※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

焼き肉、すき焼き、牛丼……。牛肉は多くの日本人の食生活において欠かせない存在といえるのではないだろうか。しかし、その牛肉を手軽に食せるように製品化するまでには、多くの人々のエネルギーと高い技術が費やされる。

ビーフプレイス株式会社は、消費者により多くの牛肉を提供できるかを常に試行錯誤している。さらに独自の企業文化を築き、成長を続けている。

今回は、同社統括責任者の工藤博文氏に、働き手を惹き付ける企業文化、今後の展望などについてうかがった。

食肉業界に参入し、独自性の高い技術を強みに

ーー事業に関わるまでの経緯についてお聞かせください。

工藤博文:
兵庫県の国産牛肉卸売会社に営業職として入社し、その後、食肉加工などを手掛ける家業の株式会社一冨士本店に入社しました。

何も分からない状態でしたが、好奇心旺盛な性格であったため、様々なことにチャレンジしました。国産牛肉の部位を始め、加工、保管、輸送、販売までの流れを学びました。

また、顧客に対して商品を販売するのはもちろん、自分自身をいかに売っていくかを常に考え、商いに励んでいました。

そして、あれよあれよという間に国産牛肉専売の一冨士ビーフプレイス株式会社(現:ビーフプレイス株式会社)を立ち上げるに至りました。

ーー事業の内容、独自性について教えてください。

工藤博文:
弊社は、牛肉のカット委託業務から始まりました。まず、枝肉と呼ばれる大きな吊るされた状態の国産牛肉を脱骨します。そして、それを量販店の精肉部を始めとする作業者が扱いやすいように製品化していきます。

各部位ごとに細分化し、さらにその顧客に合わせたオーダーカットをするとなると、とても煩雑です。しかも手間も時間もかかるため、他社で同様の作業を行っているところは多くありません。

行動指針は「即」「速」「促」

ーー貴社の行動指針に大変興味があります。

工藤博文:
好きで仕事をしたい人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

私は仕事が大嫌いで、本当に打ち出の小槌があるならば、仕事なんかほっぽり出しているでしょう(笑)

ただ、そういう訳にはいかないのが現実。

それならば、勤務時間を短縮しよう、効率を上げて業務を早く終わらせようと常に考えています。そして自分の時間をどんどん増やそうと行動しています。

今すぐできることは“即”実行し、行動は他より圧倒的な“速さ”で動き、できる行動があれば“促”す。

これを企業文化としてとても重要視しています。

ーー14時台には業務が終わると聞きました。

工藤博文:
以前、結果を出すために独りよがりになってしまい、従業員には無理を強いて苦労をかけてしまった過去があります。

日付をまたいで作業をしたことも一日や二日だけではありません。従業員の目が死んでいるように見えたのが、今でも脳裏に焼き付いています。その時、私は鬼の形相をしていたに違いありません。断れず、ずっと作業をさせていたのだと後で気付きました。

このままではいつか本当に独りになってしまう…。この失敗を二度と繰り返してはならぬと誓った瞬間でした。

また、他にも様々な失敗などを経て、それらを全て解決し、今となっては真逆の考えに至ります。

もっと早く終業するにはどうすればいいのか。いかに効率と能率を上げて生産性を高められるか。そして、それらを利潤に結び付け、いかに従業員に還元するか。

こうした思いが全従業員に伝わり「とっとと帰ろうぜ!」という目標が一致した日がついに訪れました。

団結力が他社とは明らかに違います。オートメーション化できない業務であるため、人力で超高速かつ、最高効率を求め、今日も業務に勤しんでいます。

例えば、移動するにもその“移動するという行動”の中で何か出来ることはないかと常に考えています。

これを聞くと弊社の業務はとても窮屈ではないのかと感じられるかもしれません。ただ、これを習慣にしてしまえば、こっちのもの。むしろ一つの行動で一つだけの行動をするのがもったいなく感じられます。

おかげで、14時台にはほとんどの従業員が業務を終え、帰宅しています。

一応、15時に休憩を設定していますが、年に数日しかその休憩をとるに至りません。

食品加工とサプライチェーン戦略の未来

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。

工藤博文:
今は部位ごとに加工した牛肉を出荷し、量販店などの店舗で製品化し、陳列されています。

しかし、これからは弊社のような施設で、既に製品化されたものをそのままダイレクトに店頭に陳列されるのではないかと予想しています。

焼き肉、ステーキ、切り落とし肉。既にパック(製品化)にされている状態です。労働人口の減少に伴い、量販店の精肉部などを割愛し、完全処理、完全加工されたものが直接店頭に並べられている。そんな未来がいつ来てもおかしくはないと考えています。

その流れは環境への配慮の面においても理にかなっています。加工した牛肉を真空パックフィルムを用いて段ボール箱に梱包し、それをトラックで店舗まで輸送する。さらに店舗で人手を使ってトレーとラップを消費し、そして商品ラベルを貼り付ける。

私の考えるこれからのビジョンにおいては、これら一連の手間と資材を全て省くことができ、CO2の排出量の削減に大きく寄与する事が可能です。併せてコストカットにもつながります。

また、包装も真空パック状態を想定しており、そのため消費期限が伸び、廃棄を減らすことが可能です。

このような牛肉の流通に革命を起こすために、着々と布石を打つ我がビーフプレイス社をお見知りおきください。

編集後記

「仕事は大嫌い」と言い切る工藤氏。徹底的な業務効率化の追求に幸せを見出し、全力で業務に取り組んでいる。

毎日の食卓に欠かせない牛肉を取り巻くビジネスは、今後どう展開していくのか。工藤氏が提言するビジョンは、環境配慮の面でも食品ロス削減の面でも注目していきたい。

工藤博文/1977年、岡山県生まれ。大阪府の専門学校を卒業後、株式会社東急ホテルチェーンに入社し、その後、兵庫県の国産牛肉卸売会社からヘッドハンティングされる。2002年に株式会社一冨士本店へ入社し、牛枝肉加工業務に特化した「第二事業部」を立ち上げる。2012年に「第二事業部」を独立分社化し、一冨士ビーフプレイス株式会社を設立する。同年、取締役に就任。2023年、ビーフプレイス株式会社に社名変更。