※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

「新規事業をやりたい」という思いが高まり、独立を決意。

たった4人から始まった会社が、ECの黎明期から現在に至るまで、300名超の従業員を抱えるまでに成長した。躍進をつづける株式会社SUPER STUDIOの林紘祐代表取締役CEOに、その背景をうかがった。

4人の信頼と集中で立ち上げたEC SaaS事業

ーー創業までの経緯を教えてください。

林紘祐:
大学を卒業後、WEB広告代理店にマーケターとして入社後、ECサイトやサービスのグロースを多数担当しました。

次第に「自分でサービスやプロダクトを作りたい」という思いが強くなり、当時の上司に「新規事業をやらせてほしい」と相談しましたが、叶いませんでした。それが独立を考えたきっかけです。

しかし、私はマーケティングが専門領域だったため、システムを開発することはできません。起業する仲間として、システム開発ができるエンジニアを誘う必要がありました。

そこで中学時代に仲の良かった花岡が、大手SIer企業でエンジニアとして働いているのを思い出しました。ちょうどタイミングよく花岡も独立を決意した時だったので意気投合し、一緒に起業することになりました。CTOの村上は花岡の大学時代の同級生です。エンジニアをもう一人メンバーに加えたいという花岡の思いで、声を掛けました。また、CROの真野は、私が前職で取引先としてお世話になっており、偶然が重なってこの4人が創業メンバーとして集まりました。

そして、自分たちが持っているスキルと経験を活かして、「世の中にインパクトを出せるようなことがしたい」という思いを軸に起業したのが背景です。

ーー今のEC SaaS事業を始めたきっかけはなんでしょうか。

林紘祐:
起業した当初は、動画メディアを立ち上げました。その頃、KDDIが主催するスタートアップ支援の「∞ Labo(ムゲンラボ)」というインキュベーションプログラムがありました。早速DIYをコンセプトにした動画メディアを応募したところ、それが採択されたのです。しかし正直なところ、そのサービスをグロースさせるのはなかなか難しいことでした。

そこで、EC/D2C支援事業を同時並行で進めることにしました。「創業メンバーや共に働くメンバーの分までとにかく稼がないといけない」という思いがあったからです。当時は、花岡が日本にいて、村上がロサンゼルスにいたので、自然と24時間体制になりました。

寝て起きて引き継いでと、常にリモートでコミュニケーションを取りながら開発を行い、私自身はマーケティングや物流領域を担当しました。とにかく、寝食を忘れて稼ぐために働きました。

EC/D2C市場はトレンドやマーケティングが流動的です。EC/D2C支援事業のためのカートシステムも自社開発しましたが、ものが売れれば売れるほど新しい機能が必要になり、本当に24時間体制で開発をしなければなりませんでした。

そうこうするうちに、EC/D2C支援事業のほうが順調に成長し、ある一定の売上を出せるようになっていました。それでEC/D2C事業へと本格的にシフトし、今のSUPER STUDIOのメインプロダクトである「ecforce」を正式にリリースしました。これが2017年のことです。

ーーEC/D2C領域は寝食を忘れて働くほどの魅力があったのですね。

林紘祐:
当時のEC/D2C運営は、今のように全オペレーションが自動化されていたわけではなかったので、自分たちが手作業で行っていたことも多くありました。しかし、自分たちが経験したからこそ「これは自動化すべきだよね」という気付きもあり、その経験を糧にecforceの開発を推し進めることができたのだと思います。

これにより、ecforceはECメーカーの担当者が2名の体制でも年商10億円の事業が運営できるくらいに効率化されました。

エネルギッシュに活動できたのは、それだけEC/D2Cという領域に可能性を感じていたからこそだと思います。

ビジネスの成功に欠かせない信頼関係

ーー4人の共同創業がうまくいっている秘訣はなんでしょうか。

林紘祐:
相性が良かったことに尽きると思います。普段から1対1であったり、4人で集まったりして話す時間を設けています。得意な領域がそれぞれ全く違うので、お互いが補い合って良い信頼関係を築けていると思います。

そしてなによりも、「何をやるかより、誰とやるか」という思いを軸に集まった4人です。この思いは、今のSUPER STUDIOのカルチャーにも強く根付いています。

4人の関係性に限らず、会社としてもコミュニケーションをとることの重要性、人と人との信頼性、相手を敬うことを大切にしています。

ーープロダクト面の強みについて教えてください。

林紘祐:
私たちは、ただシステムを提供しているだけではありません。ECを立ち上げた時に培ったノウハウをシステム側に還元し、常にメーカー目線で機能開発を行っていることが強みです。

単純にシステムや機能を提供するのではなく、「お客様はどこまで事業を伸ばしたいのか」「事業を伸ばしていくためには何が必要なのか」「どの機能をどのように活用すると成果が得られるのか」という、カスタマーサクセスやサポートの領域が他社と比べて強いと思います。

サプライチェーンソリューションも弊社の強みです。ECはシステムさえ導入したら始められるわけではなく、製造・商品開発から配送業者や倉庫との連携まで、いろいろな課題が出てきます。「どのような業者と連携したらよいか」はジャンルによっても異なります。

弊社は、そこにおいても経験値があり、パートナー企業がいます。そういったパートナー企業をお客様にご紹介するだけでなく、運用開始後のサポートまで一貫して取り組んでいます。そういったところを含めて、サプライチェーンマネジメント(SCM)ができることも弊社の強みと言えます。

今後の展望と戦略

ーー今後の展望についてお聞かせください。

林紘祐:
ecforceの次の戦略として、テクノロジーとデータを活用して“ビジネス全体”を最適化する「統合コマースプラットフォーム」を掲げています。昨今、コロナ禍を経て、再びOMOの取り組みに注目が集まっています。

EC領域であるオンラインと、リアル店舗などのオフラインのデータを統合管理し、顧客とのコミュニケーションにデータを活用していく。ecforceは今後、ECビジネスの最適化に留まることなく、モノづくりのビジネス全体を最適化することを目指していきます。

ーー取引先としてはどのような企業が多いのでしょうか。

林紘祐:
ecforceをリリースした当時は、コスメや健康食品などの定期通販事業者が割合としては多くいらっしゃいました。今はアパレルや食品関連のお客様も増え、直近一年では、エンタープライズ企業のお客様にもecforceを導入いただいています。

今後は先程も述べた通り、ECだけで事業を展開しているお客様だけでなく、販売チャネルを多角化されているお客様に向け、統合コマースプラットフォーム「ecforce」としての価値を提供していきたいと思っています。

ーー海外市場についてはどのようにお考えでしょうか。

林紘祐:
日本進出を検討している海外のお客様からお問い合わせが増えてきているのと、逆もしかりで、海外進出を検討されているお客様のニーズもあるので、それに対してのソリューションをご用意しています。

ーー人材確保とAIの活用についてお聞かせください。

林紘祐:
人材マーケットは、なかなか厳しい状況が続いていますが、今後も採用には注力していきたいと思っています。

技術に関しては、AIの活用にも力を入れ、ecforceにもAIが活用されていく可能性も考えられます。人の手を使わなくて良い領域の自動化をメインに進めていけたらと思っています。

CHANGE、INSIGHT、HONESTYの3つのVALUEに込めた思い

ーー貴社の社風、カルチャーについて教えてください。

林紘祐:
弊社には「CHANGE」「INSIGHT」「HONESTY」という3つのVALUEがあります。それぞれ「変われる人であれ」「本質を見極めろ」「人格者であれ」という意味が込められていますが、全社員が参加する月次の会議体でも常にVALUEをベースに最近の自分の考えや感じたことを話しています。

ビジネスの仲間、社内のメンバー、お客様、ビジネスパートナーも含めて、「相手が何を求めているのか」「相手にとって何がメリットなのか」ということをしっかり考えながら誠実に対応することは、新入社員でもベテラン社員であっても同じだと思っています。

これら3つのキーワードを本質的に理解できる人であってほしいと思います。

ーー働くうえで特に大切にしている考えはありますか。

林紘祐:
前職の上司には良い環境で働かせていただいたので、変化することに躊躇しない人生を送ることができました。変化を受け入れることにストレスがかかることもありますが、「変化を受け入れ、楽しめる人であってほしい」というメッセージを常に社内に発信しています。

今後も環境が大きく変わっていくものだと思いながら、それを楽しめる人になってほしいと強く思っています。

編集後記

穏やかな語り口で人と人の関係性や人間性を大切にしながらも、変化を恐れず事業を推進していく林CEO。新しい時代のリーダーが切り開くECの将来に注目していきたい。

林紘祐(はやし・こうすけ)/1987年、大阪府出身。関西大学卒業。Web広告代理店にマーケターとして入社後、ECサイトやサービスのグロースを多数担当。2014年に株式会社SUPER STUDIOを共同創業し、同社CEOに就任。現在は新規事業開発や外部アライアンスを率いる。