1947年に創業した株式会社盛香堂石田商店。日々の生活を豊かに彩る「香料原料」を幅広く扱い、その安定供給を支え、香料の専門商社としてNo.1を目指す会社だ。安全性を守り、常に高品質の香料原料を海外から調達している。代表取締役社長として活躍中の中山亮介氏に、株式会社盛香堂石田商店の事業内容や今後の展望をうかがった。
東京で磨いた営業力ーー社長になるまでの道のり
ーー中山社長の経歴について、お聞かせいただけますか。
中山亮介:
大学卒業後、通信機器関連の会社に勤務しましたが、その後、祖父が創業した株式会社盛香堂石田商店に25歳で入社しました。そして、「1年か2年、東京支店で修行してきなさい」と叔父から言われ、入社1ヶ月後に東京支店に配属となりました。蓋を開けたら16年もの間、東京で働いていましたね。
私は営業畑を歩んできたのですが、35歳になる前に当時はまだ耳馴染みがなかった「リスキリング」について考えるようになりました。もう1回大学で勉強しようと考え、仕事をしながら大学に通いました。
自分で志して学び直したということもあり、学びが面白く、大学院に進み、そこで香りの研究をしました。
ーー主に営業を担当していらっしゃったとのことですが、どのタイミングで社長にご就任なさったのでしょうか。
中山亮介:
2014年に、私の叔父である前社長が69歳で亡くなりました。その叔父からの遺言で、社長に就任させていただくことになりました。
社長になったら、24時間、いろいろなことを気にしなければなりませんし、休日も気が抜けないので、責任は重くなります。私は、プロジェクトや品質、リスクなどに関する責任の所在をそれぞれ明確にし、人事評価に関する基盤づくりも数年かけて行いました。
香料の「専門商社」として供給する、多彩な香りの世界
ーー貴社は香料を扱う会社ですが、事業内容について教えてください。
中山亮介:
弊社は香料会社ではなく、「香料の専門商社」です。商社でありながら、国内では非常に珍しく自社工場だけではなく、品質保証部もあります。必要な原料があれば供給するというのが、弊社の立ち位置です。現在ではヨーロッパやアメリカなど、海外からさまざまな香料原料を輸入しています。国内に香料会社は150社程度ありますが、そのうちのほとんどの香料会社とお付き合いをさせていただいています。
ーー人事評価について、どのような考えをお持ちでしょうか。
中山亮介:
上司と部下が定期的に面談を行うようにしており、コミュニケーションを積極的にとることに重きを置いています。
ベースアップに関しては役員会などで基本的に決めますが、年2回の賞与や昇格については面談を重視して決定します。人事評価制度を整備したことで、上司と部下のコミュニケーションが以前に比べて活発になりました。
一人でも多くの方々に良い香料を知っていただくためのビジネス戦略
ーー今後強化していきたいテーマはございますか。
中山亮介:
国内のお取引先様との関係は、これまでと同じく大切にするというのが最優先です。
タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアやマレーシアなど、東南アジアへの輸出については、6年くらい前から考えています。アジアへ進出しているお取引先様も多くいらっしゃるので、国内で培った信頼や実績を生かし取引のお手伝いをしていければと考えています。
また、弊社では海外の仕入先様とも良好な関係を保つことが重要です。そのため、社員が英会話のスキルを習得できるように、やる気がある社員には入社1年目から費用を負担して英会話のレッスンを受講できる制度があります。身につけたスキルを活かし、単身でオーストラリアに出張する社員もいて、営業担当者は年に数回、世界のどこかで行われる香料の商談に関する集まりに出席します。
ーー国内の小売ビジネスについてもうかがいたいのですが。
中山亮介:
5年前に、一般消費者向けにアロマショップ「SEIKODO」をおしゃれなショップが多い京町堀で開店させていただきました。京町堀の方々には喜んでいただいており、アロマを扱う会社が多数ある中で、「いろいろな会社を見てきた結果、盛香堂石田商店が良い」というお声をいただくことがあり、嬉しいですね。
アロマショップを通して、一般消費者の方にも、本当に良い香料を扱っているということを知っていただきたいです。
編集後記
勤務の傍ら、大学での研究に取り組んでいた中山亮介氏。現在では企業間取引が中心だが、一般消費者へ香料を提供することを検討しているとのこと。海外での事業展開も検討しており、株式会社盛香堂石田商店の今後の事業展開から、目が離せない。
中山亮介/1972年、兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科を修了。1998年5月、株式会社盛香堂石田商店へ入社。2015年1月、同社代表取締役社長に就任。アメリカやヨーロッパなど、世界中から高品質の香料原料を輸入し、国内の香料会社約150社と取引をしている。