※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

共働き世帯の増加や新型コロナウイルス後のライフスタイルの変化により、インターネット通販の利用が増えている。一方で、テレビでの通信販売もご年配の方を中心にいまだに根強い人気を誇っている。

そのような中、利用者から愛される商品を生み出し、テレビを中心とした媒体で販売を行っているのが株式会社テレビショッピング研究所だ。今回は、代表取締役会長の高橋正樹氏から、起業のきっかけや事業拡大の戦略、今後の展望などをうかがった。

卸売業から、顧客に直接売れるテレビショッピングへ

ーー貴社の事業内容や特徴を教えてください。

高橋正樹:
弊社は、テレビを中心とした通信販売事業を行っています。「社員主体で成り立っている会社」を目標にし、若手や中堅社員などの垣根を越えて、社員全員の繋がりを大切にしています。全員参加型の商品開発会議なども行っていて、賑やかな雰囲気です。「どのような商品を売っていこうか」「こんな商品がいいね」と社員全員で考えながら動いていくため、若手社員も活躍しています。

ーー起業のきっかけは何だったのでしょうか。

高橋正樹:
弊社の前身はカーテンや絨毯などの卸売業を営む「大一商事株式会社」で、私は2代目として1987年に代表取締役社長に就任しました。1996年に通信販売業務を行う関連会社(現・株式会社テレビショッピング研究所)を立ち上げ、通販業界に参入しました。

大一商事は、取引先として通販会社にも商品を売っていました。そのころに「卸売業だけをやっていても将来はあまり明るくない。直接、顧客と接点を持って商品を販売したい」と思う中で、店舗展開よりも通販の方が初期投資も少なくて身軽だったので、当時主流だったテレビショッピング業界への参入を決めました。

BtoBの卸売業から一般消費者を対象にしたBtoCへと変貌していきましたが、卸売業を通してなんとなく売れるものもわかっていたので、順調に規模を拡大できました。

100に1つでもいい、長年売れる商品をつくりたい

ーー事業拡大のための企業戦略について詳しくお聞かせください。

高橋正樹:
最初に売ったのは、テレビ番組の1分から3分の放送枠を買って売り出した運動器具でした。反響が良かったので、商品に合う売り方を考え、30分や1時間の番組を作って売り出しました。

お客様にあまり知られていない商品を販売するときには、商品の説明を詳しくする必要があるので、長尺番組で知名度を上げていきました。一度知名度が高まると、短い放送時間でも買ってもらえるようになります。

はじめは30分の放送枠をとることが難しく、BSやCSの深夜枠など、メインではない枠から広げていきました。青汁などは30分の番組をつくり、ある程度売り上げがあがったタイミングで、1分や3分のコマーシャルを展開しました。

ーー商品を企画・開発をする際に、大切にしていることはありますか。

高橋正樹:
少子高齢化にともない、主な客層である高齢の方向けに、安全性や安心感を重視した商品を提供することが大切だと思っています。弊社の代表的な商品である「青汁三昧」は十年来売れ続けていますが、同じような商品は簡単には出てきません。

ヒットする商品の見極めは長年の課題です。「売れるだろう」と思っても売れないことや、その逆も多いのです。まずは、「テスト的に販売してみる」事を重視しています。放送枠ごとに異なる、地域・時間帯・視聴者の志向性に合わせ、最大限の効果が見込めるCM素材を厳選して放送しています。

結果が振るわなかった放送枠は、裏番組からその日の天候に至るまで様々なデータを分析し、原因を究明して次に活かしています。こうして精度を高めながら商品を「育ててゆく」作業がヒット商品を生み出すために重要な工程です。

思うようにヒットさせるのは難しいのですが、「100に1つでも、10年売れ続けるような商品が出てくれば」という気持ちでやっています。

やってみないとわからない、もっと失敗しよう

ーー人材育成、組織づくりに関してこだわりはありますか。

高橋正樹:
百貨店型の幅広い商品を取り揃えた通販ではないので、何かアクションを起こさないと売れません。ピンポイントの商売では「売ってみないとわからない」「やってみないとわからない」という部分があるので、「もっと挑戦して失敗もして、経験を積むように」と、社員には教えています。

売り方にも工夫があります。お客さんから聞いた意見を深掘りしないと、実際には売れません。商品紹介の映像についても、演出次第で売上が大きく伸びるということがたくさんあります。

通販会社ではなく、商品開発会社でありたい

ーー今後の展望について教えてください。

高橋正樹:
弊社は、「通販会社ではなく、商品開発会社であるべきだ」と考えています。経験上、企画開発から手掛けた自分達の納得できる商品の方が、ロングヒットになっています。

通販は、新規の商品開発力と、継続力のある商品を持っていないと、続けていくのが難しい業界です。

今後、テレビ通販は徐々に下火になるかもしれませんが、映像を介した販売方法はECやSNS・YouTubeなどにも拡がっております。映像で商品を魅力的に伝える事について業界25年以上に及ぶ手練手管のある弊社では、メディアのシフトをしながら、更なる拡大を目指しています。

ーー新しく挑戦している取り組みはありますか。

高橋正樹:
物販だけではなく他の分野にも手を広げたいと思っていて、現在は蓄電池事業に挑戦中です。2023年には、しろくま電力株式会社と協業で、熊本県荒尾市に系統用蓄電池を開発・設置。日中に発電された電力を買電・蓄電し、その電力を夜間に利用または売電する取り組みを進めています。

蓄電池の利用は、社会の流れとして必然だと考えていて、事業規模を拡大して会社の安定度も高めていきたいと思います。

何か面白いことを求める気持ち

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

高橋正樹:
弊社は全員参加型の会社を目指していて、社員全員が参加する商品開発会議をはじめ、若手が発言・提案しやすいような場を設けています。特に企画系の部門は、縦割りの雰囲気がなく、配属されている部署の業務に限らず幅広い仕事ができる環境が整っています。

「会社でこういうことがやりたい」という明確な意思がある人はもちろんですが、会社に入るというより「何か面白いことがありそうだ」と思って弊社に来てほしいですね。

編集後記

日々通販会社として商品を販売するだけでなく、お客様に納得していただけるよう、商品開発を怠らない高橋会長。業界の変革を見据えながらも、新たな分野にも挑戦し続ける株式会社テレビショッピング研究所に、今後も注目していきたい。

高橋正樹/1949年、東京都生まれ。青山学院大学理工学部を卒業後、大一商事株式会社に入社。1988年、代表取締役社長に就任。1998年に関連会社の社名を株式会社テレビショッピング研究所に改め、通販事業に参入。同年、代表取締役社長に就任。2022年、代表取締役会長に就任。