「チョコレートで世界の幸せをデザインする」という理念に基づいてフェアトレードチョコレートを使用した洋菓子の製造・販売を手がけるチョコレートデザイン株式会社は、お客様と製造者、カカオ生産者、チョコレートに関わるすべての人が幸せになるような仕組みづくりを行っているという。2023年9月に同社代表取締役に就任したばかりの大槻昌弘氏に、就任の経緯や原産国支援の取り組み、今後の展望についてうかがった。
「人の笑顔を創出する」という理想を胸に社長に就任
ーー社長の経歴を教えてください。
大槻昌弘:
私は、旅行会社の株式会社JTBの法人営業担当としてキャリアをスタートしました。その仕事の中でマーケティングの手法を知り、「マーケティングというのは、人を笑顔にできる非常に強い武器だな」と感じたのです。私は仕事をする上で「いかに人の笑顔を創出できるか」を念頭に置いています。
そこで、人を笑顔にできるマーケティングの仕事をしたいと考え、株式会社博報堂や株式会社ドミノ・ピザ ジャパン、UCC上島珈琲株式会社などでマーケティングの仕事に従事し、責任者も務めさせていただきました。
ーーどのような経緯で貴社の代表に就任したのですか。
大槻昌弘:
ヘッドハンティングの方から「事業継承をしてほしい会社があるが、どうか」というお話をいただいたことがきっかけでした。マーケティング力を強化したいという会社側からの強い希望があり、マーケティングキャリアを培ってきた私に声をかけていただきました。
「チョコレートで世界の幸せをデザインする」という会社の理念は、私個人の理念とも合致するものでした。そこで、「マーケティングを武器に、社長として会社を切り盛りしてみよう」と決意し、2023年9月に社長に就任しました。
原産地支援の一環としてフェアトレードを導入
ーー貴社で人気の商品にはどのようなものがありますか。
大槻昌弘:
弊社の人気スイーツは、「ショーコラ」と「パリトロ」です。こちらはクラフトチョコレート専門店だからこそできる、熟練のショコラティエの試行錯誤によって生まれたおいしいスイーツです。
原材料として、他国での栽培が難しいとされている希少固有種であるエクアドルのアリバカカオや、非常に希少価値の高いタンザニア産のカカオ豆を使用しています。すべて生産者の人々の労働に見合った適正価格で取引したもので、フェアトレードやサステナブルな原料であるものを選定しています。
ーーなぜ、フェアトレードを導入しているのですか。
大槻昌弘:
これは弊社の理念が関係しており、カカオの原産地では「子どもたちが学校にも行けずにカカオの収穫をしている」という現実がありました。その子どもたちの多くは、チョコレートを食べたことがありません。そこで、「カカオ原産国の人を幸せにするために何ができるか」を考えた先代社長の取り組みの1つが、フェアトレードチョコレートの導入だったのです。
ーーフェアトレードの導入以外にどのような原産地支援を行っていますか。
大槻昌弘:
2024年4月から、カカオ豆の植樹プロジェクトを行っています。これは、近年の異常気象によってエクアドルのカカオ豆の輸出量が減少しているという実情を踏まえて、始めたものです。
弊社の売上の一部を支援金として充当し、約3000本のカカオの苗木をエクアドルのカカオ農園に提供しました。収穫したカカオ豆を、弊社でチョコレートに加工する予定です。過去にはチャリティー付き商品の販売や、売上金の一部を使用してガーナに学校をつくる取り組みも行いました。
クラフトチョコレート専門店ならではの商品展開に注力したい
ーー中長期的な展望について教えてください。
大槻昌弘:
日本におけるチョコレートの市場を伸ばしていきたいです。日本市場では欧米諸国に比べてチョコレートの消費量が少ないので、まだまだ伸びしろがあると感じています。
弊社独自の理念を忘れずに、フェアトレードを導入したクラフトチョコレート専門店だからこそできる商品を展開して、市場に価値を提供したいと考えています。既存の「ショーコラ」や「パリトロ」に加えて、新しい商品の開発にも注力したいですね。
ーー具体的には、どのような商品を展開したいと考えていますか。
大槻昌弘:
やはり、「味がおいしい」というところは一番外せない要素だと思います。私たちは、スーパーで買えるチョコレートと最高級チョコレートの中間に位置する商品を展開しています。お客様がちょっとしたご褒美やささやかな贅沢として弊社の商品を口にしたときに、「おいしい」「心が癒やされる」と感じてくれるような商品を展開したいですね。
ーー最後に、貴社の理念や展望を教えてください。
大槻昌弘:
「チョコレートで世界の幸せをデザインする」という理念のもと、原産国の人も食べる人もつくる人もチョコレートに関わるすべての人が幸せでいられる仕組みづくりを目指して活動していきます。弊社という1企業が行っている取り組みを浸透させ、世の中を動かしたいと考えています。
編集後記
常に人を笑顔にすることを考える大槻代表。原産地支援だけでなく、ある種の「地産地消」にもこだわる。彼は、「横浜発祥のチョコレートブランドとして認知され、ギフトとしても選んでもらえれば」と話す。「チョコレートで世界の幸せをデザインする」という理念が広がり、チョコレートデザイン株式会社が横浜から世界中の人々を幸せにしてくれることにも期待したい。
大槻昌弘/1998年株式会社JTBに入社。法人担当の営業職として働く。その後、株式会社博報堂、株式会社ドミノ・ピザ ジャパン、UCC上島珈琲株式会社などでマーケティング責任者として勤務。2023年にチョコレートデザイン株式会社代表取締役に就任。