part.5 人材マネジメントと情報のオープン化

社長対談 第4回のゲストは、様々なリゾート地の再生を成功させ、日本に新たなリゾートの概念を生み出した“観光業界のカリスマ”星野リゾートの星野 佳路氏と、ライフスタイルブランドの「ショップジャパン」を運営し、『ビリーズブートキャンプ』『ワンダーコア』などのヒット商品を次々と生み出す、株式会社オークローンマーケティングのハリー・A・ヒル氏。
多くの人を感動させる商品・サービスを追求し、大企業へと成長させたお二人が語る経営の極意に迫ります。

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人材マネジメントと情報のオープン化

【星野】
会社で少しずつ新卒採用ができるようになりまして、今は年間大体200人、入ってくるんですよ。

【ヒル】
応募はどのくらいですか?

【星野】
書類だけでいうと、3,000人くらい。

【ヒル】
ほぼ一緒ですね。

【星野】
書類を送ってくれて、その中から200人採用しているんですけれども、今の課題というのは入社してくれた人たちに長くいてもらうこと、これが大事なんですよね。ですから、離職率を下げていく、その為に仕事を楽しくしていく、楽しく仕事をしてもらう為には、あまりこちらから研修とか教育とか、こういうふうにしなきゃいけないということを教えるという態度ではないんですね。

どちらかというと、楽しく仕事をしてもらう為にやりたいことをやってもらえるようにしなきゃいけない。言いたいことは言いたい人に言いたい時に言える組織文化をつくろうと。フラットな方が本当は楽しくなるはずで、あまり上下関係も厳しくするべきじゃないし、お客様に満足して欲しい気持ちはみんな持ってくれています。

その気持ちを自由に活動できるといいますか、自分で考えて自分で行動できることをやった方が仕事は楽しくなるし、そうすると結果、長くいてくれますしね。そこが経営課題として今大事になってきてしまっているので、組織文化をフラットにすることを僕は一生懸命やっていますね。

【ヒル】
社員はどういうふうに評価しているんですか?

【星野】
コンピテンシー評価という評価方法なんですけど、顕在化してもらった能力を評価するということで、売上とか数値目標とかで僕たちは個人を評価しないんです。

それはやっぱり売上とか数字というのはチームで営業していますし、時代や場所によっても結果というのは個人の能力と必ずしも一致しないんですよね。

ですから、僕らは本人の考える力、接客の能力、リーダーシップ、発想力、そういうものを数値化しまして、評価制度を導入しているんですね。

【ヒル】
私たちも同じように取り入れているんですけれども、私たちは「オープンブック・マネジメント」を2002年から徹底しています。

全社員が必ず今の会社の状態、売上利益がどうなっているのかが分かる。業績連動制度、会社が数値達成をすれば全社員に賞与が出るとか、これは以外と平等で、後は評価によって更に(報酬を)もらうということを結構徹底的にしているんです。

ただやっぱり、私が10年以上経営をして感じたことは、業績面でオープンブック・マネジメントは非常に良いことなんですけれども、お金の為だけに人は働けないですよね。

ですから、もう一度我々が「なぜ?」「Why?」、何の為にやっているのかという「Why発信」を心がけています。そうすると、各社員が自分の仕事に意味があることを気づかせることができ、自分の仕事に意味があると思えば行動がとても良くなる。

しかし、自分が何の為にこの仕事をしているかが分からなくなると、結局ダラダラするんです。ですから、段々会社が大きくなるにつれて、徹底的な「Why発信」が出てくるんです。

特にマネージャーの評価に関しては、3つの評価に分けたんです。1つは目の前の数字、それが当然できたらできたで評価する。これが3分の1。

もう1つは人材育成。どういうふうに人を育成して準備しているのか、これも3分の1。

それから最後は、自身の将来の成長の準備をしているか、これが最後の3分の1。

なぜそうなったかというと、今とこの数年間で感じたことが、去年の前期に一番数字ができたところが、意外と次の年は良くないんですね。それは、一生懸命目先の数字ばかりを追って、それができたとしても、とてもではないけれど、来年に引き継ぐことが難しい。

ですので、なるべく行動、将来、今で3つに評価を分けた結果、少しずつ良くなったかなと思います。


星野リゾート 代表 星野 佳路

30ヶ所以上でホテル、リゾート施設を運営。困難だと言われていたリゾート地の再生を次々と成功させる“観光業界のカリスマ”。
星野氏は慶應義塾大学卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院へ入学。1989年に星野温泉(現星野リゾート)へ入社。約半年後にシティバンク銀行へ転職し、リゾートやホテル事業の債権回収業務などを担当。1991年に星野温泉(現星野リゾート)に再入社、代表取締役社長に就任。2001年に初めてリゾートの再生案件を受け、2004年に黒字化に成功。その後も困難だと言われていたリゾート地の再生を次々と成功させる。


株式会社オークローンマーケティング(ショップジャパン) 代表取締役社長 ハリー・A・ヒル

ライフスタイルブランド「ショップジャパン」を運営。『ビリーズブートキャンプ』『ワンダーコア』等のヒット商品を次々と生み出す。
ヒル氏は、米国コーネル大学文学部を卒業後、来日。その後、米国へ帰国し証券会社へ就職するも、日本での成功を目指し再来日。1999年にオークローンマーケティングに入社。コールセンター統括を経て、2006年に代表取締役社長に就任。ヒット商品からロングセラーへ育てることで、安定したブランドを確立したことにより、社長就任後6年間で3倍の売上規模にまで成長させた。

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