※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

製造素材の生産会社は数多く存在するが、北光金属株式会社は自社工場に機械を集約し、ほとんど全ての形状や配合に加工できる、国内でも稀有な会社だ。

また、製品生産を一気通貫で担当している強みを生かし、他社との差別化を図っている。

今回は代表取締役社長の斎藤宏通氏と取締役の斎藤英之氏に、事業の強みや今後の展望などについてうかがった。

創業55年を迎える企業の社長に就任するまで

ーー貴社への入社と社長就任のきっかけを教えてください。

斎藤宏通:
私が入社したのは、弊社が創業8年目となる1976年の時でした。

高校から大学への進路を考えたとき、もともと理系科目は得意ではありませんでしたが、将来は父の会社に勤めることを宿命と考えていたこともあり、金属系の会社の役に立つ分野である金属工学を学ぶことに決めました。そして、1972年に東北大学の工学部へ入学し、1976年に卒業後、弊社に入社する流れとなったのです。

それからしばらく働いて、1999年のある日、私の机の上に来期から私に社長を任せるという父のメモが置かれていました。その年の株主総会で役員交代が正式に決まり、社長に就任することになりました。

一気通貫での製品生産でお客様のニーズに応える

ーー貴社の事業内容について教えてください。

斎藤宏通:
弊社では、「電気接点用貴金属」「ロウ付け素材」「貴金属特殊加工品」の3つの製造を行っております。

用途のイメージがしにくいかもしれませんが、皆様の身近なところでも使われています。たとえば、電気接点用貴金属は部屋の電気のオンオフのスイッチや、エレベーターの階数を押すスイッチなど、電気回路の中であればさまざまな場面で使用されることが多いものです。

また、ロウ付け素材は眼鏡の蝶番に、貴金属特殊加工品は楽器屋にあるフルートにも使われております。

ーー貴社の事業の強みは何ですか?

斎藤宏通:
金属の原料である塊をつくるところから、最終的な製品の完成まで全て一貫して弊社で担当しております。

素材を買ってきてプレス加工、機械加工をするといったことではなく、最初の素材をつくるところから弊社で行っているので、お客様からの要望に対して柔軟に対応できることを強みとして評価いただいております。

ーー最先端技術である「AI画像検査システム」を導入された背景を教えてください。

斎藤宏通:
目的は2つございます。

1つ目は、業務の省力化です。限られた人数で作業を行わなければならないため、生産効率向上のために導入を決めました。

そして、2つ目がより強い目的なのですが、加工の成果をデータとして取りたいと思ったためです。私たちが管理している作業条件の他に、管理しきれていない要素(例えば温度や湿度、材料の投入方法等)が多くありまして、実際それが結果のばらつきとして表れています。

ビッグデータをもとに客観的に、管理しきれていない要素がどのようなものかも含めて確認できるのが理想的ですが、作業条件とその他の要素の相関が把握できておらず、主観的に分析してしまっている状態です。

現在、弊社が管理している作業条件のインプットとアウトプットの間の相関性を確認できるようにするためには、結果の部分が正しくデータ化されなければならないため、AIシステムの導入を決めました。

考える力と何事にも挑戦する姿勢を持つ人と一緒に働きたい

ーー今後の採用活動について教えてください。

斎藤英之:
採用に関しては、今後は二極化させる必要があると思っています。

1つ目は皆同じ条件で一斉採用するというスタイルです。これは今まで続けてきた採用方法です。

そして、2つ目は必要な機能の技術や設備の知見などを持った方には、よりいい条件を出すというスタイルです。

人手不足が嘆かれている現在ですが、弊社の工場がある地方ではより深刻ですね。若い人たちは確実に減っていきますし、現に採用に対する応募数も年々減少している状態です。

その中で採用活動を行うとなると、ポテンシャル採用と併せて、それぞれの能力レベルに見合った条件を提示し、優秀な人材も確保できる採用手法を選択する必要があると考えています。

ーーこのような方に入社してほしいという、貴社が求める人物像を教えてください。

斎藤英之:
日常的に「なぜ」と考える力を持っている人に入社してほしいと思っています。

たとえば、誰かとコミュニケーションが上手くいかなかったときに、その理由を考え、解決するためにはどうすればいいのかも考えた上で行動できるような人だと嬉しいですね。この考える力というのは、優秀であるために最も大切な原動力の一つだと感じています。

斎藤英之:
何事にも挑戦していく姿勢を持っている人に入社してほしいと思います。

いろいろなことに取り組めば、その分が自分に返ってきますし、逆もしかりです。成功の反対は、失敗ではなく何もしないことだと考えています。

いろいろなことに取り組むことが、自分を育ててくれる、ひいては自分が成長することだという気持ちを持って取り組める人と一緒に働きたいと思ってます。

攻めの技術営業に転じてさらなる顧客獲得へ

ーー貴社の今後の展望について教えてください。

斎藤宏通:
お客様のニーズに合わせた営業に力を入れたいと思っています。

弊社の製品は全て受注生産品であるため、標準的な商品一覧表などをつくってお客様に購入していただくことはございません。

お客様一人ひとりの設計に基づいた開発に対応していくことが基本なので、お客様のニーズに合わせて弊社の価値を丁寧に説明し、アプローチしていくことが重要だと考えています。

斎藤宏通:
これまでの事業は順調で、他社との競争も少なく、受動的な営業でも成果をあげることができていました。しかし、今後は他社との競争も生じてくると考え、弊社側からもっとアプローチを増やしていきたいと思っています。

編集後記

写真左:取締役 斎藤英之 写真右:代表取締役社長 斎藤宏通

斎藤宏通(さいとう・ひろみち)/1953年、東京都出身。1976年、東北大学金属加工学科を卒業し、父が創業した株式会社北光金属へ入社。入社後は父が苦手としていた分野を担う(設備の自動制御技術、販売管理システム導入)。1999年より代表取締役に就任。2001年より第2期創業テーマの取り組み(5S活動・人事制度構築・品質保証体制構築)を開始。技術営業活動に尽力し、現在売上比率トップの顧客を開拓。