働き方が多様化する中で、オフィスのあり方やデザインは大きく変化している。株式会社ヴィスは、「オフィスデザイン」から「ワークデザイン」へと、その変化に向き合い、働く人々の幸せを考える会社だ。
幸せの価値観はあいまいなものだが、代表取締役社長の金谷氏は、そこを理解・再定義してこそ、企業ブランディングや働く人々の幸せにつなげられるという。
「ワークデザイン」を通じて実現した社会像はどのようなものか。ビジョンや求める人材像について、金谷社長にうかがった。
多様化する働き方と貫くべきミッション
ーー貴社の事業内容とミッションを教えてください。
金谷智浩:
ヴィスは、空間をデザインする「オフィスデザイン」から働き方そのものをデザインする「ワークデザイン」に取り組む会社です。ミッションとして「はたらく人々を幸せに。」というパーパスを掲げ、多様な働き方に対応できるオフィスデザインに取り組んでいます。
コロナ禍をきっかけに働き方が多様化したことにより、オフィスに出社して働くという常識は過去のものになりました。当然オフィスデザインにも変化が必要になりますので、考え直すべき要素が生まれます。たとえば、生産性の高め方や社内コミュニティの形成プロセス、社内カルチャーの醸成やビジョンの共有などが挙げられます。
時代はオフィスをデザインする時代から、働き方をデザインする時代へと移っています。
そして私たちはひとつのゴールとして、働く人々がエンゲージメントを高め、会社から刺激を受けることで、自己実現につなげられる社会を目指しています。
ただ、時代が変わっても「はたらく人々を幸せに。」という本質が変わることはありません。これからも時代の変化に適した幸せの形を考え、社会に貢献したいと考えています。
自らの内面と可能性を見つめなおし、ヴィスへ入社
ーー入社の経緯をお聞かせください。
金谷智浩:
特に印象的な出来事として、前職における、東京という環境との出会いが挙げられます。
きっかけは、前職で大阪から東京への転勤をいい渡されたことです。当初は、東京行きを拒んでいましたが、「絶対勉強になる」という上司からの言葉を受け、1年間だけ東京へ行くことにしました。
実際に来てみると、東京が日本のマーケットの中心であるということを強く感じました。それと同時に、自分の力をここで試し、育てたいという気持ちが湧いてきました。
そんなときに知人から紹介されたのがヴィスです。ちょうどヴィスが東京にオフィスを出すタイミングでご縁をいただき、入社することになりました。
経営者目線を持つスペシャリストを育て、組織の基礎を固める
ーーこれから注力したいことはありますか。
金谷智浩:
現在、一番注力しているのは、「ワークデザインプラットフォーム」という、働き方のステータスを可視化するツールを社内に浸透させることです。
その狙いは、経営者に近い観点で顧客のブランディングを実現できる人材の育成です。そのために、習熟度を測る社内テストを実施し、テストをクリアした社員には、「ワークデザインプラットフォーム」のスペシャリストとしての称号を与えています。
また、現在掲げている目標のひとつに、顧客の課題を明確化し、弊社のスペシャリストとパートナー企業が協力して解決できる体制を整えることがあります。「ワークデザインプラットフォーム」の浸透と人材育成はそのための第一歩といえる工程で、組織の基盤を固めるプロセスともいえるでしょう。
マーケティングの脱属人化により働きやすい環境をつくる
ーーマーケティングの効率化に積極的に取り組んでいますね。
金谷智浩:
目指しているのは、個人の能力に頼る「属人的営業」からの脱却と、マーケティングツールを取り入れた「仕組み化」です。
そもそも属人的な業務形態はとても不安定なものです。人材が欠ければ、会社全体へのマイナスになることもあります。会社という組織を安定させるためには、人材に左右されない仕組みをつくる必要があるということです。
マーケティングの仕組み化に取り組む中で、ある発見がありました。それは、私の役割は、売り上げを上げることよりも、社員の幸福度を上げることにあるということです。
社員の中には、営業は苦手でも別の分野で優れている者もいます。営業の良し悪しだけで評価せず、より多くの社員が働きやすい環境をつくっていきたいと考えています。
ヴィスはフロンティア精神のある人材が輝ける場所
ーー今後、積極的な採用を考えているそうですが、具体的な計画をお聞かせください。
金谷智浩:
2030年までに現在の約250名から450名〜500名程まで増やす計画があります。1人当たりの売上高についても約5000万円以上とすることを目標としていますので、すでに社会で活躍されている、スキルを持った方には積極的にジョインしていただければと思っています。
一方で、新卒入社の社員を育てることも大切だと思っています。これは、会社のDNAやカルチャーを継承するためにも重要なことです。弊社の考えに共感してくださる方に来ていただけると嬉しいですね。
ーー一緒に働きたいと思う人材の特徴を教えてください。
金谷智浩:
道を切り開いていく人、フロンティア精神を持った方です。私たちは、ワークデザインというものを考えて、広げていく道中にいます。弊社はある程度成熟した会社だと見られることがありますが、私としてはまだまだ可能性があると考えています。
さらに道を切り開くために必要なのがフロンティア精神です。開拓途中ならではの「未完成感」を一緒に楽しめる方や、チャレンジを楽しめる方とは、ぜひ一緒に働きたいと思います。
未完成なことにチャレンジすることや、企業のブランディングを担うことに対するプレッシャーは大きいものです。しかし、その分やりきったときの顧客からの感謝も大きいものです。なによりヴィスは、業務を通じて成長できる環境が整っています。働いたことが財産になると思うので、成長したい方はぜひチャレンジしてもらえればと思います。
編集後記
かつて多くの人の働く場所であったオフィスは、時代の変化とともにその役目を変えつつある。しかし金谷社長は、オフィスデザインに求められることが変わっても、使命の本質は変わらないと語る。
オフィスはただ働くための場所ではなく、会社の歴史や文化が受け継がれていく場所だ。そこにどのような価値を与え、ブランディングしていくのか。ヴィスの持つフロンティア精神が切り開いていく新たな社会の姿を想像すると胸が熱くなる。
金谷智浩/1976年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業。東証一部上場企業で広告企画などの経験を積んだのち、2004年株式会社ヴィスに入社。プロジェクトマネージャーとして数多くのオフィスを手がけ、新卒採用体制の構築や広報・WEBマーケティング責任者として幅広い業務を担当。2015年より常務取締役、2022年代表取締役社長に就任。2022年より株式会社ワークデザインテクノロジーズの代表取締役社長を兼任。