part.4 海外でも通用する日本のものづくり企業の強み

社長対談 第3回のゲストは、幻のスポーツカー『トミーカイラZZ』を復活させ、多様なEV(電気自動車)開発に挑むGLM株式会社の小間 裕康氏と、世界初、民間商用の超小型人工衛星を開発する東大発ベンチャー、株式会社アクセルスペースの中村 友哉氏。
新進気鋭の経営者が語る、ものづくりベンチャーの挑戦と可能性。その秘めたる想いに迫ります。

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海外でも通用する日本のものづくり企業の強み

【中村】
私からすると、やっぱり日本はものづくりをする上では環境に恵まれているなと思うんですけれども、小間さんから見て、日本の中小企業、大企業でもいいんですけれど、ものづくりに対する強みといいますか、感じるところはありますか?

【小間】
今うちは、大企業も中小企業も海外も,国内も取引しているんですが、特に日本の中小企業の凄さというのは感じますね。この車の車体になるアルミフレーム、これは熔接するのですが、熔接の技術など、そういうところが全然違うんですね。

例えば、この車は十数年前、『トミーカイラ』というところが同じコンセプトでつくったのですが、当時の『トミーカイラ』というのは、イギリスで生産されていました。しかし今は日本でつくっているんですね。車の外装をはがすと、中の熔接の細かさなど、全然クオリティが違うんですよ。これは海外の方とか、結構見る人は見ていて、「やっぱりすごいな」といってくれますね。

【中村】
アルミの熔接ってそもそも難しいですよね。高度な技術がいると聞いているので、そういった意味では、そういった熟練した技術者が沢山いるということなんですかね。

【小間】
それと、感性といいますか、気質というのもあるのかも知れないですね。

【中村】
完璧を求めるんですかね。

【小間】
そうですよね。

【中村】
我々も、何気なしに普段、アルミ削りなど依頼するのですが、実は、我々が思っているより難しい。

例えば、宇宙に持っていく時には、やっぱりなるべく軽くしたい訳ですね。ですから、板一枚発注する時も、強度を落としたくないから削る訳ですね。中を何も考えずに削っていると、できあがった時に熱で反ってしまうんですね。

それは困るので反らないように、色々な工夫、例えば熱を溜めないような工夫など、そういったことを中小企業はやってくれるんですね。しかし、海外はそれが全然できないので我々が図面を引く訳ですよね。この交差は、こんな位置にとか、平気でかいているんですけれど、実はそれって何も考えないと大変で。海外の衛星とか見る機会もあるんですけれど、ズレることが前提の設計になっているんですよ。だからここは別に1ミリくらいずれても何とかなるとか、例えばネジが通る穴が凄く大きいとか、そういう設計をしているんですね。

ですので、これを見た時に普通はこういう設計をしないと、そもそもちゃんと図面通り上がって来ないんだなということが分かって、海外の事例を見て日本のものづくりの精度の高さを思い知らされたといいますか、そういった意味では恵まれていると思うし、図面が図面通り上がってくることに感謝しないといけないんだなと。

【小間】
そうですよね。日本の中小企業、ものづくり企業って知恵がありますよね。大企業と中小企業の間が凄く近かったりして、特に開発現場と、中小企業が近かったりするので、中小企業の社長なんだけれど、元々大企業にいたとか、もしくはダイレクトに開発現場とやりとりしながら仕事をしている方が多いので、最初の生み出すところを一緒にやっている人が多いと思うんですね。

海外になると、生み出されて、量産してねというところを、なぜこの形なのか、このサイズなのかって分からないまま、とりあえず言われてことをやっていくという文化で、会社がつくられているところと全然違う。生み出すために、どう考えるのか分かっている人が日本では多いので、そういうような場というのが、日本独特の力になっているような気がしますよね。

【中村】
やっぱり、生み出す苦しみというのが分かっているから、我々に共感してくれて、一緒に良いものつくるにはどうしたらいいかって、本当に一緒に考えてくれますし、そういう意味では、そういったメーカーが沢山あることは、日本の強みでもあります。そういった素地があるから、我々ベンチャーが出てきても、それを支える仕組みというのがしっかりできているのかなと。

ものづくりベンチャーは日本が世界をリードしてもいいんじゃないかとか、思ったりもするんですけれどね。

【小間】
これからやはり知恵の部分がぐっと凝縮されて、あとは大きく展開する時に、どこか外注を使うということになるかも知れないので、そうなった時は日本はこれから強くなりそうですよね。

【中村】
一つ思うのは、そういったメーカーの強みってあるんですけれど、これまで人が一生懸命頑張ってきたから、優位だったって点があると思っていて。でも今は、例えば3Dプリンターとか出てきて、別に人の能力によらず、良い物ができたりし始めてるじゃないですか。

そういったところもやっぱり対応していくというのは、日本のこういった中小企業もやっぱり必要なのかなと。技術革新のスピードって、10年前にしても全然違うと思うし、そういったところをやっぱり克服できるような仕組みというのを、我々からもそういった情報って普段触れるから、そういったところを中小企業やパートナーさんに共有して、より良いものを一緒につくっていく雰囲気といいますか、つくっていけるといいなと思っていますけどね。


GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康

EV(電気自動車)を開発する京大発ベンチャー。「幻のスポーツカー」と呼ばれる『トミーカイラZZ』をEVとして復活させた。2015年8月、VCなどから総額17億円の資金調達を行う。
小間氏は2010年にグリーンロードモータース(GLM)を設立。国内のベンチャー企業で初めて、EVスポーツカーでの認証を取得した。

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この社長のもとで働きたい
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株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村 友哉

超小型人工衛星を開発する東大発ベンチャー。世界で初めて民間商用の打ち上げに成功し、2015年11月には19億円の大型資金調達を行う。
中村氏は、東大在学中に超小型人工衛星の開発に携わり、卒業後、同専攻での特任研究員を経て、2008年にアクセルスペースを設立。

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