「CAE(Computer Aided Engineering)」は、パソコン上で疑似的に再現した製品の荷重や振動による強度問題、熱問題といった設計問題をシミュレーションする技術を指す。
自動車、鉄道車両、家電機器、さらには原子力発電や宇宙開発などの研究・開発工程においても欠かせない技術である。
そのCAE受託解析のパイオニア企業が日本アムスコだ。
開発期間やコストの削減、品質向上につながる形状提案などを通じて、顧客企業のものづくりを初期段階から支援している同社を率いる西脇社長の思いを伺った。

※当コンテンツは取材費や試供品等をいただき記事を掲載しています。
父が創業した会社を引き継いで再生
-日本アムスコの経営を始めた経緯についてお聞かせください。
西脇良一:
日本アムスコは父が創業した会社です。「アムスコ」という社名は「EMSCO(アース・ムービング・システム・コンサルテーション)」に由来し、もともとは土を動かす機械の設計コンサルティングを手がけていました。
私自身も大学時代にここでアルバイトを経験し、将来は機械設計の道に進みたいと考えるようになりました。
大学卒業後は三菱重工業のグループ企業に入社し、国際宇宙ステーションやロケットの発射台といった宇宙開発、そして原子力の事業に携わり、CAE業務を経験したのですが、「いずれ父の会社に加わる」という目標を持ち、他分野の機械設計の勉強もしていました。
ところが、阪神・淡路大震災で父の会社が借りていたビルが倒壊し、事業の継続が難しくなってしまったのです。
その後、父が病に倒れて会社は休業状態となり、日本アムスコという屋号だけが残ることとなりました。
それでも、父が築いた会社を自分が引き継ぐという気持ちは変わりませんでした。
三菱重工業のグループ企業は入社9年で退職したのですが、その理由は社員数10名ほどの小さな会社に誘われたからです。社長がとてもユニークな方で、どのような経営をしているのか、近くで見ておきたいと思いました。
その会社で2年間勤めた後、日本アムスコの再生に乗り出し、機械設計とは異なるCAE業務をスタートさせました。
CAE事業を始めた理由
-機械設計のビジネスを継承せず、CAE事業を始めた理由は何だったのですか。
西脇良一:
事業の出発点は、お金の管理が苦手な友人が経営する広告代理店をサポートしたことでした。その後、トヨタ自動車がCAEの人材を集めているとの情報をキャッチし、トヨタ自動車の関連企業とCAE受託業務の契約を結びました。
私自身がトヨタ自動車本社に派遣されるという形で業務をスタートし、そこで3年くらい自動車関連のCAEに没頭しました。
「将来はトヨタ自動車から仕事を持って帰る」という意気込みで臨んでいたところ、運よくトヨタ自動車もシミュレーションに力を入れていくという流れが強まりました。
CAEの仕事がトヨタ社内で増え始めたものの、民間の受託会社はあまり存在しなかったことで、日本アムスコがトヨタ自動車に対してCAE人材で協力を加速することができました。
-会社を再建された当初は、苦労もあったのではないでしょうか。
西脇良一:
一番の苦労は資金繰りでした。ぼんやりと光明は見えていましたが、本当にずっと苦しかったのは事実です。金融機関にはなかなか口座を開いてもらえず、どこを回っても門前払いされる状況が続きました。
当時は、親戚からお金をかき集めていたのですが、とにかく現金を残して会社を存続させるようにし、与信管理をしっかり行わなければならないと痛感したことは強烈な勉強になりました。その経験は、後々の経営にも活きたと思っています。
日本アムスコが社会に提供している価値
-貴社が社会に提供している価値について、どうお考えでしょうか。
西脇良一:
トヨタ自動車で仕事をしていた頃は、成果をお返しすると喜んでいただけることが多々ありました。それが社会貢献になっていくという思いから、「ありがとう」を増やしていきたいと考えていました。
メーカーとしては、新商品は常に性能や品質を高めなければなりません。CAEは軽量化やコンパクト化、コスト削減など、すべての改善につながっていきます。
原子力や宇宙開発に関係する製品は、過酷な環境的要因で実験検証が困難です。
そのため、CAEによるシミュレーションが必要になるのですが、原子力、宇宙開発については三菱重工業のグループ企業で働いたときに得た知識が役立っています。
技術と人間力を掛け合わせたサービスが強み
-長きにわたり大手クライアントから信頼され続けている、貴社ならではの技術的な強みや安定の理由は何でしょうか。
西脇良一:
一つのことに専念し続けた結果、現在の立場を確立できたと感じております。 味にこだわるラーメン店を長く続けてきたようなイメージで、CAEに専念して技術を突き詰めた結果、今のポジションがあると思っています。
また、このような仕事をしていると、技術者が集まって技術で勝負するという観点に目が行きがちですが、CAEは技術と人間力を掛け合わせたものです。
そのため、自分たちはサービス業であることを忘れてはいけないということを徹底しています。
製品に関する提案、着眼点、効率化、改善など、何でもいいのでお客様を喜ばせなければなりません。社内の評価制度も、お客様からの評価を見える化するようにしています。
お客様の要望に応え、満足していただくのは当たり前で、及第点に過ぎません。
そこからが付加価値になっていくのですが、社内ではサービス業としての軸ができあがっているので、経営者の立場では非常に頼もしく感じています。
社員が仕事の誇りや楽しさを実感できる会社に
-エンジニアは機密上「客先常駐」も多々あると伺っていますが、そのような環境下でも貴社は「社員を大切にする」という哲学を掲げてらっしゃいます。具体的にどのようなフォロー体制や、社員への思いをお持ちですか。
西脇良一:
日本アムスコには「ものづくり(CAE)を通して、技術向上への飽くなき挑戦を行う」「やりがい(仕事)を通して、人間力を向上させ、豊かな会社を目指す」という社訓があります。
シミュレーション技術を使って世の中に貢献し、物心ともに社員の豊かさを満たすという企業理念を忠実に守っています。
社員が働くことに誇りを持ったり、仕事を楽しめたりする会社にするのが理想ですが、まだまだ道半ばだと思っています。
会社を始めた頃は「10人くらいの規模で社員が楽しく、生涯ユニークに暮らせたらいいな」と思っていたのですが、今はそう遠くない将来に社員数1000人を達成したいと考えています。
社員の給与水準も、もっと上げていきたいですね。
時代が変わってもCAEがなくなることはない
-AI技術などが進歩する中でのCAEの展望と、今後のビジョンを教えてください。
西脇良一:
CAEにAI技術が浸透してくるのはまだまだ先のことですが、AIが進化してもシミュレーションの技術がなくなることはありません。
近年、CAEソフトウェアの進化により操作性や機能が大幅に向上しているのは事実です。しかしその分、解析結果の信頼性や妥当性を評価できるエンジニアの価値が一層高まっており、こうした技術の変化はむしろ成長の機会と捉えています。
今後は、高度なツールやAIを使いこなし、そこから得られるデータの意味を正しく判断できるCAEエンジニアの存在がますます重要になると考えています。
そのため、社員一人ひとりがツールの使用だけでなく、計算の妥当性評価まで行えるよう、日々の業務と教育機会を通じて支援しています。
また、私たちのグループ会社ではメーカーからの依頼を受けてオリジナルの解析ソフトウェアを開発・提供しており、ツール提供の面でも貢献できる体制が整っています。
CAEの知見を持つユーザー企業として、ベンダーや開発企業とも連携し、複数の立場の橋渡し役を担っているのも日本アムスコの強みです。
ソフトウェアがどれだけ進化しても、それを活用して開発プロセスに価値をもたらすのは人間の知見と判断です。
私たちは、その役割を担う存在であり続けるとともに、進化する環境に合わせてサービス内容と技術レベルを柔軟に変化させていきます。
時代が変わっても、CAEの本質的な価値を見失うことなく、技術者が能力を最大限に発揮する体制と事業展開を継続していく考えです。
-最後に、これから社会に出る新卒の求職者へ向けてメッセージをお願いします。どのようなビジョンやマインドを持った学生に、貴社の仲間になってほしいとお考えですか。
西脇良一:
この仕事や会社であれば必ず生き残れるというものはなく、社会に出ればその中で戦わなければなりません。
それを楽しむしかないのですが、楽しむためには先見性のある会社に入る必要があります。
日本アムスコは、1つのことに没頭できる力や、技術に対する純粋な探究心を持つ「職人気質」な社員が多いのですが、多様な個性を持つ人材がそれぞれの強みを発揮しながら伸び伸びと活躍できる環境です。
与えられたやり方をなぞるだけでなく、自ら考えながら取り組む姿勢を持って仕事と学びの双方を高め、ゲームチェンジのタイミングを楽しめる方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
編集後記
日本のものづくりに欠かせないCAEのシミュレーション技術を通し、幅広い産業を支えている西脇社長。未来を見据えては「進化する環境に合わせてサービス内容と技術レベルを柔軟に変化させていく」と語る。技術力をさらに高めながら社員とサービスの価値観を共有し、社会に貢献する株式会社日本アムスコの今後に注目したい。
西脇 良一(にしわき・りょういち)/1966年、兵庫県神戸市生まれ。近畿大学理工学部機械工学科を卒業後、三菱重工業のグループ企業に入り、原子力や宇宙開発に関係するCAE業務に従事。父が創業したものの休業中だった日本アムスコをCAE受託業務の会社として再生し、代表取締役に就く。社会の変化に柔軟に対応しながら農業機械、鉄道車両、建設機器、航空宇宙関連、半導体、スポーツ関連などへと顧客ポートフォリオを拡大し、2026年4月時点の売上高は24.3億円に達している。
会社概要
社名 株式会社日本アムスコ
本社所在地 兵庫県神戸市中央区東川崎町1-3-6 LS KOBE 1F
設立 1987年
業種分類 機械設計サービス業
代表者名 西脇 良一
従業員数 307名(2026年4月現在)
WEBサイト 日本アムスコ