※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

2005年12月、東京都千代田区で設立された株式会社アスタリスク。IT事業に始まり、多彩なペット関連事業も手がける興味深い会社だ。代表取締役CEOの西 真氏に、設立の経緯と歩み、これからの展開についてうかがった。

好成績のアパレル営業からITの世界へ

ーー西社長のご経歴を教えてください。

西 真:
新卒で大手アパレルメーカーに入社し、11年ほど営業を務めました。営業成績は常にトップでしたが、報酬に反映されるのはほんのわずかで、途中から転職したいと思うようになりました。

アパレルから一度離れようと思い、転職後は職業訓練校のパソコン教室でIT知識を学び、その後に知り合いの紹介で入社したITベンチャー企業の営業としてスタートしました。

入社当初はアパレルとの環境の違いに苦戦しましたが、半年後には結果が出て、少人数の会社でしたが3年目には役員を務めることになりました。本当は早く独立したかったのですが、「独立するときは応援するから1年だけ役員をお願いしたい」と言われ、引き受けました。

起業家の挑戦――「IT×ペット」が会社の軸になるまで

ーー事業を2本化した背景をうかがえますか。

西 真:
最初は、独立時についてきてくれた7人のメンバーと一緒にIT事業を立ち上げました。ただ、当初から「会社の武器は1つよりも複数あった方がいい」と考えていました。

ドッグウェア事業を始めたきっかけは、愛犬を飼う際にペットショップの店員から「寒い時期はワンちゃんに洋服を着せて」と言われたことです。たしかに冬季はおなかが冷えやすいので、犬の健康を保つためにもいいと思いました。ところが、約20年前はデザイン性と機能性を備えた犬用の服が少なく、私が好むアイテムが見つかりませんでした。

アパレルの経験があったので、自分で愛犬の服を作ってみたところ、ドッグカフェで「どこのブランド?」「うちの子にも着せたい」と複数の人から声をかけられたのです。ビジネスの可能性を感じ、無料で製作するのでリアルな要望や修正点を聞きたいと伝え、約10名の方にフルオーダーでドッグウェアをプレゼントしました。

それから1年ほど個人で活動して、お客様や商品数を増やしました。メンバーには社長の趣味を事業化したと思われないように、一定の実績を作ってから皆に相談したかったのです。それから1年後、ドッグウェア事業を創設したいと打ち明けたところ、実績があるならと全員が快諾してくれました。そして、その後のペットブームに乗ることもでき、2つ目の事業の柱となっていきました。

ーー起業後の印象的なエピソードはありますか?

西 真:
会社を立ち上げて10年という節目に、社運をかけた2つの大きなチャレンジをし、そのうち1つが大きく失敗しました。インディーズ向けの音楽配信サービスを制作したのですが、収益が上がらず4年ほどで廃止したのです。そのとき私はペットサロンの事業譲受を中心に進めており、IT部門は幹部たちに任せていました。

優れたシステムだったのに作ったことで満足し、運用に失敗したことが原因ですが、任せきりにした私の責任だと思います。

経営難からボーナスも出せなくなると、事業に携わったメンバーは悲しいかな辞めていきました。今でもつらい記憶ですが、「会社をつぶすわけにはいかない」という強い思いで再起して、現在はここ5年間で採用したメンバーが会社の中心を担ってくれています。

強みは「エンジニアの人間力」と「充実したペット関連事業」

ーー事業の強みはどこにあると思いますか?

西 真:
ITに関しては、エンジニアのコミュニケーション能力やヒューマンスキルを大事にしています。仕事を任せやすく、かゆいところに手が届くとお客様にとても好評です。営業マン時代から「お客様に信用されること」が重要だと考え、当たり前ですが社員には「大きな声で挨拶する」「落ちているゴミは率先して拾う」といった心がけの大切さも丁寧に説いています。

これはペット事業でも全く同じです。製品力やサービスも強みではありますが、やはりそれに関わる人がいちばん重要だと考えています。

また優秀なエンジニアがいるので、今後はワンちゃんとITを組み合わせたサービスを作りたいですね。「仕事も遊びも楽しむ会社」であるために、やるべきことを全員で考えています。

イベントを創造し、ペット界隈のコミュニティを盛り上げる

ーーイベントの企画など、新しい試みもされていますね。

西 真:
日本犬に特化したイベント「ZIPANG〜日本犬の祭典〜」が、2024年で開催5回目となります。ドッグフードや玩具、雑貨などのメーカーが出店するほか、ステージ上でのセミナー、ゲームといったコンテンツも満載です。開催地は那須ハイランドパークと協業し、園内にも入場できます。テントを張り、愛犬とのんびり一日遊ぶのもおすすめです。

柴犬を飼って気付いたのですが、日本犬はいわゆる「ガウガウ犬」なので、飼い主は日常あまり犬同士を近づけさせません。ZIPANGを通して飼い主同志のコミュニティが生まれ、フードや飼い方の情報交換が盛んになり、結果的にワンちゃんのためにもなっていると思います。

編集後記

アスタリスク社が手がけるブランド「ULTIMATE NERVOUS」は、ワンランク上のドッグウェアが揃うと愛犬家に評判だ。またドッグサロンの「Ultimate Plus+」は予約が取りづらい人気店だとか。実績豊富なIT技術とユニークな企画力を活かし、今後も新たな価値を生み出していく企業に注目したい。

西 真/1967年、宮崎県生まれ。東海大学文学部英文学科を卒業。大手アパレル会社で11年にわたり営業を務める。IT関連ベンチャー企業へ転職し、常務取締役に就任。2005年にIT事業とペット事業を営む株式会社アスタリスクを設立し、19期目を迎える。