※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

生地の材質やデザインを活かし、自分好みの洋服や雑貨を作れるハンドメイド。

株式会社ラブロは、芦屋市に本社を持つ布販売の会社。国内でシンプルで上質な布を作ることにこだわり、CHECK&STRIPEという屋号でオンラインショップや自社の店舗でオリジナルの布の販売を行っている。

同社のオンラインショップでは、好きなデザインや生地を選び、サイズに合わせて洋服を仕立ててくれる「パーソナルオーダー」サービスも展開している。

創業者である在田佳代子氏は、専業主婦のときに周囲の勧めで布のガレージセールを始めたことをきっかけに、パソコンに触れたこともないところからスタートし、自力でホームページを開設したという。

裁縫が好きな方はもちろん、裁縫が苦手な方にもハンドメイドの楽しさ、生地を選ぶときのワクワク感を感じてもらいたいと語る、在田社長の思いについて聞いた。

ガレージセールをきっかけに専業主婦からネット通販事業を開始

ーー在田社長が布の販売を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

在田佳代子:
大学を卒業してすぐに主人と結婚したので、専業主婦として家事や育児をしていました。

兵庫県西脇市にある主人の実家は一族で「産元商社」(繊維の産地にある繊維専門の商社)を営んでいました。

子どもたちが幼稚園へ通い始めたときに、義父が、「お友達に配ってあげなさい」と倉庫に余っていたチェックやストライプ柄の布を持たせてくれました。

そこで幼稚園でママたちに配ってみると、「こんなもの作ったよ」と、喜んでくださったり、「いただいた布で娘さんにワンピースを作ってあげたよ」と、洋服をいただいたり・・
あの生地がこんな風に生まれ変わるんだと驚き、感動しました。

そのうちに「ガレージセールを開いては?」という友人たちからの提案で、家のガレージで布の販売を始めました。

ーーそれからオンラインショップを開設し、ネット通販を始められるまでの経緯についてお聞かせいただけますか。

在田佳代子:
週に1回ガレージセールをするようになってから、そのことが手芸好きの方に、口コミで広がっていったようで、あちこちからの問い合わせが増え、生地を直接届けたり、大学時代の友人などは社宅で注文をまとめてくれFAXでやり取りをして配送したりしていました。

こうして生地の販売を始めてから7年ほど経った頃に、遠方から来られたお客様から「ホームページで販売してほしい」という意見をいただいたのですが、当時の私はそもそもホームページというのが何なのか、パソコンって何なのか、も分かっていませんでした。

それから自己流でパソコンと格闘し、いろんなウェブサイトを見ているうちに「私もこういうホームページが作りたい」と思うようになりました。

近所の友人に教えてもらいながら、1999年の9月15日にオンラインショップ「CHECK&STRIPE」を開設しました。

自社のオンラインショップのこだわり・実店舗の展開について

ーーオンラインショップを開設される際、特にこだわったポイントなどはございますか。

在田佳代子:
ネット通販の場合、ホームページに掲載している商品画像と実物とのギャップがあり、生地の質感や色味がわかりづらいのではないか?と心配していました。

ところが、HPでは、いろんなことが表現できました。学生の頃からインテリアの雑誌を見るのが好きだったので、クッションで犬が寝ているところや、テーブルクロスの上にカフェオレボウルを置いているところ・・などのスタイリングが自然にできました。

その布で作った洋服を掲載したり、購入した生地を使って服や雑貨を作ったときのイメージが湧きやすいように工夫することがとても楽しくて、どんどん、のめり込んで行きました。そして、その頃から、コットンやリネン素材のオリジナルの布を国内で作り始めました。オリジナルの布はだんだん増えていき、今では販売している布のほとんどがCHECK&STRIPEのオリジナルです。

ーーネット通販を始められた後に実店舗も出店されていますが、オンラインショップだけでなく、お店を出された理由は何だったのでしょうか。

在田佳代子:
オンラインでは表現できない手触りや、スタッフとの会話などを楽しんでいただけるように・・と思いました。

ディズニーの絵本を見て育った子供が、ディズニーランドに行って、夢の世界を体験できるように、CHECK&STRIPEのホームページを見た人が、実際の店舗に行ってホームページ以上に楽しんでいただけるといいな・・と思ったのです。

コロナ禍の影響や自社の生地を使ったパーソナルオーダーについて

ーー新型コロナウイルスの蔓延による外出規制が行われ、家の中で過ごす時間が増えたことで一時期手芸がブームになりましたね。貴社の売り上げにも影響はありましたか。

在田佳代子:
感染が拡大し始めた当初はマスクが不足していて、マスクを作る生地を求める方が多くいらっしゃり、布がこのような形で、役に立つということに複雑な気持ちになりましたが、少しでもお役に立てるように、スタッフがA班、B班に分かれて、発送作業をしました。
社内で感染者が出てしまっては発送が止まってしまい、お客さまに貢献できないと思い、臨時で作業場も増やして発送しました。
実店舗の方は営業ができず困っていたのですが、スタッフが「電話でお客様の注文を受け付ける電話通販をやりましょう」と提案してくれました。

生地のひとつひとつに名前を付けておいたことが、この時とても役立ちました。

お客様からお問い合わせいただいたときに「”海のストライプ”ありますか?」「”やさしいリネン”はありますか?」と伝えていただいたので、私たちもすぐに対応できました。何よりもコロナ禍の不安な毎日の中で、お客さまの声を聞いて、自分たちも励まされました。

ーー貴社ではオンラインでお客様が選んだデザインや生地、希望サイズをもとに、ブラウスやワンピース、スカート、小物などを仕立てるパーソナルオーダーも展開されていますね。

在田佳代子:
ある時、スタッフが「CHECK&STRIPEには洋服だけでも300~400くらいのパターンがあるので、生地との組み合わせは何万通りにもなりますよ」「お客様の希望に合わせて洋服を仕立てるサービスを始めてみたらどうですか」と提案してくれました。

スタッフの意見を聞いて、裁縫が苦手なお客様にもオーダーメイドで手作り品を手にできる楽しさを感じてもらいたいと思い、実店舗で洋服の仕立てをするサービスを開始しました。価格の安い生地を選べば2万円代で手作りのワンピースを作れるので、お客様からもとても喜んでいただきました。

これをオンラインでもできればいいなと思っていたところ、兵庫県の支援があり、オリジナルの洋服や小物のオーダーができるサービス(※1)を開始することができました。
(※1)THE HANDWORKS by CHECK&STRIPE公式HP

おかげさまで、今ではたくさんのお客さまにご注文をいただけるようになりました。

新たな戦力とラブロの強み、読者へのメッセージ

ーー在田社長がアパレルメーカーへ営業に行くことなどはあるのですか。

在田佳代子:
積極的に営業をかけるというよりは、私がいちファンとして好きなアパレルの担当者の方と会話しているうちに、自然な流れで「一緒に生地を作りましょう」と話が進むことが多いですね。

営業に関しては長男と長女が頑張ってくれていて、たとえば弊社のInstagramにオリジナルエコバッグの作成に関する投稿をして注文を集めるなど、時代に合った営業活動を進めてくれています。

長男はもともと営業職だったので、これからは会社としても営業に力を入れていきたいですし、銀行員だった長女は細かいところにとても気が付くので、これまで支えてくれていたお客さまやスタッフを大切にしながら、新しい方向へも、進んでいってほしいです。今後はアパレルなどにCHECK&STRIPEの布を使っていただけるといいな・・と思っています。

ーー在田社長が考えるラブロの強みについてお聞かせください。

在田佳代子:
弊社は素晴らしいスタッフがそろっているなと実感しています。事務所で働くスタッフや発送担当のスタッフ、縫製スタッフ、店舗のスタッフなど、本当に素敵な人たちが集まっています。ひとりひとりのスタッフに出会ったことが奇跡のように思えます。

生地が好きで、もの作りがしたいという人たち・・・思いやりがあり、魅力的な人ばかりです。

ーー最後にこの記事を読まれている10代・20代の方に向けてメッセージをお願いします。

在田佳代子:
きちんと挨拶をする、手伝ってもらったらお礼を言う、約束を守るといった基本的な人間力を今のうちに身に付けておくといいと思います。

この年になり、ふと周囲を見ると、私の周りは幸せな人が多いことに気がつきました。彼女たちは誰に対してもあいさつを欠かさず、素直な心の持ち主です。このように人としての基本が備わっている人は、幸せになる要素を持っているのではないかなと思っています。

また、私も寝る間を惜しんで仕事をしていた時期もありましたが、夢中でやったことが今につながっています。常にアンテナを張って自分が興味の持てそうなものを見つけ、好きなことに没頭することを楽しむことができるといいですね。

編集後記

大学卒業後は家庭に入ったため、企業での勤務経験がないと話す在田社長。義父から譲り受けた生地をガレージセールで売り始めたことがきっかけとなり、イチからパソコンの勉強を始め、オンラインショップを開設したという。洋服や雑貨を手作りされる方だけでなく、裁縫が苦手な方も楽しめるようパーソナルオーダーサービスを行うラブロは、これからも多くの方に愛されることだろう。

在田佳代子(ありた・かよこ)/1960年兵庫県生まれ。神戸海星女子学院大学仏文科卒。1992年に専業主婦からガレージセールで布販売を始めたことをきっかけに、1999年に布の通販のオンラインショップCHECK&STRIPE(※2)を開設。神戸、芦屋、自由が丘、吉祥寺、鎌倉、福岡薬院に直営店をオープン。オンラインや直営店で服の仕立てをする「THE HANDWORKS」を行っている。
(※2)CHECK&STRIPE公式HP