※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

株式会社ボーダレス(2005年創業、大阪市西区)は、国内外に関連企業を持つと同時に、EC事業、海外顧客向けのBtoCサイト開発、多言語ホームページの開発など、インターネットに関する多彩な事業を手がけている。

インバウンド観光需要の取り込みが好調の中、常に新規事業の種を模索し、新たな機軸を生み出し、そのトレンドに乗せる企画力が特徴的だ。

国境を超えて事業を担う創業者で代表取締役社長の表泰之氏に、経営方針とともに業績を好調に導くための秘訣を詳しく話を聞いた。

IT先進国、韓国への留学が大きな契機となる

ーー起業するまでのご経験や経緯をお聞かせください。

表泰之:
祖父の代から一家は建築会社を営んでいて、事業を継ぐ可能性はありました。しかし私はそちらの業界にはあまり向いていないと感じ、弟が入ったこともあり家業には進みませんでした。

早い段階から海外への興味が強かったため、韓国に留学しました。当時は韓国でITが盛り上がり始めた頃で、そうした影響もあってネットオークションで韓流の商材を販売すると、予想以上に反響を得られたものです。

現地の大学院を出てから、日本の商社で国内の電子部品素材を韓国の大手メーカーに納める仕事をしていました。

ただ、もとから独立したい気持ちが強かったことや、ECの成功体験が後押しして、国境を超えたビジネスを起業しようと決心し、会社を立ち上げることにしたのです。かつて大学で学んだ建築工学によって得たデザインの知見は、直接的ではないものの今の事業に生かせていると思います。

日の目を見なかった技術をネット上で世に広める

ーー海外で人気を博すドール(人形)ブランドの通販事業が好調と聞きましたが、詳しくうかがえますか。

表泰之:
手づくりの人形を通信販売する「ドルク」事業は想定より思いのほか伸びて、今では売り上げの半分以上を占めるまで成長しました。

私は「技術屋の宝庫」である東大阪で育ちましたので、世界に出る素晴らしい技術を持っていながら、いまひとつ生かし切れない現状をよく知っています。
そこにデザインやブランディング力を注ぎ、ブラッシュアップして世に出していきたいと常々考えていました。

世界のドール作家さんが素晴らしい作品をつくった作品に光を当てたいという思いでグローバルに発信・販売し、彼らの糧になればと思い立ち上げたのがドルクなのです。

差別化のためにあえて参入障壁の高いものに挑戦する

ーー海外を含めた社内の管理体制についてお聞かせください。

表泰之:
各国に設立した各会社の代表7名が、取締役的な立場として任に就いています。規模が大きいところは経理もいますし、全体統括もいます。国内外を含めて全体で毎年、年次集会を行うのが恒例です。

取締役もほとんど置かず、役職の役割も厳格には決めていません。
その分自由度は高く、「このビジネスはあなたに任せるのでここからここまでやってください」という仕切りの中で運営しています。その代わり、各国内での責任は担ってもらいます。

そうしていけるのも、世界中の地域貢献に参加できるロータリークラブに所属して活動していたり、米国や韓国での留学経験を通じたコネクションが多いからです。
あとはビジネスモデルがしっかりしていれば、大企業のような組織図やスーパーマンがいる必要はないと考えます。

ーー新規や販路開拓についての経営方針を教えてください。

表泰之:
現在十数億円の年商規模を100億円にする大まかな目標はありますが、ノルマを決めて数字を追いかけることはしていません。

基本はネット上でアプローチしていく手法をとりますから、ほとんどが反響営業で、専業の営業マンは置かない方針です。

私は他社にとって参入が難しいとされる高い障壁を持つものに取り組むことを好み、それを実現するためにはプラットフォームの構築が必要不可欠だと考えています。

実際に人形通販のプラットフォームは世界トップクラスになったと思いますし、関西でのインバウンドの取り込みにかなりのシェアがあるのも顕著な例でしょう。

プランが固まれば、人件費を含めてリソースをあまりかけずに単価を安くすることによって、おのずと仕事が流れてくる下地ができます。

その代わりビジネスモデルの構築にはしっかりと取り組み、「失望させるような結果にはならない」ように最大限努力をすることは当然です。

編集後記

表社長は若い方へのアドバイスとして、「世界中の人の考え方を知るために、たとえ旅行であっても海外に出たほうがいい」とコメントしている。

狭い国内社会だけでなく広い世界を見ることの重要性を語った同氏は、多くの経営者と違い「競争は好きではない」と至ってマイペース。しかし、社会課題を解決するビジネスを探し求める嗅覚は、どこまでも鋭い。

表泰之(おもて・ひろゆき)/1972年大阪府生まれ。Yonsei University 工学部大学院卒。電子部材商社を経て2005年にボーダレス本社を創業。2007年、株式会社ボーダレスを設立。国内外に7社を起業した。