※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

「美道五原則」の企業理念のもと、真の美と豊かな生活を提案し続ける株式会社ヤマノホールディングス。約20年前に会社が経営難に陥った際、見事業績を回復させたのが現代表取締役社長の山野義友氏だ。

今回は山野氏から当時の状況や苦労を乗り越えた方法、今後の展望、大切にしている価値観などを聞いた。

さまざまな経験を経て家業を継ぐことに

ーー最初に銀行へ就職した理由を教えてください。

山野義友:
将来的に家業を継ぐことが決まっていたので、企業の見方や企業との付き合い方を学べる環境である銀行へ就職しました。経営者として一生付き合っていく銀行からの視点を経験できたことは、非常に自分のためになったと思います。

銀行に勤めていた私の先輩からも「家業を継ぐための勉強をするのであれば銀行が良い」と勧められていたので、修行の意味でも勉強の意味でも、銀行へ就職して良かったと思っています。

社長就任と同時に任された重要な任務とは

ーー貴社で社長に就任してから苦労したエピソードを教えてください。

山野義友:
会社が債務超過に陥り、立て直しのために社長に就任しました。

当時は、弊社の企業理念である美道五原則(髪・顔・装い・精神美・健康美を整えることで真の美しさを引き出すこと)に当てはまる企業に対し、M&Aを行っていましたが、事業拡大のためにカテゴリーを増やしたところ、ノウハウがない業界の企業までM&Aを行うことになり、経営指導ができなくなりました。

ちょうど会計基準が変更された時期が重なり、売上の計上が先延ばしになったことで会社の経営が大きく傾きました。

借金を返済して業績を回復させ、株主に配当を復活させるまで立て直すには非常に苦労しました。

ーーその苦労をどのように乗り越えたか教えてください。

山野義友:
M&Aを行った中で、弊社が経営のノウハウを持っている企業や収益を見込める企業だけを残す選択をし、事業を集中させました。また、高収益を出していた企業でも買い手がつけば迷わず売却し、有利子負債を減らすことを優先しました。

先代が残したものをブラッシュアップしていく

ーー貴社の強みを教えてください。

山野義友:
1つはM&Aのノウハウがしっかりとあることです。数々のM&Aを行ってきた経験から、各社の無駄な経費を見つけ、損益を下げて利益が出やすい仕組みに変えることができます。

もう1つは、M&Aを行った企業の管理部門の働きを正常化し、営業本部の人間が営業に特化できる形態をつくることです。営業の付帯業務である経理や総務などの仕事を弊社が代わりに行うことで、心理的な圧迫を軽減させ、業務に集中してもらうことができます。

ーー貴社の事業の展望を教えてください。

山野義友:
先代から行っている小売サービス業は、どんどんM&Aを行っていきたいと思っています。今後は特に、教育関連の領域も広げていきたいです。

会社が拡大すると取り扱う業種が増えるので、従業員のキャリア形成を作り替えることにも力を入れています。教育現場の人間が美容現場も担当し、着物分野の人間がアパレル現場も担当するなど、多様な業務分担を行えるようキャリア形成の仕組みを見直すつもりです。

完璧な経営者や幹部はいないと思うので、足りない部分を部下が補って、それぞれの持つ強みを活かした経営ができれば理想的です。

今の1番の目標は、過去最高の660億円を超える売上高を早期に達成することです。

会社を立て直した経験から学んだこととは

ーー大切にしているポリシーや価値観を教えてください。

山野義友:
小売サービス業である弊社は人がいてこその業種だと思っているので、人を大切にすることは常日頃から心がけています。営業を担う現場の人がものを売って成立する業界なので、現場にはなるべく足を運び、積極的にコミュニケーションをとっています。

また、「前に進まない限りは後退しているだけ」という考え方も大切にしています。なにか企画を遂行しても結果が出ず上手く前に進まない場合は、「間違ったことをしていると考えるように」と社員に指導しています。

行っていることが正しければ必ずなにか形として現れるので、変化がない場合は改善策を見つけるなどの工夫をして、少しでも前に進むことを重視しています。

ーー貴社の社風を教えてください。

山野義友:
やる気があれば誰でも挑戦できる、風通しの良い環境だと思います。実力主義なので、型にはまりたくない方向けの会社かもしれません。

トップの人間や直属の上司が日頃から現場に足を運んで話を聞き、モチベーションを高められるよう、いつでも現場の人間を大切にしているところが弊社の特徴だと思います。

編集後記

自身も現場に足を運び、常に実際に働く人のことを考えている山野社長。

経営不振に陥った経験があるからこそ、現場で働く人々のことを大切にする精神は忘れていない。

「美容以外にも事業領域を拡大していく」という展望が、私たちの生活にどのような恩恵をもたらしてくれるのだろうか。株式会社ヤマノホールディングスの今後の活躍に期待したい。

山野義友(やまの・よしとも)/1992年明治大学商学部卒業後、三井住友銀行(旧住友銀行)で勤務。1996年4月に当時グループ会社だった株式会社ヤマノリテーリングスに入社。2001年10月に同社の取締役副社長を経て、2002年6月に同社の代表取締役社長に就任。2009年、株式会社ヤマノホールディングスの取締役副社長 兼 営業本部長を経て、2010年、同社代表取締役社長に就任(現任)。