※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

株式会社パーツ精工は切削加工から成型加工、表面処理にアッセンブリー(組み立て)まで幅広い工程を一貫して手がける機械加工会社だ。

2001年に中国生産を本格的にスタートし、2011年からは日本向けの輸入だけでなく中国内のシェア拡大にも着手してきた。

さらに競争力の強化を図ってフィリピンにも工場を設け、今後は新興国への進出を視野に入れている。

拠点を増やして業容を拡大してきた同社は業績も好調である。「社員の収入アップに貢献したい」と語る代表取締役社長の大田佑一郎氏に、経営方針や今後の計画についてインタビューした。

従業員の給与を前年以上にするため「毎年少しずつの成長」を目指す

ーー若い頃から会社を継ぐことが決まっていたのですか?

大田佑一郎:
現会長の父からは私が社会人になるまでそのような話はありませんでした。就職する際も具体的な話し合いはなく、私はIT系の会社に入社して営業を担当していました。

職人の背中を見て学べとよくいいますが、父も多くを語らないほうだったため、家業についてはよく理解していませんでした。

ーー貴社に入社後の経験について聞かせてください。

大田佑一郎:
2008年に入社し、2012年から2019年まで中国に赴任しました。日本では営業を担当していました。

中国では、言葉や現地の人の考え方や文化を理解したうえで、日本式と中国式の良いやり方をすり合わせていくことに努め、とてもいい勉強になりました。

ーー社長就任後は、どのようなことに苦労を感じましたか?

大田佑一郎:
2021年に父から社長を引き継ぎました。よく先代についてきた古参社員とぶつかるという話も聞きますが私は全くありません。皆さん良く働き、良く意見をくれます。本当に従業員に恵まれていると思います。

強いて言えば人間関係が一番苦労しますね。会社を良くしたいという思いは皆同じなのですが、人それぞれ価値観は異なりますのでちょっとした事で意見が対立します。最終判断は私なのですが、あっちを立てればこっちが立たないといった事が起こりますので、判断をする時はなるべく客観的な視点で原理原則に沿ってするようにしてます。

会社の代表としての目標は、「毎年少しずつの成長」を実現することです。従業員とその家族の幸せのために、給料を前年より下げないことを約束し、そのために会社全体の成長を継続させるという目標を強く持っています。

ベトナム進出に先駆けて人材の採用を進める

ーー主な事業内容をお聞かせください。

大田佑一郎:
金属の切削加工部品を取り扱っています。FA(ファクトリーオートメーション)関連の部品がメインで、そのほか医療や食品、半導体に関連する部品の加工を手がけています。

大量生産といわれるものは基本的には扱わず、しっかり利益の取れる少量、中量生産かつ比較的難易度の高い加工部品を取り扱っています。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか?

大田佑一郎:
弊社は国内外合わせて800台の工作機械を保有しているため、生産キャパシティの大きさに加え、きめ細かい対応ができることが大きなアドバンテージです。

さらに国内や海外のどの工場でも同じ品質のものをつくれることが最大の強みだと考えています。例えば短納期対応部品であれば国内工場、人手がかかる部品であれば海外工場といった使い分けができます。

ーー経営課題についてお聞かせください。

大田佑一郎:
今年は製品の付加価値向上を目的に新たに洗浄設備や研磨の分野にも投資をしています。常に新しい事にチャレンジする事で全従業員が目標を持って前向きに働ける環境を作り続けて行くことが永続的な課題です。

従業員から他の工場も見てみたいという意見もあり、2〜3ヵ月程度の研修を目的に国内工場間の人材交流も始めています。それにより本人の成長はもちろん、工場間の仕事の平準化にも繋がっています。将来海外工場でも活躍したいという人材がもっと増えれば良いですね。時代に合わせて色々と仕組みは変えていきたいと考えています。

ーー直近の経営目標を教えてください。

大田佑一郎:
3年前から海外は中国とフィリピン以外にも、新たに進出する候補にベトナムを挙げています。これを見据えて技能実習生ではなく新卒としてベトナム人を雇用し始めました。

今後は同国で工場の建設を進め、彼らが成長した段階で現地工場の運営を任せていきたいと考え、積極採用に動いています。

柔軟な発想を持つ若い世代へのアピール活動も行う

ーーオンラインショップ「Wee!HuB」(※1)についてうかがいます。

大田佑一郎:
コロナ禍で外出がしにくい世の中であっても、長年の精密部品加工の強みを活かした切削加工屋が作る、アウトドア用品をはじめとした製品をオンラインでも販売できるようにショップを開設しました。

また、会社のX(旧Twitter)の公式アカウント(※2)を開設するなど、新たな潮流に乗る中で「魅力的な自社商品をつくり上げよう」というマインドを醸成しました。

若い人の注目を集めるためにも「どうせなら楽しめるものを売って面白さを全面に出したほうがいい」と思い、担当者の趣味であるアウトドア商品を中心に、現在までラインナップの拡充に注力しています。

この企画を通して、柔軟な発想を持つ若い人たちにモノづくりの楽しさを伝え、ひいては弊社を知ってもらうことで新たな事業の可能性につながると思っています。

ーー採用したい人物像はありますか?

大田佑一郎:
安心して長く勤められる会社にしていきたいと思いますので、長く働いてくれる人を求めています。それを担保するために常に成長を心がけ、役職のポジションをつくるためにも会社の規模を拡張させ続けています。

私たちの社訓は「心のキャッチボールを大切にしよう」であり、会社に入ってくれたこと自体を貴重な出会いとして捉えています。

仲間同士の関係を最も大切にしている職場なので、賛同していただける方はぜひ一緒に長く成長を目指していきましょう。

(※1)Wee!HuB公式サイト

(※2)株式会社パーツ精工X(旧Twitter)公式アカウント

編集後記

古くから続く機械加工を手がけながら、「Wee!HuB」のような若い世代に向けた新しい取り組みも積極的に進める大田社長。

創業以来の社訓や製造業の既存カルチャーを尊重しつつ、新しい世代の経営者としての柔軟性も持ち合わせる。同社のポジティブな未来像を想像せずにいられない。

大田佑一郎/1983年千葉県生まれ。IT系の会社に営業として2年間勤めたのち、2008年株式会社パーツ精工に入社。2021年に同社代表取締役社長に就任。