉えています。重要なのは、事業を通じてどれだけ社会に影響を与え、生活インフラ産業に貢献できるかです。会社が拡大することで、社員が挑戦できるフィールドの拡大にもつながります。
私の役割は、カリスマとして先頭を独走することではありません。それよりも、社員一人ひとりが輝ける場所をつくり、彼らに寄り添いながら適切な責任と権限を渡していくことが重要です。メンバーを置き去りにして成長を急ぐのではなく、全員が自らの可能性を信じ、共に歩んでいける組織でありたいと願っています。今頑張ってくれている仲間たちが「この会社で働いてよかった」と心から思える環境を整え、次世代のリーダーを輩出していくことが私の使命です。
編集後記
「経験は前倒しした方がいい」という言葉は、成長を渇望する若者に深く響く。その根底にあるのは、失敗を恐れずに挑戦し続けた川上氏の原体験と、顧客の課題に真摯に向き合う姿勢だ。組織づくりにおける「思いやりと覚悟」という軸が、若手人材の主体的な成長を促す基盤となっている。明確な経営信念のもと、社会的に重要な領域で本質的な課題解決を追求することで、安定した影響力を持つ企業として発展していく未来が待っているだろう。

川上寛貴/1994年東京都生まれ。アメリカン大学卒業後、2017年にIndeed Japan株式会社へ新卒入社し、法人営業に従事。3年間の経験を経て株式会社グレフを創業。現在は物流・製造・建築・小売・介護など、生活インフラを支える産業に向け、IT×人材サービスで課題解決に取り組んでいる。