※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

コンピューターを使って暗号資産(仮想通貨)の取引をブロックチェーンに記録し、一連の作業報酬として仮想通貨を得る「マイニング(採掘)」。競争激化によって、採掘の難易度は上がり続けている。また、膨大な計算処理に多くの電力を要するため、電気代高騰も参入の障壁となる。

そんな中、マイニングマシンの開発、販売、運用を行う株式会社ゼロフィールドは、安定した採掘量を誇り、電力効率の向上や自然エネルギーの活用でコスト削減を実現している。

高い技術力と実績を誇る同社。設立から携わってきた代表取締役CEOの平嶋遥介氏に、事業への思いをうかがった。

心動く出会いを機に起業へと舵を切った

ーー経歴と起業を決意した経緯を教えてください。

平嶋遥介:
大学院で情報システム工学を研究した後、大手SIerに入社しました。向上心を持って時間外も業務に励もうとしましたが、必要のない残業は推奨されておらず、思うように働くことができなかったため、起業へと気持ちが動いていきました。今思うと良い労働環境でしたが、上昇志向が高かったゆえの心境の変化でした。

ーー創業秘話についてお聞かせください。

平嶋遥介:
初めて起業するリスクを考え、まずスタートアップで働こうと考えました。そんな折、エンジニア採用イベントで出会ったのが弊社の前代表取締役CEOである村田です。起業したい人材を探していた村田から「技術的な問題で困っている会社と、シニアエンジニアのマッチングサービスをやりたい」という話を聞きました。

「このサービスがあれば、人材不足に悩む会社は救われ、シニアエンジニアは企業に所属しなくても生きていける」。その話にとても共感して、2回目に会ったときには、会社を辞めて起業することを決めていましたね。それからわずか1ヵ月半後に共同創業しました。

人にやさしい事業と環境にやさしい事業を展開!

ーー高性能パソコン開発事業に方向転換した経緯と事業の強みを教えてください。

平嶋遥介:
マッチングサービスは検証した結果、直前に断念することになりました。代わりの事業を検討していた頃、東京の秋葉原で少しブームになっていた暗号資産のマイニングが目に止まりました。仕事に行っている間に、ゲーム用のパソコンにマイニングをさせていると、月に1本ゲームが買えるくらい儲かる状況で、ゲーマー向けのイベントも開催されていたのです。マイニングには高い性能のパソコンが必要ということもあり、熱中していたのは一部の人たちだけでした。それなら、自分たちで高性能パソコンを開発・運用したらおもしろいのではと考えたことが始まりです。

他社は卸販売のみの場合が多いのですが、弊社はエンジニアがいるため、マシンの開発から自社システムでのサービス提供、サポートまでワンストップで行うことができます。

ーー貴社の高性能パソコンはどのような方が購入されるのですか。

平嶋遥介:
中小企業の経営者が、節税などの効果を期待して購入されることが多いですね。購入した後は、マシンを貸し出したり、弊社のデータセンターに預けて稼働させたりして、報酬の暗号資産を受け取ったりすることができます。

ーー貴社のデータセンター事業の強みは何ですか。

平嶋遥介:
電力効率を上げることで低価格を実現できていることです。マイニングに必要な処理能力を得ながら、コストも抑えたいという両方のニーズに応えることが可能です。

それに加え、福井県のモジュール型のデータセンターでは、冷房を使わず、自然の吸排気を使用しています。冷房を使う冷却方法が多い中、空気の流れを調整して、自然吸排気のみで冷却するものを福井大学と共同開発しました。冷房を使用しないことで、環境に配慮しながらコストを抑えることが可能になりました。

最新技術でもっと自由に生きていく!そんな社会をつくりたい

ーー貴社ではどのような能力、マインドを持つ人が活躍できますか。

平嶋遥介:
弊社はVALUEに『勇者マインド』を掲げており、「先頭に立ってやっていくんだ」というマインドを持って、自分で考えて動ける人が活躍できると思います。加えて、ある程度リスクをとれることも大事です。リスクを減らすことばかりに目を向けていると、機会を失うことになります。機会損失こそがリスクだということを考えられる人がいいですね。

私は採用の面談で「野望は何ですか」と聞きます。現実的ではなくても大きいことを語ってほしいですね。以前、社内でも「手を挙げないと成長できないよ」と話をしました。「マネージャーになりたい」と公言していれば、ポジションを変える時に「挑戦してみるか」と声をかけられます。発信さえできない人は、何もできないと思うんです。周りに伝えることで、チャンスを得られることも多いですから。

ーー今後の展望を教えてください。

平嶋遥介:
2023年に弊社は、株式会社トリプルアイズのグループに入りました。これにより得た信用を活かして、取引先を広げていく予定です。売上の安定を図るために、営業の人員を増やして体制を整え、マネージャーの教育にも注力したいですね。

また、弊社は「自由を創る」というビジョンを掲げています。今の社会は制約が多くありますが、最新技術の活用で新しい社会がつくられ、もっと自由に生きていくことができると思っています。しかし、技術を使うための基盤がなければ誰も使えません。最新技術を広げて育てていくために、弊社が基盤をつくって、社会をもっと自由にしていきたいです。

日常から想像し続けることを大事にして、事業案を膨らませ、スピード感を持って取り組んでいきたいですね。

編集後記

“未来を常に想像し続けるテクノロジー企業”を目指し、柔軟にスピード感を持って突き進んできた株式会社ゼロフィールド。平嶋CEOは大志を抱いて声に出すことを、誰より大事にし、「今後は弊社が持つ技術とトリプルアイズが持つ社会実装力を組み合わせて、おもしろいサービスをつくりたい」と話す。彼が創り出す“自由”な社会へのストーリーは、まだ始まったばかりだ。

平嶋遥介/上智大学院理工学研究科を卒業後、2016年に株式会社NTTデータに入社。2017年に株式会社ゼロフィールドを元CEOの村田氏と共同で創業。CTOとして自ら研究や開発を行う。2023年に代表取締役CEOに就任。