2025年4月13日から10月13日まで、大阪の夢洲(ゆめしま)で開催予定のEXPO2025大阪・関西万博。国内や海外からおよそ2,820万人もの来場者数が見込まれる。
このビッグイベントの開催を控え、会場や周辺警備の共同事業体の幹事会社として準備を進めているのが、大阪に本社を構える東洋テック株式会社だ。
同社は警備やビルメンテナンスを行う総合管理サービスを提供しており、1966年の創業以来、安定した経営を続けている。
安心で快適な社会の実現に貢献するため、社内教育や女性警備員の採用強化に注力する、代表取締役社長・池田博之氏の思いを聞いた。
万博の開催に対する思いと女性警備員の登用
ーー2025年には大阪・関西万博が控えています。このビックイベントの開催について、地元の警備会社としてどのようにとらえていますか。
池田博之:
万博の警備に携わることで、弊社が「安心で快適な社会の実現に貢献する」企業であると、多くの方に認知していただくチャンスだと意気込んでいます。
オリンピックと比べると、万博は少しインパクトが弱いと思われるかもしれません。ただ、東京オリンピックのようにオリンピックは都市(東京都)が招致する一方で、万博は日本(国)が招致するため、いわば国家プロジェクトなんです。
私は大阪に30年以上住んでいるのですが、国際観光都市である京都を除き、関西圏はコロナ禍もあって景気が停滞傾向にあります。
この慣れ親しんだ土地が孫の代までたくさんの人でにぎわい、海外の方からもいい街だと言っていただけるよう、万博を安全・安心に開催できるよう準備を進めて参ります。
ーー警備の仕事は、体格の良い男性や高齢者の方が多いイメージだったのですが、貴社では20代の女性の方も活躍されていますね。
池田博之:
そうですね。弊社では銀行の入口付近の警備やお客様のご案内など、女性社員にも警備業に従事してもらっています。
女性警備員ならではの良さもあって、徹夜明けで工場を出るときに「本日もお疲れ様でございました」と声をかけてもらえると嬉しいというお言葉をいただいています。
あるいは商業施設をパトロールする際に、女性更衣室や女性用トイレに立ち寄る場面では同性の警備員の方が安心感がありますよね。このように女性が警備に携わるメリットをアピールし、女性の採用活動を積極的に行っています。
社内教育の取り組みについて
ーー社内教育についてはどのような取り組みをされているのですか。
池田博之:
弊社では警備業法で定められている現任教育のほか、独自の教育プログラムを行う教育機関「TECアカデミー」を開校しています。
さらに、これとは別に階層別研修など年間50回以上行っています。中には自ら企画した次世代経営者育成研修や、講師を招いたマーケット勉強会を開催したりしているんですよ。
また一昨年からは、およそ1,900人のパート勤務のスタッフを対象とした研修を年間を通して行っています。パートスタッフも弊社の正社員と同じようにみています。そのため現場でトラブルを起こしたり、お客様にご迷惑をかけたりすることがないよう、社会人としてのマナー教育を行っております。
ーー社内教育を通してどのように従業員の方々を育てていきたいとお思いですか。
池田博之:
自分で考えて判断を下せる人を増やしたいと考えています。そのためには、さまざまなフィールドで経験を積むことが重要だと思っています。
なぜなら、私自身が銀行員時代にせっぱつまった状況で決断を迫られる場面が多く、そのおかげで自然と決断力が身に付いたからです。
たとえば、銀行の本部に配属されたばかりの頃に阪神大震災が起こり、身分証はないが、口座からお金を引き出したいという依頼が殺到しました。
着の身着のままで避難されたので、多くの方が通帳やキャッシュカードを持っておらず、現金が引き出せなくて困っていました。そこで、住所や連絡先を記入していただいたうえで出金手続きを行う決断をしました。
指示されたことを実行することも大切なのですが、自分の意思で物事を判断する力も必要だと思います。こうした積み重ねにより人に認められ頼りにされるようになれば、仕事をするうえでのモチベーションにもつながると考えています。
ーー会社を経営されるうえで大切にされていることはありますか。
池田博之:
経営者の中には、現場の仕事は従業員に任せるという方もいらっしゃると思います。しかし、私は自分の目で現場の様子を見たうえで判断をしないと、経営の方向性を間違うと思っているんですね。
現場に近い社長でありたいので、年に数回は自らヘルメットと防弾チョッキを着用して警備現場へ赴くようにしています。
今後の注力テーマ・読者の方々に向けたメッセージ
ーー貴社が今後、注力していきたいテーマについて教えてください。
池田博之:
多くの業界と同様に、弊社でも人手不足が課題となっています。そのため昨年の4月頃から部署を集約し、効率的な組織の運用に力を入れています。また、新入社員の採用を毎年行っており、女性警備員の採用にも注力しております。
ーー貴社で活躍できる人材になるために必要なことは何でしょうか。
池田博之:
どんなことでもいいので、自分が熱くなれるものに打ち込んでほしいですね。今になって思えば、仕事を通じてさまざまな経験をさせてもらったからこそ、今の自分があると感じています。
もちろん私個人の力でここまで来られたわけではなく、私の努力を認めてくれる上司がいたからこそだと思っています。こうしたチャンスは全員に平等にあるので、自分のところに巡ってきたときにつかみ取るため、日頃の努力を怠らないことが重要だと思いますね。
ーー最後にこの記事を読む方々に向けてメッセージをお願いします。
池田博之:
警備業務は、機械やAIに置き換えられるものもありますが、最後はやはり人が対応する仕事です。そのため、人の安全や安心を守る私たちの仕事は、今後もなくなることはないと考えています。
国内では人口の減少に伴い、依頼数の減少が見込まれますが、アジア圏内では人口が増加傾向にあり、これから需要は増加してくると考えています。現在は国内の活動に留まっていますが、将来的には海外にも進出して、「安心・安全」を提供したいと思っています。
お客様に「来てくれて助かった」「ありがとう」と言っていただける警備の仕事はとてもやりがいのある仕事なので、興味のある方はぜひ会社説明会などにお越しください。
編集後記
大阪・関西万博に向け、安心・安全に運営できるよう意気込む池田社長の姿からは、人々に安心して楽しんでもらいたい、大阪が安全で過ごしやすい街だと思ってもらいたいという思いがひしひしと伝わってきた。
警備だけではなく、ビルの建物維持や管理も通じて、人々の安心・安全を守り続ける東洋テック株式会社は、万博開催を機にさらなる注目を浴びることだろう。
池田博之(いけだ・ひろゆき)/1960年福岡県生まれ、横浜国立大学卒業。1983年、株式会社大和銀行(現:株式会社りそな銀行)入行。2011年、株式会社近畿大阪銀行(現:株式会社関西みらい銀行)代表取締役社長就任。2017年、りそな銀行取締役副会長就任。2018年、一般社団法人関西経済同友会の代表幹事に就任。2020年、東洋テック株式会社の代表取締役社長に就任。