子ども服ブランド「mezzo piano(メゾ ピアノ)」「petit main(プティマイン)」などを手がける株式会社ナルミヤ・インターナショナルは、売上・営業利益ともに過去最高を更新中だ。売上高は2024年2月期に7%増加の約375億、2025年2⽉期も増収増益を予想している。
ナルミヤ・インターナショナルの成長をけん引しているのが、2017年に入社し、2023年に代表取締役執行役員社長に就任した國京紘宇氏だ。同社の飛躍の秘訣をインタビューで明らかにする。
コンサルティング会社から転職した先の玩具メーカーでの転機
ーー入社に至った背景を教えてください。
國京紘宇:
コンサルティング会社を経て株式会社ユージン(玩具メーカー、現・株式会社タカラトミーアーツ)でマーケティングの仕事をしましたが、このときの経験がターニングポイントとなりました。同僚は全員、私と一緒で、キャラクターやおもちゃが本当に好きでした。共通の根っこを持った仲間が集まって仕事をしたときに「いろいろなことができる」と実感しました。
従業員の子どもたちも呼んで社員旅行や運動会を開催したのですが、職場の中でも外でもいつも子ども中心で、本当に楽しかったですね。みんな子どもが大好きなので、どうやって子どもを笑わせるかということばかり考えてました。
それ以来、子ども関連の仕事を続けてきたので、「子ども服業界でも役に立てる」と思って株式会社ナルミヤ・インターナショナルへの入社を決めました。
マルチチャネルとブランド戦略の強み
ーー貴社の強みを教えてください。
國京紘宇:
百貨店、ショッピングセンター、ECという複数のチャネルを持っていることが強みです。
たとえば、誕生日には高級品を百貨店で、コハレの日はショッピングセンターで、というように使い分けられます。そして、ECでは低価格のラインアップも用意しています。ほかにも卸とアウトレットのチャネルがあります。
およそ20のブランドをそれぞれのチャネルに合わせて開発して、お客様の選択肢を広げています。
ーーECでの販売状況や顧客とのコミュニケーション手法についてお聞かせください。
國京紘宇:
ECの売上構成比は30%弱で、そのうち半分が自社サイトの「ナルミヤ オンライン」の売上です。EC比率は意識せず、弊社はあくまでもお客様が「〇〇で買いたい」と思ったときに買える環境をリアル・ECで提供していたいと思っています。
また、ファンミーティングを実施するなど、顧客と積極的にコミュニケーションをとっています。2024年2月17日から期間限定で、「mezzo piano」の35周年を記念してテーマカフェを開催しているのですが、SNSで発表後、すぐに2月分の予約が埋まりました。弊社のブランドが本当に愛されていると感じました。
洋服だけではなく、弊社のキャラクターも子どもたちに人気です。今後もコンテンツの提供を通じてもっと各ブランドのファンを増やしていきたいと考えています。
親から子へ、子から孫へ、世代を超えたブランドを構築
ーー共通のお客様が複数のブランドの服を購入していますか?
國京紘宇:
いわゆる買い回りについては、拡大する余地があるので強化しています。チャネルごとの顧客層として祖父母世代は百貨店、両親世代はショッピングセンターという傾向があるので、同じお子様に対してご家族でお買い上げいただくチャンスはあります。
以前より弊社の製品をご愛用いただいていたお子様が大人になり、ご自身のお子様に、というつながりを確立しています。長くブランドが生き続けることで、親から子に、子から孫にと、三世代にわたって認知されるブランドをすでに構築しています。
価格競争に巻き込まれないように、ベネフィットを提供
ーー中国などから安価な競合商品が流入することに対する危機感はありますか?
國京紘宇:
マーケティングでは「ニーズ」「ウォンツ」「ベネフィット」という考え方があります。
お客様が最低限必要なものがニーズで、この分野は値下げ競争に晒されます。弊社は低価格帯のニーズに対応する製品も用意していますが、そこを主戦場に勝負しているわけではないので価格競争に巻き込まれないようにしています。
ニーズの上のウォンツに対応するのが、お客様に「欲しい」と想起させるブランドです。ウォンツで求められる製品のカテゴリーでは価格競争になる可能性が少なくなります。
最上位のベネフィットとは、「欲しい」を超えて「ここまでつくってくれる」と感じていただける絶対的なブランドです。ニーズよりもウォンツ、ウォンツよりもベネフィットをつくっていくのが弊社のブランドの目標です。
ーーお下がりで使えるように、お名前タグが2段になっている製品が子どもを持つ母親から人気ですよね。
國京紘宇:
弊社が提供するベネフィットの良い例です。お客様に感動していただくことを積み重ねていると、私たちが大々的にアピールしなくてもお客様の側から進んで弊社の製品を求めていただけます。
仲間を想うこと、お客様を想うこと
ーー仕事をする上での信条を教えてください。
國京紘宇:
仲間を想うことが信条です。それによって良い会社、良い業績になります。そして最終的には、お客様を第一に想うことです。
ーー貴社が求める人材を教えてください。
國京紘宇:
仲間を大切にする会社なので、チームワークのとれる方を求めます。そして、お子様が相手の仕事なので子どもが好きな人です。本社でデザイナーや企画を担当している社員も最初は店舗でお客様と接してもらっています。
若い人たちが挑戦できる環境を用意しているので、私たちと一緒に成長する意欲のある方の入社を歓迎しています。
編集後記
子ども関連のマーケティングの第一人者として、株式会社ナルミヤ・インターナショナルに抜擢された國京社長。その経営手腕はもちろんだが、根底にある國京社長の人柄こそがナルミヤ・インターナショナルの成長を実現している源泉だと感じた。
「子どもを笑顔にしたい」「仲間とともに成長したい」という社長の思いが良い組織を育て、良い製品を生み、最終的には同社の製品を愛用する子どもたちを笑顔にするのだろう。
國京紘宇/1967年東京都生まれ。1990年明治大学卒業後、積水化学工業株式会社に入社。2001年トーマツ コンサルティング(現・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)に入社。2003年株式会社ユージン(現・タカラトミーアーツ)に入社。2011年フィールズ株式会社(現・円谷フィールズホールディングス株式会社)に入社。2017年株式会社ナルミヤ・インターナショナルに入社、2023年代表取締役執行役員社長に就任し、現在に至る。