一般的には知られていないが、特に中央卸売市場での販売にはさまざまな法律の制約があり、卸売業者の販売促進の課題となっている。
今回は、そのような課題の解決に尽力してきた横浜丸中ホールディングス株式会社の原田篤社長に、社長になるまでの経緯や企業努力の詳細、今後の展望、人材採用についてうかがった。
「必要とされる会社」になるためのたゆまぬ努力
ーー貴社を設立するまでの歩みを教えてください。
原田篤:
妻の家業を継いで社長になった横浜丸中青果株式会社は、横浜の中央卸売市場で「市場青果卸」として業務を行っていました。その業務は、全国の生産地から青果物を集めて市場の仲卸業者や小売業者に販売することです。販売は、横浜市中央卸売市場の本場(ほんじょう)、横浜南部市場、湘南藤沢地方卸売市場の3カ所で行われています。
「市場青果卸」としての業務には、国が定めた「卸売市場法」という法律による制約があり、許可されている業務は非常に限られました。そのため、顧客(小売業者、消費者)のニーズに十分に対応できないというジレンマが生じ、その課題を打破する方法を編み出すことに長年尽力してきました。
この課題の解決方法はグループ会社をつくることでした。そこで横浜市場センター株式会社、横浜ロジスティクス株式会社を設立し、その後、横浜丸中青果株式会社とのグループ経営を行っていく目的で横浜丸中ホールディングス株式会社を設立しました。
業種を変えた会社を複数組み合わせることで、市場青果卸には許可されていない業務、たとえば販売経路の充実、物流センター施設の整備、農産物加工業務などを行っています。
具体的には、横浜市場センター株式会社で青果の直販や加工(カット野菜事業)を行い、横浜ロジスティクス株式会社で輸送・配送業務、倉庫・物流センターの運営を行っています。このように、卸売市場法を遵守しつつ市場青果卸の業務以外にも顧客へのさまざまなサービスが提供でき、ニーズに応えられるようになりました。
また、藤沢市からの依頼があり、2012年に湘南藤沢市場の民営化も実現しました。
新しい時代の青果流通、卸売市場のあり方を模索
ーー今後さらに進めていく事業や計画はありますか?
原田篤:
新鮮な青果物を食卓に届けるため、農業技術や低温管理、物流、情報システムなどの技術革新を進めています。品揃えの充実も重要ですが、ただ単に野菜果物を売るのではなく、次世代につながる流通の提案を考えています。横浜丸中ホールディングスが1つのまとまった形態として機能する、流通提案型の会社を目指していきます。これらの取り組みを通じて、他の卸売会社との差別化を進めていく所存です。
具体的には、日本の農産物流通における既存の課題に対応しつつ、発展途上の部分を改善していきます。その一環として「農業を盛り立てること」も視野に入れています。
ーー現在の日本の農業には生産者の高齢化など、さまざまな問題があります。具体的な方策を教えてください。
原田篤:
私たちは農業の実態を勉強し、太陽光やLEDを利用した植物工場での栽培を行っています。また、湘南藤沢地方卸売市場周辺に畑を借りて、障害者の方々と一緒に作物を育てています。
私たちがつくることができる農作物の量は限られていますが、次世代に農業をつなげていくための流通の構築は考えています。そのように、実際に日本の農業の再生の一端を担っています。また、市場のもつ、生産物の供給とお客様の需要とのバランスを調整する機能を向上させていきたいと考えています。
共に実現を目指していく新しい仲間を募集中!
ーー採用を希望する人材について教えてください。
原田篤:
チャレンジ精神がある人に入社してほしいですね。生産地に出向いたり、流通現場で課題を見つけた場合に「よし、なんとかやってみよう」と意欲的に行動できる人が望ましいと考えています。
管理部門に携わる人も、物流部門で効率的な物流を組み立てる人も必要だと思います。卸売市場にはいろいろな可能性があるので、自分の特徴や長所を活かして弊社のグループ内のどこかで発揮してもらえれば嬉しいですね。
日本の食を守るための流通システムの構築に尽力する弊社と共に、さまざまな部門で活躍する新しい仲間を必要としています。
編集後記
私たちが新鮮な野菜や果物を毎日安心して買えるのは、横浜丸中ホールディングスのような、消費者に青果を届けるための多大な企業努力があってこそである。今後も青果販売ルートを充実させて、新鮮で安全な青果物の供給を続けてほしい。
原田篤/1967年生まれ、早稲田大学卒業。1993年に横浜丸中青果株式会社に入社し、総務部、企画部、営業統括を経て、2007年に同社代表取締役社長に就任。2015年に横浜丸中ホールディングス株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。