※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

WEB上のオープンデータを収集する特許技術を持つIT企業、株式会社XAION DATA(ザイオンデータ)。

代表取締役CEOの佐藤泰秀氏は仙台高等専門学校卒業後、日立製作所で公共部門のエンジニアを経験。大手企業に身を置く中、社会に価値を提供できている実感が持てず悶々とした日々を過ごしたという。

その後、飛び込んだのはアメリカ・シリコンバレーにあるAIスタートアップ会社。アメリカ生活の中で、市場へ価値を与えるために起業する人々を目の当たりにし、自身の起業を決意したと語る。

そんな同氏が今、日本市場に提供したい価値とは何か。現在の事業と今後の展望について話をうかがった。

メイン事業は特許技術を駆使した採用支援サービス

ーー貴社の事業について教えてください。

佐藤泰秀:
2020年1月に、今の会社を設立しました。弊社はWEB上のオープンデータやパブリックデータと呼ばれる公開情報を収集し、それを使いやすいデータに変換させる特許技術を持っており、そのデータを活用してサービスを提供しています。

例えば具体的には、SNSなどの膨大なオープンデータから候補者を検索できる「AUTOHUNT」という人材採用プラットフォームをつくり、企業の採用支援を行っています。

ーーシステムの仕組みを簡単に教えてください。

佐藤泰秀:
WEBページひとつ取っても、機械からすれば「これが会社名なのか」「売上の数字なのか」「人の名前なのか」という判断は通常できません。そのため、まずはWEB上の構造をAIで読み取り、「どこにどういった情報があるのか」ということを機械に学習させ、構造を理解させる必要があります。弊社では、それを可能にする技術を開発し、個人のスキルを350万人以上プールしています。

ーー市場に出てこないような情報を見られるという点が評価されているのでしょうか?

佐藤泰秀:
いろいろな情報を集めることで、スキルでユーザーを検索したり、「どういった企業に属しているのか」という企業属性で検索したりすることが可能な点でしょう。さまざまな属性情報データを付与することで、最適な人材を検索し、マッチングに活用できることがこのサービスの強みです。

日本の人材マーケットは世界に後れを取っていると感じた

ーー現在の事業構想に至ったきっかけについて教えてください。

佐藤泰秀:
シリコンバレーから日本に戻ってきて一番感じたことは、日本人の自己肯定感の低さです。

アメリカには、「自分はこういった人間だ」と強く発信する文化があります。私はもともとフィンランドに留学していましたが、フィンランドでは特に個性や個人の価値を大事にする文化があり、採用領域でもその文化に根付いたマーケットが出来上がっています。

概して日本には新卒至上主義、かつ一社終身雇用の概念がいまだに根強く残っています。これは、一定の安定性を求める傾向につながることもあり、結果として多くの人が転職を検討しにくくなる環境を生み出しています。

しかし、そのような環境では自分のキャリア価値を定期的に見直す機会が減り、自分の強みや価値を見失いやすくなる傾向があります。また、新卒至上主義の影響で、個性や強みよりも広範なスキルセットを持つマルチな人材が評価される空気があり、「個人の強みや価値を評価して認め合う文化から離れている」と感じました。

「本質的な価値あるマッチングをオープンな市場でつくり上げることで、その人の価値の最大化ができるのではないか」と思い、今のようなビジネスモデルを考えました。もちろん、もともとアメリカで同じような市場の変遷を見ていたので、事業としての勝ち筋を見出していました。

大手企業と渡り合えるビジネスモデルがある

ーー今後のビジョンについて教えてください。

佐藤泰秀:
私たちのビジネスモデルは大手企業と戦えるビジネスモデルだと感じています。

第2のリクルートを目指すという意味で、ビジネスとしての面白さがあります。また、HR領域だけでなく、データ基盤を活用していろいろな事業領域にアプローチできるマーケットの広さは魅力的だと思います。非常に大きいところを狙えることが私たちのビジネスモデルの強みです。

ーー新規開拓の計画はありますか?

佐藤泰秀:
企業の採用支援として、「AUTOHUNT」をいろいろな企業に導入してもらうことに注力しています。人材の採用はどこの企業でも課題として存在するため、これまで主流だった登録型の媒体ではなく、媒体にそもそも登録していない人たちにプッシュ型でアプローチをしていく採用を進めています。現在の採用課題を解決するソリューションとして、私たちのサービスは非常に価値のあるものだと思っています。

ーー直近のトピックはありますか?

佐藤泰秀:
2024年4月25日にシリーズA資金調達の実施し、現在までのデッドファイナンスを含めた累計調達額は4.5億円となりました。

また同日に、「AUTOHUNT」の技術を活用して、新たにAIセールスプラットフォーム「AUTOBOOST」の提供を開始しました。これにより、ウェブ上のオープンなSNSやメディアに掲載された人材および企業の情報を収集して、膨大な情報の中から横断的に企業・キーパーソンの検索が可能となりました。今後、採用目的以外にも活用いただける企業を増やしていきたいと考えています。
※PRTIMES参照

人材で重視することは、変化への受容性

ーー求める人物像はありますか。

佐藤泰秀:
現在、大きく2つのチームがあります。対大手企業向けのエンプラチームと、対SMB(中堅・中小企業向け)のプロダクトを拡販していくチームです。

大手企業に対しては、ただプロダクトを売るだけではなく、そのプロダクトを通じてソリューションビジネスや、お客様を起点とした横展開のビジネスを行っていることもあり、そういったソリューションビジネスのスキル保持者や法人営業の経験者がマッチすると考えています。

SMB側だと、いわゆるSaaS事業としてどんどんプロダクトを拡販していくことがポイントなので、SaaS領域における経験を持っている方や人材領域に関して知見がある方はマッチすると思います。

もうひとつ大きいところは、私たちがスタートアップ企業ということもあり、変化に柔軟に対応できることですね。その点も非常に重要だと思っています。

私たちは「アンラーニング(学習棄却)能力」という言葉を使っていますが、今までの経験に固執せず、「今どのような点が自分の課題としてあるのか」「自分と向き合って成長できるかどうか」「他者をリスペクトして自分にどうインプットしていくのか」、といったことを考察し変化を受容できる人材が重要だと思っています。

編集後記

スタートアップ企業でありながらもグローバルな視点を取り入れ、大手企業と戦えるビジネスモデルを持つXAION DATA社。

同社は、その事業領域をプロダクト開発にとどめず、ソリューション事業を主に拡大していく方針だ。代表の佐藤泰秀氏が目指すビジョンは、日本の採用事情をグローバルレベルまで上げること。今後の飛躍が楽しみだ。

佐藤泰秀(さとう・やすひで)/1993年山形県出身、仙台高等専門学校卒。2014年日立製作所に入社し、公共システム部門において大規模基幹系システムのプロジェクトリーダーとして従事。その後、2018年アメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業に入社し、アメリカ市場における事業開発やファイナンス関連の業務に従事。その後日本で子会社設立および、日本支社CEOに就任。2020年1月、XAION DATAを共同創業し、現在は同社CEOを務める。