インターネット通販の普及により、家にいながらでも欲しいものが簡単に手に入るようになった。オンライン決済を利用すれば、当日に商品が届くことも珍しくない。
このシステムを支える背景には、さまざまな企業の努力がある。販売会社や運送会社はもちろんのこと、仕入れ業者から仕分け業者まで、多くの企業がネット通販に関わっている。今回はその一翼を担う、株式会社加勢に注目した。
即日発送を可能にするためのシステムや、ドライバー不足解消を担うシステムとは。代表取締役の西澤静人氏に、事業内容や今後の展望をうかがった。
物流に関する全てのニーズに応える事業
ーー貴社の社長に就任するまでの経緯を聞かせてください。
西澤静人：
当時存在したワールド・ロジ株式会社を退職後、個人で物流関係のコンサルティング会社を立ち上げました。その後、加勢の社長だった風間氏から誘いを受けて、弊社に入社することになりました。そして、2023年に私が代表取締役に就任しました。
ーー貴社の事業内容について教えてください。
西澤静人：
加勢グループでは、「物流総合ソリューション」という呼び方をしています。この事業では、その名のとおり、人材、車、倉庫だけでなく、システムや消耗品、保険など、物流に関するすべてのニーズに応えるサービス、コンテンツを提供しています。1つの会社ですべてが完結することから、「かゆいところに手が届く事業」だと自負しています。
また、前職のワールド・ロジで学んだ、企業の物流業務を受託する3PL（サード・パーティー・ロジスティクス）のナレッジを活かし、より生産性の高い方法を提案できていると考えています。他社に比べて特殊であることや、大手が嫌うような手間のかかることをメインに行っていることが理由です。他社の方が見学に来られても「これは真似できない」と肩を落として帰ってしまうこともありますね。
独自システムで業務効率化を実現し、人材不足問題にも対応
ーー貴社ならではの強みはありますか。
西澤静人：
弊社には、他の会社ができない、あるいは行ったことがないことを実現できる技術があります。具体例をあげると、WFM（ワークフォース・マネジメント）というシステムです。
このシステムでは、スタッフ個人のデータを集計し、各スタッフが遂行可能な仕事量を管理します。この仕組みを利用し、スタッフの能力と人数を計算することで、効率のよいシフト作成が可能になるのです。
ーーWFMを利用したことで、どのような成果が表れましたか。
西澤静人：
ある機器メーカーのお客様との実例があります。そのお客様は、年末の繁忙期に、翌日締め切りの出荷業務を消化できていませんでした。しかし、弊社のシステムを導入した結果、繁忙期のさなかでありながら当日出荷が可能になったのです。
ーーシステムの課題点について教えてください。
西澤静人：
WFMは使いこなすのが少々難しいという課題点があります。使いこなすことができれば便利なシステムですが、かなり操作が複雑であるため、まだ多くの会社に導入できていないというのが現状です。
社内に、WFMのライセンスを持つ社員が6人しかいないということも大きな課題になっています。かなりマニアックなシステムなので、高い目標のために努力を惜しまない30代前半の方に習得してもらいたいと思っています。弊社のシステムを使いこなすには相当な時間を要するため、プライベートを犠牲にできるほどのやる気を持って頑張れる方と一緒に進めていきたいと考えています。
経営幹部から管理部まで、事業拡大のために基盤づくりを徹底
ーー社内の人材育成についてお話しいただけますか。
西澤静人：
経営幹部の育成に力を入れるため、インドネシアから20代前半の人材を引き抜いてきて、日本の物流のノウハウを教えています。その中で「もっと日本の経営を学びたい」という人物がいれば、ゆくゆくは後継者にしたいと思っています。
それと同時に、管理部も強化していく必要があると感じています。現在、優秀な管理部がサポートも含めて3人しかいません。今は全てを統括した管理部があるだけなので、総務部・労務部・人事部・財務部をしっかり分担できるように、人材育成を進めていきたいですね。また、派生したグループ全体を支えてもらうために、税理士や社労士の資格を持った人材の募集も行っています。
編集後記
お世話になった先代社長に代わり、急遽社長に就任することになった西澤静人氏。相談できる人がいない中で、持ち前の強い精神力と、前社で身につけた知識を駆使し、さまざまな苦労を乗り越えた。
時間やプライベートを犠牲にすることを厭わない人物が、経営者としての資質を持っていると西澤社長は考える。これからもそのマインドで株式会社加勢は社会問題を解決に導くために、システムの普及に奔走するだろう。
西澤静人／1980年、千葉県生まれ。市川学園高等学校卒業。飲食店や倉庫業に従事した後、2003年に総合物流会社のワールド・ロジ株式会社（現在は消滅）に入社。2010年に退職後、株式会社加勢に入社。2023年に代表取締役に就任。グループ会社の株式会社加勢ワークアシストおよび株式会社猪名川加勢の代表取締役も兼務。
