※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

株式会社品川グループ本社は、富山県のトヨタ自動車系ディーラーなどで構成される品川グループの統括会社として2017年に設立された。グループ全体では、自動車の販売やメンテナンス、レンタカー、カーリースなど幅広いモビリティ事業を展開し、今では富山県内に50を超える拠点を持ち、従業員数は1,200人を超える。

1917年10月1日に赤いT型フォード3台を富山県に導入しタクシー事業を始めたことから、その歴史がスタートした同グループ。100年以上の長い歴史を紡ぎ、成長し続けてきた背景について、同社の代表取締役社長、品川祐一郎氏に詳しい話を聞いた。

100年以上愛される会社の経営理念と健康経営への取り組み

ーー貴社の理念について教えてください。

品川祐一郎:
弊社の経営理念は「すべての人々の幸せと発展のために」です。すべての人に幸せなカーライフと人生を送ってもらいたいと考え、お客様の満足、社員の働きがい、地域社会の発展の3つをバランス良く高いレベルで実現する「三方よし」を使命としています。

また、社是を「われわれは和をもって誠実なサービスで信用を築き愛社精神に徹しよう」として、社員のエンゲージメントを高めることも重視しています。

トヨタ自動車の豊田章男会長は「過去、現在、未来に責任を負うことが企業の存在意義だ」とよく言っていますが、私自身もこの考え方に共感しています。弊社は107年目を迎える会社ですが、過去、現在、未来すべてに責任を負いながら、次の100年をつくっていきたいと思っています。

ーー現在、力を入れている取り組みは何でしょうか。

品川祐一郎:
SDGs、DX、働き方改革、働きがい改革の4つに特に力を入れて取り組んでいます。たとえば働き方改革でいえば、ワーク&カフェスペースを備えた施設「千歳サロン」でリモートワークができるようにしたり、一部拠点をフリーアドレス化(固定席を持たず好きな席やスペースで自由に働けること)したりしました。

そのほかにも、残業を減らして月1回程度は必ず有休を取得してもらう、社内に保育所を設ける、時短勤務の適用を拡大するといった取り組みも行っています。また、父親の育休取得にも力を入れており、取得率は91%にものぼります。

働きがい改革でいえば、人事評価のフィードバック体系を確立し、職種ごとのキャリアパスをつくりました。「健康経営優良法人2024」にも認定されるなど、社員のWell-being(心身ともに健康な状態)を大切にしている点も弊社の特徴です。

経営理念を自ら体現して社員の働きがい向上に尽力

ーー家業を継ぐまでの経緯を教えてください。

品川祐一郎:
私は4代目の社長になります。弊社は同族経営で、幼い頃から「あなたが社長を継ぐんだよ」と周囲から言われていたこともあり、将来は社長になるのだと自然と思っていました。

東京大学経済学部を卒業後は日本興業銀行(現みずほ銀行)に入社しました。社長になるためには何を勉強し、どの学部で学び、どの業界や会社に勤める必要があるかを逆算したうえでの選択です。

弊社グループに入社してからは、創業者の曽祖父がつくりあげた事業をリスペクトしようという思いが強く、何かを変えなければいけないという思いは当初ありませんでした。

ーー社長就任後に苦労したことはありますか。

品川祐一郎:
社長になるために自分が準備してきたことは決して無駄ではなかったものの、それだけでは足りないと気づいたことです。社員のエンゲージメントを高めるためにはどうすれば良いのか、思い悩む日々が続きましたね。

そして、足りないものは何だろうと考えた結果、大切なものは経営理念だと気づいたのです。誰のため、何のために仕事をしているのかを社員に示すことが必要だと気づき、また社長である私自身も会社の経営理念を体現しなければいけないと思うようになりました。

地域のモビリティプラットフォーマーを目指して

ーー会社が目指す姿を教えてください。

品川祐一郎:
弊社は今まで自動車の販売やメンテナンスの会社としてやってきましたが、今後はモビリティという枠組みの中で事業フィールドをさらに広げていきたいと考えています。たとえば一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」や、異なる交通機関のサービスをITの力で1つのプラットフォームに統合し、シームレスに使うことができる「MaaS(Mobility as a Service)」アプリの普及です。

私は今後、モビリティプラットフォームを運営している人・企業が地域の交通社会をマネジメントする時代になっていくと予想しています。モビリティプラットフォーマーが自動車の販売やメンテナンス、リース、レンタルなどをすべて行うという状況です。

弊社としても、そういった時代の中でただ自動車の販売やメンテナンスを行うのではなく、「MaaS」アプリなどを活用し、地域のモビリティプラットフォーマーに変わっていきたいと考えています。

編集後記

チームワーク・誠実・貢献・感謝・規律・成長・ポジティブ・チャレンジ・改善・リーダーシップの10個を行動指針として掲げている品川グループ。品川社長は「行動指針や経営理念など、グループが大切にする価値観に共感してくれる人材を求めている」と話した。

変化の激しいモビリティ業界において、品川グループがどのような動きを見せるのか。富山県を代表する企業でありながら、日本のモビリティ業界で確かな地位を築く同社の次の一手が楽しみだ。

品川祐一郎/1970年富山県富山市生まれ。東京大学経済学部卒業後、1993年株式会社日本興業銀行に入社。1999年、富山トヨタ自動車株式会社取締役に就任。2008年より富山トヨタ自動車株式会社(現:トヨタモビリティ富山株式会社)代表取締役社長に就任。2017年に株式会社品川グループ本社を設立し、代表取締役社長に就任。2019年より富山商工会議所副会頭を務める。