※本ページ内の情報は2023年10月時点のものです。

ビジネスにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の普及により、ソースコードの記述をせずにアプリケーションの開発ができるノーコードや、最小限のソースコードの記述でソフトウェア開発を内製できるローコードといった手法が注目されている。

そんな中、ソフトウェアの機能を部品として開発し、それらを組み合わせることで業務システムを構築することをコンセプトにしたクラウド型アプリケーションの開発運用プラットフォーム「LaKeel DX」の販売を行っているのが、株式会社ラキールだ。

自社独自の製品を通じ、新たなソフトウェアビジネスを生み出そうとする久保努氏の思いを聞いた。

MBOを実行し自社製品の開発に挑む

――ワークスアプリケーションズグループから独立するまでの経緯についてお聞かせいただけますでしょうか。

久保努:
当社は2005年に創業し、2011年にワークスアプリケーションズによる資本参加を受けました。その後は、ワークスアプリケーションズが提供するERPパッケージ(企業の基幹系業務の情報を統合管理し、企業経営に役立てるための業務管理システム)の周辺開発をしていました。

2017年頃になって、ワークスアプリケーションズが当社を売却するという話が出たのですが、売られるくらいならば自分で会社を買い戻そうと決意しました。
しかし、早かれ遅かれワークスアプリケーションズからの仕事はなくなることは分かっていました。そこで今後は、当社オリジナルの製品サービスで勝負しようと思い、クラウドアプリケーションにフォーカスして経営戦略を練り直しました。

独立後、利益の大半を費やし、当社のオリジナル製品として生まれたのが、すべてのソフトウェアを部品として開発し、それらを組み合わせることで業務システムを構築することをコンセプトにしたクラウド型アプリケーションの開発運用プラットフォーム「LaKeel DX」です。

当初はシステム開発・運用の生産性を上げるためのプラットフォームとして社内で使う予定だったので製品化するつもりはありませんでしたが、ある企業向けのサービス開発に適用し使ってみたところ、これはきっとエンドユーザーも求めているものだと感じ、製品化に踏み切りました。

また、ブランディング戦略として製品ブランドと社名を統一した方がいいだろうと思い、2019年10月に商号も株式会社ラキールに変更しました。

初期バージョンは機能不足や品質面でも安定しなかったため、1年程度販売を停止し、再度、製品をブラッシュアップし販売し直したところ売上が伸びるようになり、2021年には当時の東京証券取引所マザーズに上場することができました。

この製品コンセプトは、私が2000年頃から構想を練っていたもので製品化に時間はかかってしまいましたが諦めずにやってきてよかったなと思っています。

また、クラウド全盛期時代にクラウドアプリケーションの開発や運用で必要な機能をプラットフォーム化したのもタイミング的によかったと、今になって思います。

自社独自の製品を開発した背景

--自社独自の製品を販売された背景についてお聞かせいただけますでしょうか。

久保努:
「LaKeel DX」のリリース前は、新規の開発プロジェクトを立ち上げ、それが終わるとまた違うプロジェクトを立ち上げるといった感じでスクラッチ開発の繰り返しでした。

しかし、このまま労働集約型のビジネスモデルを続けても会社の業績は安定しないし、従業員も疲弊してしまうと危機感を覚えていました。

そこでサブスクリプション型のサービスであればお客様に継続して使っていただけ、当社の業績も安定すると思い、独自の製品サービスの開発を進めようと考えたわけです。

--「LaKeel DX」の強みについてお聞かせください。

久保努:
「LaKeel DX」はソフトウェア部品を組み合わせてシステム構築するので、お客様が使えば使うほど技術的資産としてソフトウェア部品が蓄積され、再利用することで更に生産性を高めることが可能になります。

また、継続的にアプリケーションをアップデートできるため、長く使えば使うほどコストメリットを感じていただけると思います。

更に組み合わせたソフトウェア部品は常にクラウド上で最新の状態に保持されているため、例えば新規事業で業務システムが必要となった際には、これらのソフトウェア部品を再利用すればスピーディーに業務システムを構築することができます。必要に応じてソフトウェア部品を組み替えられるのもメリットです。

株式会社ラキールの今後の展望について

――貴社の今後の戦略についてお聞かせいただけますでしょうか。

久保努:
「LaKeel DX」を多くの企業で採用していただきソフトウェア部品が蓄積され、再利用されるようになれば、これまでとは異なるソフトウェアの考え方、あり方、すなわちソフトウェアの部品産業を創出できるのではないかと考えています。

今後、ソフトウェア部品の需要も高まり、部品の組み合わせ方や使い方についてアドバイスするコンサルタントなど、新しい仕事のスタイルが生まれるのではないかなと思っています。また、AI技術の活用がさらに広まればソフトウェア部品を自動的に組み合わせることもできるようになるでしょう。

株式会社ラキールが求める人物像

――どのような方に入社してほしいと思われますか。

久保努:
スピード感を持って決断し、すぐに行動に移せる人ですね。

今の時代はスピード・決断力・行動力が求められていて、どれかひとつでも欠けていたら意味がありません。

そのため自分の仕事に対してプロ意識を持ち、責任を持って行動してほしいと思います。

たとえ失敗しても周りがきちんとフォローするので、自分がやりたいと思ったことを突き詰め、変化を作り出す人が仲間になってくれればと思います。

私自身ソフトウェア部品産業を立ち上げ、変化を作ろうとしていて、社員にも普段から「変化こそ成長」と伝えています。

変化を恐れず、成長し続けようとする向上心がある人をお待ちしています。

編集後記

自社の売却の危機を回避し、長年温めてきたアイデアを製品化し販売までこぎ着け、会社を存続させた久保社長。技術研究にかける情熱と、どんな逆境に見舞われても諦めない強い思いが伝わってきた。自社で開発したアプリケーション開発運用プラットフォームを多くの企業へ広め、新たな産業の立ち上げを目指す株式会社ラキールのこれからに期待だ。

久保 努(くぼ・つとむ)/1964年生まれ。1988年株式会社エイ・エス・ティ入社。1999年株式会社イーシー・ワンで開発部門の責任者に就任。2005年6月レジェンド・アプリケーションズ(現ラキール)を設立。2011年株式会社ワークスアプリケーションズの傘下に入り、取締役に就任。2017年10月MBOにより独立。2019年に社名を株式会社ラキールに変更。現・代表取締役社長。