※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

企業の経営課題は、分析や可視化していたとしても自社ではカバーできないこともある。とくに、内部のみで課題を解決しようとする場合、社員の負担が大きくなり、具体的な対策が立てられないというケースも生じる。ナインシグマ・ホールディングス株式会社では、企業が抱えている課題に外部の技術や視点・アイデアを取り込むことで、課題解決を支援している。

今回は、グローバルな視点から社外イノベーションを活用した事業成長や社会課題解決を支援する諏訪社長のお話をうかがった。

MITで挫折した経験が会社を立ち上げるきっかけに

ーー事業を立ち上げるまでのいきさつを教えてください。

諏訪暁彦:
私は、科学者として世界を変えることを目指し、マサチューセッツ工科大学(以下MIT)に進学しましたが、世界中から集まる優秀な学生たちの能力の高さに圧倒され、自分の限界を感じたのです。このような経験もあって、自分が世界を変える研究を行うのではなく、成し遂げたいことがある人と、それを可能にする技術を持つ人を結びつける役割を果たそうと考えるようになりました。

その後、コンサルタントとしてのキャリアを経て、アメリカ法人のナインシグマと出合い、オープンイノベーションの取り組みに魅力を感じ、日本での事業展開をぜひやらせてほしいと提案しました。

日本では、当時、私が所属していた日本総合研究所とナインシグマのアライアンス事業として立ち上げました。当初はオープンイノベーションがほとんど認知されておらず、少数の企業からの依頼で始まりましたが、徐々に多くの企業からの関心を集めるようになりました。やがて、社内では対応できない規模になり、制約が多くなったので、自由に事業を手がけるため、独立を決断しました。

独立後のナインシグマは日本市場での影響力を高め、多様な業界の企業と協力してイノベーションを推進しています。そして2017年には、アメリカの本社を逆買収してグローバルCEOに就任しました。

伴走型支援で効果的な外部イノベーション活用を促す

ーー貴社の事業について教えてください。

諏訪暁彦:
大手企業でも単独では解決できない課題が多いため、異なるスキルを持つ組織が集まって解決しなければならない現状があります。

ナインシグマは、企業がイノベーションを起こすための支援を事業の柱としています。とくに技術を必要としている組織と、技術を持っている組織をつなげるマッチングによって、互いに有益なイノベーションを生み出すことを得意としています。

ーー貴社の事業における強みはどのようなものでしょうか。

諏訪暁彦:
外部の知見を活用して、イノベーションを生み出す支援をしていることです。とくに、伴走型支援として、お客様のチームに入り込み、新規事業に取り組む点は強みです。

新規事業は、一発一中とはいかないため、継続的な支援を行い、成功体験を積み重ねていきます。最初はナインシグマがサポートしますが、お客様自身が成功体験を繰り返せるようになることがゴールです。

また弊社は、グローバルに多様な技術や見解・ニーズを短期間で集められるネットワークを持ち、オープンイノベーションという言葉が生まれる前から活動してきた実績に裏付けられた信頼性の高いマッチングを行っています。

ニーズからシーズ(※企業が顧客に提供する商品やサービス)へのマッチング、シーズからニーズへのマッチングの両方をグローバルに行える組織は少ないので、その点でもナインシグマは強みを持っていると自負しています。

技術とイノベーションを通じて社会課題の解決を

ーー今後の展望をお聞かせください。

諏訪暁彦:
今後は、お客様が継続的にイノベーションを生み出すための仕組みを構築することを目指しています。一度の成功に留まらず、成功を重ねることで、より大きな社会インパクトを創出できるようにしたいですね。

新しい事業機会を大きな見落としなく見出し、そこから事業モデルやソリューションを創る成功体験をプロセス化し、お客様が自力で繰り返せるように支援しようとしています。

また、イノベーションプロセスを簡素化し、容易に取り組めるようにするために、ITツールの開発にも注力しています。アプリのようなツールを使用できれば、経験不足のハードルが下がり、イノベーションの成功体験を繰り返しやすくなると考えています。

ナインシグマの最終的な目標は、技術とイノベーションを通じて、世界が直面するさまざまな社会課題を解決することです。サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現や、環境問題、エネルギー問題などの解決も含んでいます。技術だけでは解決できない問題はあるものの、技術によって解決できる部分も多くあるでしょう。

そして、企業単独での取り組みには限界があるため、コラボレーションを通じたイノベーションが重要であると感じています。今後も社外イノベーション活用の可能性を拡げ、異なる組織や分野の知識を結集し、より大きなインパクトを生み出すことを目指していきたいですね。

編集後記

MITで味わった挫折を経て、企業のオープンイノベーションを通じた支援を行うナインシグマと出会った諏訪社長。グローバルな視点から課題解決に着目し、改革を起こすまで企業を支援する諏訪社長の冷静な視点に基づいた明晰さが伝わってきた。今後も社外イノベーションを活用した企業の事業成長や社会課題解決を支援するナインシグマ・ホールディングスの動向から目が離せない。

諏訪暁彦/1972年東京都生まれ、マサチューセッツ工科大学(MIT)修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、株式会社日本総合研究所での勤務を経て、2006年にナインシグマ・ジャパンを設立し、代表取締役社長に就任。2017年に米国NineSigmaのMBOを行い、ナインシグマ・ホールディングス株式会社を設立し、代表取締役社長兼グローバルCEOに就任。