2001年に設立された株式会社エンドレスは、同年にアクセサリーパーツ専門店である「PARTS CLUB(パーツクラブ)」1号店をオープンした。さまざまなブランドを展開する中で、デザインから製造、販売までを全て自社で行っている。
エンドレスの創業社長である父のもとで取締役COO最高執行責任者を務める蕭勝華(ショウ センファ)氏。ハイクオリティかつプチプライスなブランドや、廃棄問題の解決に向けたサステナブルなブランドなど、業界の常識にとらわれない事業展開を進めている。
革新を続ける蕭勝華氏に、困難を乗り越えた経験や常識を覆す取り組み、今後の展望についてうかがった。
アメリカでのチャレンジングな学生時代と、取締役就任後の苦難
ーー学生時代の経験や入社までの経緯を教えてください。
蕭勝華:
台湾で生まれ、幼少期から日本で暮らしていましたが、中学卒業後に親からサンフランシスコ行きの片道切符を渡され、英語も話せないまま1人で渡米しました。
サンフランシスコの高校を卒業後、ロサンゼルスの南カリフォルニア大学に進学した際に、多くの起業家と出会い、刺激を受けました。大学在学中にはTradeBank株式会社を起業したのちに会社売却。その後は在学中にマッキンゼー・アンド・カンパニーに就業する機会をいただき、そのまま入社しようと考えていたところ、父から日本に戻ってくるように言われました。
後に会社を継ぐにあたって日本のマーケットや文化を理解する必要性があると感じていたため、KPMGコンサルティング株式会社の日本法人に入社し、電力会社・大手総合重工業・大手IT企業など複数社のコンサルティング経験を積んだ後、家業であるエンドレスに入社しました。
ーー入社してから苦労したことや、転機となったエピソードはありますか?
蕭勝華:
入社した初日から取締役に就任し、承認関係は私に委ねられましたが、エンドレスでの業務経験がない私に対する社員の風当たりは強いものでした。もちろん入社当時からサポートしてくれていた方も多くいますが、会社の事を何も知らない中で二代目として入社するとなったら風当たりが強いことは当たり前のことだとは思います。さらに、創業者と同じように振る舞おうと無理に演じた結果、ストレスで十二指腸潰瘍になり生死をさまよいました。
入院中に「自分はエンドレスという会社をどうしていきたいのか?」を考えたことをきっかけに改めて会社のビジョンやバリューを見つめ直し、退院後からすぐに動き始めました。当時は業績が赤字だったこともあり、人材採用や既存スタッフの育成、新しいブランドの立ち上げなど、抜本的な改革を行いました。入社当時からお世話になっているスタッフ含め、新たなチャレンジに付いてきてくれたスタッフの方々には本当に感謝しかありません。
より多くの人にアクセサリーの魅力を伝えるために業界の常識を変える
ーー貴社の主力ブランドの紹介をお願いします。
蕭勝華:
2001年に1号店をオープンした「PARTS CLUB」は、パーツを組み合わせてオリジナルアクセサリーをつくるブランドで、現在は60店舗以上の展開をしています。20年来のファンも多く、幅広い年齢の方にご利用いただいており、最近では親子ワークショップも開催しています。
業界の常識を壊そうと始めた「LUNA EARTH(ルナアース)」は、300円(税抜)から高品質な商品を購入できるブランドで、現在50店舗以上の展開をしています。
ーー「業界の常識を壊す」というのは具体的にどのような取り組みだったのでしょうか?
蕭勝華:
アクセサリー業界は20年以上にわたり1000〜2000円の価格帯の商品が主流でした。もともと、弊社は問屋業を行っていましたが、売値までコントロールされている状況に疑問を抱いていました。「サプライチェーンを改革した上で、企業努力によって300円で商品を提供できれば、もっとアクセサリーの良さを知ってもらえるのではないか」と思い、スタートしたのが「LUNA EARTH」です。
300円という単価を実現するには、1度に大量の商品を生産する必要があり、それらの商品をさばくためには多くの店舗が必要でした。そこで、M&Aにより株式会社B.L.Cが展開していた店舗を「LUNA EARTH」としたところ、1500円程度の商品が300円から購入できるようになったことで、お客様に驚かれたと同時に認知度が上がり、リピーターの獲得につながりました。
やりたいことに挑戦できる組織風土
ーー女性が多い貴社において、働きやすい環境をつくるために工夫していることはありますか?
蕭勝華:
以前は出産のタイミングで退職する社員が多かったのですが、現在は産休前から新たなスタッフを配置してフォローアップの体制をつくり、産休後も子育てしながら働ける環境を整えています。
また、社員が部署異動を希望できるFA制度では、希望があればすぐに役員を含めた面談を行い、希望部署への異動が決まれば約2ヶ月後には新しい部署で働くことができます。さらに、昨年4月にスタートしたアルバイトスタッフを社員へ昇格する社員チャレンジ制度は、アルバイト勤務をして6ヶ月が経てば応募して良いという制度で、希望があればすぐに役員を含めた面談となります。すでにここ1年で約60名のアルバイトスタッフを社員として採用しました。
アクセサリーによって世界中の人に日々の小さな幸せを届けたい
ーー今後の事業展開についてどのようにお考えですか?
蕭勝華:
現在は毎年10店舗近く出店していますが、今後は日本国内だけで年間20店舗の出店を目指しています。アクセサリーショップは全国各地にありますが、価格帯が高いところが多く、弊社は300円でもっと良いものを広げられる地域がまだあると感じています。今後、「LUNA EARTH」を国内で200店舗にまで拡大することが目標です。
また、アジア諸国での海外展開を視野に入れています。ジュエリーやアパレルでは世界で認知されているブランドがありますが、低価格帯のアクセサリーではそのようなブランドはありません。アクセサリーをつくる楽しさや身に着ける喜びを、世界中の方に届けたいと考えています。
ーー採用活動はどのように進めていますか?
蕭勝華:
本格的に新卒採用を始めたのは2年前ですが、今年は29名入社し、来年は80名を目指しています。弊社のビジョンに共感し、海外で活躍したいという方も増えているため、将来的にグローバル推進チームをつくろうと考えています。
中途採用では店舗をマネジメントする店長やSV候補、商品開発に携わるデザイナーの採用を強化しています。他にも大手クライアントにアクセサリーを卸す営業部、店舗出店の開発をする店舗開発部、新たな物流の形を創造する商品管理部など、多数の部署で中途採用を進めています。
ーー若手人材へのメッセージをお願いします。
蕭勝華:
「挑戦しない人生はつまらない」という意識を持っていることが大切だと考えています。計画して「うまくいかないのではないか」と考えて実行しない人が多いと思いますが、失敗を恐れずにまずはチャレンジしてみて欲しいと思います。何もしなければ失敗はないけれど、得るものもないので、まずははじめの一歩を踏み出してもらいたいです。
編集後記
4年後にはアクセサリー事業だけで、国内で初めて売上100億円を超える見込みだという株式会社エンドレス。お客様に支持されるかどうかが重要だと語る蕭勝華氏からは、新たな道を切り拓くための強い意志を感じた。
やりがいをもって働ける環境を整えながら、海外展開に向けて突き進む同社の今後の活躍が楽しみだ。
蕭勝華/1994年台湾生まれ。2歳の頃に来日。13歳まで浅草で育ち、14歳で渡米。南カリフォルニア大学在学中にTradeBank株式会社の起業からの会社売却や、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インクでの就業を経験。大学卒業後は、KPMGコンサルティング株式会社に入社し、2018年に株式会社エンドレスの取締役に就任。次々に新しいブランドを立ち上げ、2023年に全国130店舗を超える事業展開を実現。