株式会社コンベンションリンケージは、国連・政府間会議や大型医学会、大型イベント、展示会、舞台芸術などの企画・運営を手がける総合コミュニケーションビジネス企業だ。G7・G20などの政府間会議から大型国際スポーツイベントまで、年間2000件以上の現場実績とノウハウを武器に、多くの成果と感動を届けている。
今回は平位博昭氏に代表に就任するまでの経緯や起業したときの苦労、事業の強み、今後の展望などについて話を聞いた。
国際会議・MICE運営会社の代表に就任するまで
ーー代表に就任するまでの経緯を教えてください。
平位博昭:
学生時代に国際会議の運営のアルバイトをしたのですが、そこで初めてPCO(Professional Congress Organizer/国際会議企画運営)という職種を知り、面白さを実感しました。
すでに別の業界の就職先が決まっていましたが、そちらを断り、当時大阪に1社だけあった同時通訳・国際会議運営会社に入社しました。
その後、バブル崩壊をきっかけに、私と同じ国際会議運営者や同時通訳などしていた仲間を集め、弊社を起業しました。
自分のやりたいことを実現するには起業するしかなかった
ーーバブル崩壊直後の起業はリスクも大きかったと思いますが、大変だったエピソードがあれば教えてください。
平位博昭:
資金繰りと協力企業のネットワークづくりです。弊社はプロデュース・マネジメントを行う企業ですので、Conductorのように協力会社(演奏者)が存在しなければ成果を出すことができません。しかし、その優秀な協力会社を見つけることはとても難しいことでした。又国際会議の準備運営は通常2〜4年掛けますので運転資金が必要です。
起業初期では銀行から多額の資金を借りることは難しいですし、バブル崩壊後は通訳業界のパイオニア企業を含め多くの会社が倒産し、協力会社を見つけることがより難しくなりました。
その逆境の中で、取引先との信頼関係の構築を進め、支払いを待ってくれた企業もありました。協力企業の中には、起業前から知り合いだった企業も5社ほど含まれていますが、その企業とは今でも取引を継続しています。
ーー厳しい状況の中でも起業を諦めなかったのはなぜですか?
平位博昭:
自分のやりたいことを実現させるためには起業するしかないと感じたからです。最初の会社では30代前半で役員に就任し、社内起業にも関わるなどいろいろな経験を積むことができ感謝しています。
その中で、日本では規制緩和が遅れていたため企画した新事業の展開が難しいことを経験し、通訳・翻訳事業より国際会議やVenue Managementに焦点を当てた事業展開にシフトチェンジしていく必要があることを実感していました。
何か新しいことに取り組まなければいけないと思いつつも、当時働いていた会社ではそれができないと感じ、それであれば「起業するしかない」と決意する流れになりました。
「指定管理者制度」の登場がターニングポイント
ーー事業展開の中で苦労した点について、具体的なエピソードを教えてください。
平位博昭:
現在コンベンションセンターや文化・芸術会館、多目的複合施設等の運営・コンサルティングも事業のひとつですが起業当時、日本では国や地方公共団体などが所有する公の施設について民間企業が経営する事は制度上できませんでした。
しかし、小泉政権の時に、公の施設管理を民間に代行させる「指定管理者制度」ができ、施設コンサルティングを行っていた弊社にもさまざまな案件の運営依頼が寄せられるようになりました。
当初は施設運営に携われない苦しみが大きかったのですが、「ようやく時代が追いついてきた」と感じると同時に、これが大きなターニングポイントになりました。
コミュニケーション活性化と地域及び国家のプレゼンス向上につなげるMICE事業
ーー貴社のMICE事業の特徴を教えてください。
平位博昭:
MICEとは、「Meeting(会議)」「Incentive Travel(報奨・研修旅行)」「Convention(政府主催会議・学術会議・業界会議)」「Exhibition/Event(展示会、見本市、イベント)」の頭文字をとった言葉で、リアルイベントの総称です。
弊社のMICEビジネスの特徴は、「E」に「Entertainment(娯楽)」と「Exposition(博覧会)」を含めていることです。イベントを通してコミュニケーションを活性化させ、多様な分野の存在価値を上げる事業を展開していきたいと思っています。
オンラインとオフラインのHybrid型でコミュニケーションの質を高めていきたい
ーー今後の展望を教えてください。
平位博昭:
リアルとバーチャルを融合したHybrid型のMICE運営を行っていきたいと思っています。
2000年にNetConventionの登録商標を取ったのですがコロナ禍を経て急速にHybrid化が進んでいます。特に国際会議で顕著です。日本から遠い国の参加希望者にとって経費や時間の都合で来日できないことは多々ありますがHybrid化する事によってその公平性が担保されることになります。会議のクオリティを高めることにもつながります。
曾てインターネットが使われ出したころミーティングビジネスや展示会は衰退するといった論調が世界でありましたがその後各種データはその逆でした。AI時代を迎えリアルMICEは益々その重要性が認識されることを確信しています。
編集後記
バブル崩壊という苦しい時期にあえて起業し、多くの会社が倒産する中でも諦めずに努力を続け、現在まで会社を成長させてきた平位代表。
今では多くの国際機関や企業から依頼があり、国内・海外で年間2000件以上のイベント運営の実績を積み重ねている。
今後はオンラインとオフラインのHybrid型で、さらなる事業発展を目指すという。新時代のイベントは新たな価値を創出する「場」となるだろう。
平位博昭(ひらい・ひろあき)/学生時代に国際会議の運営のアルバイトをしたのをきっかけにPCO(Professional Congress Organizer)という職種を知り、当時大阪に1社だけあった同時通訳・国際会議運営会社に入社。取締役コンベンション事業部長に就任。バブル崩壊後、業界最大手の会社が倒産する中、会議通訳者、翻訳者、国際会議プロデューサーの仲間とともに1996年、株式会社コンベンションリンケージを創立。