※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

京都・大阪・東京で展開されるセレクトショップ「ロフトマン」を訪ねれば、服好きのバイヤーたちが厳選した都会的なファッションアイテムに出会える。関西屈指の人気店として地位を確立するまでの流れや今後の展望について、代表取締役の木村真氏に話を伺った。

キャリアジャーニー「サラリーマンからアルバイトへ」

ーーアルバイト先として貴社を選ばれた理由についてお聞かせください。

木村真:
学生時代からファッションが好きでしたが、当時は「服屋になる」というとやんちゃなイメージがありました。ですから公務員である両親の意向もあり、大学卒業後はサラリーマンとして営業職に就きました。

しかし結局、服屋で働きたい思いが強くなり、8ヶ月で退職してしまいました。自分がやりたいことを形にしやすい規模の店が理想でしたので、学生時代の縁で弊社に入社した次第です。

ーー入社当時はどれぐらいの規模だったのでしょうか。

木村真:
アルバイトも含めると20名ほどでした。現在は約70名が在籍しています。

もともと社員としての採用でしたが、自身の希望でしばらくはアルバイトとして働きました。2002年に統括店長となり、4年後に常務、その後5年スパンで専務、社長へと就任しました。

「九死に一生」から得た人生の目標

ーーいつ頃から経営者になることを意識されていたのでしょうか。

木村真:
会社や労働の在り方について、一社員の時から上司に意見を伝えていて、「偉くならないと会社は変えられない」とは思っていました。

明確に上昇意識が芽生えたきっかけは、26歳の時に経験した大きな交通事故です。意識不明で搬送されて、1ヶ月半ほど入院しました。

交通課のベテラン刑事さんに「あんな事故で生きている人を初めて見た。ラッキーだと思って生きなさい」と言われ、悔いのない人生にしなければ、と感じました。「社長になりたい」というより、病室に来てくださるなど日頃から目をかけていただいている会長に恩返しできるまではロフトマンにいよう、と決意したのです。

やりたいことを形に――現在までを振り返る

ーー木村社長が主導して実現されてきたことを教えてください。

木村真:
東京や大阪への進出、京都にある「パタゴニア」ブランドをメインにした店は全て僕のアイデアです。社会情勢や環境の変化によってアップダウンしない「強いロフトマン」を作りたかったので、マーケットと認知度を上げてスケールメリットを生かしていこうと提案しました。

アウトドア用品のパタゴニアについては、価格が高騰した並行輸入品や偽物商品が出回っている問題がありました。セレクトショップが正規でパタゴニアを扱うことは無理だと業界内で言われていましたが、手紙やプレゼンボードを用意して、鎌倉にあるパタゴニア日本支社に3回ほど通ったのです。

「僕らは商品を売るだけでなく、ブランドが持つ哲学を伝えられる」と考えていました。ファッション目的だった人が山へ登ってみたいと考えるような、「逆の発想のお店づくりをしたい」ともお伝えしたところ熱意が伝わり、お取引をしていただくことができました。

オリジナルは不要――「売り手のプロ」が考える本来のビジネス

ーー別注アイテムの豊富さも特徴的です。オリジナル製品やブランドの立ち上げはお考えでないのでしょうか。

木村真:
ブランドさんのご協力を得て、弊社専用カラーアイテムなどの別注品を作っていただいています。
ブランドが持つ考えや得意な部分を損なわずに、ロフトマンの良さを加えるやり方です。

僕たちは「売り手のプロ」であり、「作り手のプロ」が作ったものを売るのが本来のビジネスの流れだと思っています。その一方で、「こんな製品もあればいいな」といった声をプロダクトに反映できるのも「売り手のプロ」としての面白さです。

ビジネス展開としては、他業種とのコラボレーションを考えています。日本製品が持つ機能性はそのままに、デザイン性を高めたロフトマン企画の電化製品などを作れたらいいですね。

「ロフトマン」の強みを生かした今後の展望

ーー貴社の強みをお聞かせください。

木村真:
強みは「接客力」と「人間力」です。「人材の材は財産の財」として、人材を強引に分散させるような多店舗展開はしていません。

売上アップのためではなく、スタッフの成長やモチベーションを上げるために新店舗をつくるというのが弊社の考え方です。

僕は「街の洋服屋気質」と称しているのですが、商品を仕入れた人間が現場に立つことで、商品への思い入れを直接お客様に伝えられる点も強みでしょうか。

服好きな人たちのコミュニケーションの場として、札幌や福岡も含めた都市型店舗を置き、全国的に知られる店にまで成長させたいです。

独自の採用スタイルとスタッフ育成方法

ーー採用活動はどのようにされているのでしょうか。

木村真:
求人広告はミスマッチが生まれやすいため、「服やロフトマンが好きだから働きたい」という方にインスタのDMや公式HPから応募していただくことが多いです。

ーー社員の育成方法についてもお伺いできればと思います。

木村真:
弊社では、社員採用においても1〜2年間ほどアルバイトを経験してもらいます。現場が楽しくないと仕事は続かないので、心身共に働きやすい環境づくりも心がけています。

また、社員全員に細かい経営状況を見せつつ、店長には「自分が社長になったつもりで店を運営しなさい」と指導しています。

大きな組織ではないからこそ、「バイヤーになりたい」「将来は独立したい」といった人がいればバックアップできる会社でありたいです。

編集後記

ファッション界隈において、関西屈指の老舗セレクトショップとして知られる「ロフトマン」。木村氏はスタッフのキャリア形成をバックアップすることについて、「『夢への支援』と言うとかっこいいのですが……」と照れ臭そうに語った。「服が好き」という情熱を持ち続けるピュアな人のもとには、同じ世界を愛する志高き人材が絶え間なく集まるのだろう。

木村真(きむら・まこと)/1971年京都府生まれ。京都精華大学卒業後、1996年にロフトマンにアルバイトとして入社。統括店長を経て、2006年に常務取締役、2010年に専務取締役、2015年に取締役社長、2022年に代表取締役へ就任。「生涯一バイヤー」をモットーに今現在も仕入れからPR、会社運営まで幅広い業務をこなしている。