※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

変化が激しいIT業界において、創業から35年を迎えた株式会社ソフィックス。人手不足が課題とされる業界にありながら、安定した業績と新たな価値を創造する源はどこにあるのか。

新製品の開発や、新技術の研究について、またシステムエンジニアから社長になった経緯や、学生へのメッセージなどについて同社の社長である直井貴史氏にインタビューした。

新卒で入社し、システムエンジニアから社長へ

ーー入社から社長に就任するまでの経緯を教えてください。

直井貴史:
私が大学時代に所属していた研究室の教授から弊社を紹介され、1996年4月、弊社に新卒で入社しました。

その時期、ソフトウエア開発の分野では、設計ソフトのCAD(キャド)が開発され、製造業向けの機械設計をコンピューターでできるようになりつつありました。当時はソフトウエアを商材として扱っている企業は、ほとんどなかったのです。

同時に、私が入社した時期はバブル崩壊後の就職氷河期。メーカーへの就職が非常に厳しいときだったにもかかわらず、弊社は仕事が徐々に増えていたため、採用を強化する必要がありました。実際、当時の弊社の社員数は50名にも満たないものでしたが、私と同じく新卒で入社した同期は12名もいます。

入社後、私はシステムエンジニアとして業務を行いました。入社4年目からは、12年間にわたり、工場の生産管理システムの開発という大規模なプロジェクトに携わりました。

そんな中、2008年にリーマン・ショックが起こります。弊社の売上額は半分以下まで落ち、政府からの補助金や、銀行からの借入に頼らざるを得ない状況になってしまいました。なんとか経営の存続が可能となったタイミングで、2代目の社長から弊社の経営に携わるよう打診されたのです。

その後、3代目社長である西山の時代を経て、2023年2月、私が弊社の4代目の社長となりました。

情報をデータ化する技術で生産性を向上

ーー貴社の事業の強みについて教えてください。

直井貴史:
弊社の強みを2つ紹介します。

1つ目は、ソフトウエアが現場に貢献できることを考えながら仕事をしていることです。現場での作業が楽になる、無駄な作業を必要としなくなることを目標に、新しいソフトウエア技術を吸収し、製品を開発しています。

2つ目は、画像処理技術による問題解決法の提供です。機械の操作盤の様子を撮影し、メーター値などの情報を読み取り、データ化することができます。これは、弊社の大きな強みになっています。

20年から30年前につくられた工作機械は、古すぎて現在のネットワークにつなげることができませんが、この方法であればデータ化が困難な技術を保存し継承できます。減価償却期間を終えた工作機械をそのまま使い続けられるというわけです。

さらに、情報をデータ化する技術があれば、人はデータを集めて回る、といった生産性の低い業務をする必要がなくなります。それにより、従業員をデータ分析といった付加価値の高い業務に配置することも可能になります。

ーーいち企業が新しい工作機械やシステムを取り入れるにはコストがかかりますが、貴社ではどのような提案ができますか?

直井貴史:
まずは段階を踏んで、「弊社の製品を1台だけ試してみてください」と提案しています。

実際に運用して、顧客が求めるデータがとれるかを検証するためです。ご満足いただいた際には、さらに大きなシステムの導入へと発展させられる、と考えています。

ロボットと連携し、自動化・省人化を推進

ーー新規取引先の開拓についてどのように取り組まれていますか?

直井貴史:
現在は、工作機械を使用して業務を自動化している工場が増えています。ロボットと工作機械を連携させるケースもあります。ロボットを導入することで、工作機械だけに任せていたときよりも、人が行っていた単純作業をさらに自動化でき、省人化が可能になります。より人間ならではの業務に時間を使うことができるようになるということです。

ただ、顧客がロボットを導入する際にはほとんどの場合、ロボットメーカーが既存の機械との連携までは行わずに製品だけを販売して終わりなのです。その点、弊社はロボットとシステムの連携に関して強みを発揮するので、ロボットメーカーとの協業を図れば、より多くの顧客にサービスを展開することができます。

ーー新製品や新技術の開発についてどのように取り組まれていますか?

直井貴史:
まだ研究段階ですが、弊社は機械学習の分野で新技術の開発に取り組んでいます。これまでは、「匠の技」という言葉があるように、職人の仕事は、人の感覚や過去の経験を基に行われてきました。

それらの分野の作業データを取得、解析し、AIによって職人同様の加工技術、状況判断が可能になれば、自動化から自律化したものづくりができると考えています。この研究は難易度も高いのですが、大学でも研究されており、弊社も大学と連携をしながら開発を進めていきたいと思います。

採用におけるこだわり

ーー貴社では人材の採用をどのように進めていらっしゃいますか?

直井貴史:
弊社はソフィックスの文化の継承を大前提として、新卒社員を育てることで発展していきたいと考えているため、毎年8名から10名の新卒を採用しています。

同じ時期に入社して苦労ややりがいを共にしているので、同期は勿論、社員間のコミュニケーションが多く、居心地が良いといった話は社員からもよく聞こえてきます。

また、現場で実際に動く機械を相手にしていることから、現場、現実、現物の「三現主義」を大切にしてほしい、というメッセージを新入社員に毎年伝えています。研究などで忙しいとは思いますが、引きこもらず、外に出て色んな体験をしてほしいと思っています。

学生時代にさまざまな経験を!

ーー最後に社会に羽ばたく若手読者に向けてメッセージをお願いします。

直井貴史:
「鍛錬」の語源は、宮本武蔵の「五輪書」からきているといわれています。3年で鍛となり、10年で錬となす。要は、何かを習得しようと思ったら、長い期間が必要だということです。

まずは3年頑張ってみて、基礎を構築し、さらに経験を積んで10年も経てば、自然と技術が身につきます。あまり目の前の結果だけに一喜一憂しすぎることなく、頑張ってほしいと思います。

編集後記

「なければつくればいい」の精神で、多様化する顧客のニーズと日々向き合いながら、新製品の開発や新技術の研究に邁進するソフィックス。日進月歩で進化するIT業界や社会情勢に負けず、変化を楽しみながら顧客の期待に応え続ける同社の挑戦はこれからも続く。

直井貴史/1972年生まれ。茨城県出身。1996年3月東京都立大学卒業。同年4月株式会社ソフィックス入社。システムエンジニアとして15年従事。2011年2月取締役に就任(開発部次長)。2011年5月開発部部長を経て2013年2月常務取締役に就任。2014年4月から2019年3月まで名古屋支店長を担った後、2023年2月より現職に就任。