スマートフォンが突然壊れてしまい、なんとか即日修理できないかと修理店に持ち込んだ経験はないだろうか。スマートフォンの修理を営む株式会社ブループリントの代表取締役である中村友昭氏は、そこに商機を見いだし、わずか10年で直営店10店舗、フランチャイズ加盟店150店舗を達成した。
つねにニーズがある分野とはいえ、なぜ短期間でここまで拡大できたのか。中村社長にその秘訣を聞いた。
アルバイト先で見つけた商機を捉え、起業につなげる
ーー中村社長が独立するまでの経緯をお聞かせください。
中村友昭:
私はもともと大手物流会社で働いていました。しかし、大手企業ならではの年功序列の風土が合わず、「もっとチャレンジングな環境に身を置きたい」と考えていました。
そんなとき、起業を考えている友人から一緒に働かないかと誘いを受けます。チャレンジを求めていた私は誘いを受けたのですが、その事業は思うように成長せず、生活費のために携帯電話販売の店舗でアルバイトも掛け持ちしていました。そこで働く中で、スマートフォン修理のニーズが高いことに気が付きました。
スマートフォンの修理を単独で事業化できるのではないかと考えた私は独立を決意し、2014年に弊社を創立。その後、直営店とフランチャイズ事業という2つの業態で事業を拡大し、今に至ります。
ーー事業を立ち上げてから特に苦労したことは何ですか?
中村友昭:
潜在顧客の把握やカスタマージャーニー(顧客が商品を認知し、購入に至るまでの道筋)に最適化したマーケティング手法の構築に苦労しました。
スマートフォンを購入する方は直接店舗を訪れるケースが多いのに対して、修理を依頼する方は事前に店舗を検索してから訪れるケースが多いのです。つまり、Webマーケティングの重要性が高い分野といえます。
私はこの点を攻略するために、検索から店舗へお客様を誘導するためのカスタマージャーニーを特に重視してサイトを構築しました。今でも大半のお客様がWebサイトの情報を見て来客されます。
スマートフォンの修理、買取り、アクセサリー販売の3本柱で事業拡大を進める
ーー貴社の事業内容を教えてください。
中村友昭:
スマートフォンおよびタブレットの修理や買取り、スマートフォンに使うアクセサリー類の販売の3つが主な事業です。これらの事業をバランスよく成長させることで、弊社を支える3本の柱として機能させています。
店舗数については、これら3事業を行う直営店が東京と神奈川県に合計10店舗あり、買取り事業は「買取のクイック」という名前でフランチャイズ提供も行っており、加盟店は150店舗を超えています。
修理と買取り、アクセサリー類の販売事業を個別パッケージとして展開できるので、すでにスマートフォンの修理だけを行っている店舗やリサイクルショップ、貴金属買取店などに、弊社の事業をプラスアルファとして提供する形で数を伸ばしています。
スマートフォンの修理はお客様の悩みを解決する「手段」である
ーー貴社独自の強みは何ですか?
中村友昭:
先ほど述べた3本の事業の柱があることです。これにより、1つの事業のニーズが落ちた場合でも、状況に応じたリスクとリソースの分散が可能です。
また、社員の接客態度の良さは事業の核を担う強みです。スマートフォンの修理とは、本質的にはお客様の悩みを解決することに他なりません。そのため、丁寧なコミュニケーションによるお客様との悩みの共有が必要になってきます。逆に、いかに優れた技術があっても、解決すべき悩みを理解できなければ意味がないのです。
ほかにもフランチャイズを低コスト・低リスクで導入できる点も強みです。余剰リソースの活用にも便利なので既存店舗に導入しやすく、店舗数のスピーディーな拡大に役立っています。
ーーどのようなときにお客様から感謝されることが多いですか?
中村友昭:
特に感謝の声をよくいただくのは、画面の割れやディスプレイのバックライトの不具合、バッテリーの交換といった、メーカー対応だと数週間かかる作業を即日対応できたときです。
メーカー修理ではほぼ必須となる、データのバックアップをせずに修理できる場合もあるので、少ない手間で便利だとお喜びいただくことも多いですね。
また、写真や書類などのデータ復元で喜んでいただくことも多々あります。過去にはお子様や新婚旅行の写真データなどを復元したこともありました。大切な写真データはお客様の宝物ですので、私たちもお客様に笑顔になってもらいたい一心で誠意を持って取り組んでいます。
社員とともに成長し続けるための経営を続けたい
ーー今後、貴社をどのように成長させていきたいですか?
中村友昭:
10年後までに、フランチャイズを含めた店舗数を現在の3倍に増やしたいと考えています。この数字は会社を継続させるため、そして社員の将来的なポジションの創出に必要な規模だと考えています。
また、現場経験を積んだ社員がしっかりキャリアアップできる環境も整備したいところです。良い店長や良いマネージャーは現場を熟知してこそ生まれてくるものです。アルバイトから始めた方が店舗や会社とともに成長していけるような組織にしたいですね。
編集後記
中村社長はニーズの発見と継続、そして発展という3つのフェーズをわずか10年で形にしてきた。その成長速度は、まるでスマートフォンの進化のようなスピード感だ。次の10年で同社がどこまで成長するのか、中村社長の次の一手に注目が集まる。