
収益の拡大やリスク分散など、さまざまな目的で多角化経営を行っている企業は多い。そして、多角化戦略の方向性は企業によってさまざまである。
その中でも、株式会社 GENERAL MERCHANT EXCLUSIVE(以下、GEMEX)は、アパレル自社ブランド、アートギャラリー、小売り、美容サロン、デジタル(IT)、教育、貿易など多様な分野で事業を展開している革新的な企業といえるだろう。
今回は、新規事業展開において同社が重視する核心的な価値観をはじめ、今後の事業展望について、代表取締役 兼 CEOの齋藤氏から話をうかがった。
父親と一緒に仕事をしていたことが起業のきっかけとなった
ーー起業された経緯を教えてください。
齋藤高大:
貿易業に役立つ知識を学ぶために関西外国語大学に入り、卒業後は父が経営する貿易会社に5年間勤めました。入社当初は父の会社を継ぎ、さらに発展させたいと考えていました。
しかし、父親とともに仕事をしていく中で、次第に起業して自分の力を試したいという思いが湧いてきました。一緒に働くうちに父との衝突が増え、ある日、大喧嘩に発展したことが起業の転機となったのです。
ーーお父さまの会社では、具体的にどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
齋藤高大:
父の会社の業務は主に輸出業でアメリカへの鉄鋼製品の輸出、顔料や染料の輸出、韓国へは衣料用の撥水剤や木材用の接着剤の輸出、中国向けに日本製の芝刈り機や剪定ハサミの輸出など多岐にわたります。
20年以上前は今ほどインターネットが発達していない時代だったため、海外出張が多く、現地の商社との打ち合わせが日常でした。
海外に向けて商品を販売する輸出業は輸入に比べて、海外決済や書類等においてよりハードルが高く、海外からの輸入の割合を社内での比率として上げるべく、私自身はもっと輸入に力を入れるべきだと考えていました。
新規事業を展開するポイントは”好きかどうか” ”社会性” ”継続性”

ーー貴社は現在、多くの事業を経営されています。起業後、どのような形で展開されたのでしょうか。
齋藤高大:
父の会社で扱う輸出商品の1つにアパレルがありました。日本製のブランドと契約をし海外へ輸出するというビジネスがあり、海外のバイヤーが毎シーズン日本へ来日し、1年に4回以上私がアテンドをしていました。
服の卸売りのサイクルや様々な背景を知り、もともと洋服が好きだったこともあり、アパレルのセレクトショップをやろうと決めて独立をしたのが最初のスタートです。
ーーメイン事業はアパレル関連ということでしょうか。
齋藤高大:
創業以来、アパレル事業を続けており、自社ブランドをはじめとした商品の製造、卸売、小売などを手がけ、売上高の多くを占めています。
それ以外にも、ヘッドスパや美容サロン、キッズスクール、子ども向けの福祉施設など、幅広い事業を展開しているので、特定のメイン事業は設けていません。
ーー新規事業を展開する際のポイントについてお聞かせいただけますか。
齋藤高大:
一見すると事業に関連性がないように思われるかもしれません。しかし、全ての事業の根幹には共通の理念があります。
それは「自分や友人、家族がこのサービスを受けるとしたらどう感じるか?」、自分たちが”良い”と思えるサービスを”いい人材”と一緒に、共感していただけるお客様や利用者様を一人ずつ増やしていくだけの至ってシンプルなフローにあります。
新規事業をスタートするポイントは、①その事業に我々が情熱を持って好きだと思えること、②誰もが認めてくれる社会性のある事業であるということ、③会社として中長期で展開するうえで、収益性や継続性があるということが大前提です。
加えて、事業を進めるにあたり、ふさわしい人材がいて、働きやすい環境や場所があることが条件だと思います。
「事業への興味」というのは、私個人に限定した話ではありません。たとえば、信頼を築いた従業員が何かをやりたいと提案してきた場合でも、社会性や持続性があり、私や幹部が共感できるものであれば、新規事業として採用します。実際に、エステサロン系の事業はある女性社員の要望を受け、後押しする形で事業展開に至りました。
多様な事業展開で会社としてのさらなる成長を目指す
ーー社内で積極的に取り組んでいることや重要視していることを教えてください。
齋藤高大:
100人程いる社員と毎日会い、会話ができるわけではないので、それぞれの事業において信頼のある、人間力のある人材を据えながらできるだけ全体のネガティブな意見等も含めて抽出できるように意識をしています。また弊社は女性社員の割合が多いため、「子どもが急に体調を崩した」などの事態にも臨機応変に対応できるように、周りのスタッフも含め、仕事のしやすい環境の整備に取り組んでいることも特徴の1つかと思います。
事業においては、「自分や友人、家族がこのサービスを受けるとしたらどう感じるか?」ということを常に意識しています。この点に共感してくれる方と一緒に仕事がしたいですね。
ーー今後はどのような事業展開を想定していますか。
齋藤高大:
起業当初から、ずっと総合商社に憧れを抱き続けています。多様な事業を展開することで、時代のトレンドに対応でき、会社としてのリスクヘッジにもなります。仮にひとつの事業の継続が難しくなっても、ほかの事業が成長していれば、雇用が守れます。会社として存続できるでしょう。
特定の事業に重点を置かず、バランスを保ちながら会社を大きくしていきたいですね。将来性があり、社員が面白いと感じるものに投資を続けていきたいと考えています。
ーー採用の際に重視している点について教えてください。
齋藤高大:
採用時は、その方が持つ技術やパフォーマンス以上に、「素直さ」「向上心」「愛情」の3つを重視しています。弊社のフィロソフィーに共感し、一緒に成長できる人材を求めています。
編集後記
新規事業を展開する際は、単に利益を追求するのではなく、社会性や継続性を重視しているという齋藤社長。「将来性があり皆が面白いと感じているものに投資を続けていく」という社長のポシティブ、かつ温かみのある言葉に、さらなる成長への期待が高まる。

齋藤高大/1979年生まれ。関西外国語大学卒業。父親の経営する貿易商社へ入社し、5年の修行期間を経て、2006年に株式会社 GENERAL MERCHANT EXCLUSIVEを創業。代表取締役 兼 CEOに就任し、アパレル、小売、エステサロン、デジタル(IT)、スクール、海外貿易など、幅広い事業を展開している。