※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

1996年の設立以降、不動産の運営管理を代行する「プロパティ・マネジメント」を軸に成長してきた株式会社アートアベニュー。賃貸物件の「仲介」ではなく「管理」のプロとして、多くのオーナーに支持されてきた。代表取締役社長の藤澤雅義氏に、創業のきっかけや現在の事業内容、そして今後の展望についてうかがった。

27年の実績の結晶!不動産の運用代行ビジネス

ーーアートアベニューを創業するまでの経緯を教えてください。

藤澤雅義:
大学卒業後、就職せずに音楽活動に励む中、たまたまアルバイトとして不動産業界に入りました。学生時代に軽音楽サークルの部長を務めるなど、もともと組織マネジメントが好きだったことから仕事の方が面白くなり、そのまま就職した次第です。

起業のきっかけは、仲介会社やハウスメーカーを経て、「賃貸管理」というジャンルに辿り着いたことです。賃貸管理はプロパティ・マネジメント(PM)とも呼ばれ、立場としては「オーナーのエージェント(代理人)」にあたります。ハウスメーカー勤務時代の私は、「家を建てる側がエンドユーザーのことを考えていない」と感じていました。不動産業界に関わるならばオーナーをサポートし、入居者とのご縁をつなぐ仕事をしたいと思ったのです。

ーー会社を立ち上げた後の流れはスムーズでしたか?

藤澤雅義:
私たちは仲介業務をせず、お預かりした不動産の運用を代行します。仲介料を得るビジネスモデルではないため、創業当初は大変な思いをしましたね。管理業はストックビジネス(継続的な契約によって利益を得るビジネス)です。愚直にコツコツと営業を重ねて、27年目でやっと管理戸数7,500戸・預り総資産額1,000億円に到達しました。

2001年に設立したオーナーズエージェント株式会社も相乗効果を生んでいます。不動産会社を支援する当該業務の中でも、入居者の電話対応を代行するコールセンターは17万世帯と契約しており、売上の大半を占めています。人手不足の管理会社が「空室を埋める仕事」に集中するためには、クレーム対応もできる外部委託が効果的なのです。

働くみんなが幸せになるための会社を目指して

ーー藤澤社長が大切にしている思いをお聞かせください。

藤澤雅義:
コールセンター業界は派遣・アルバイトで人件費を安くする傾向がありますが、賃貸管理の分野はとても難しいのです。オーナーズエージェントはコストの削減よりもロイヤリティの高さを重視し、社員を中心にスタッフを構成しています。受注数から見ても、入居者対応コールセンターとしては日本一だと自負しています。その上で、一番大事にしているのはやはり従業員です。

仕事が楽しいあまり働きすぎてしまう人や、家族と過ごす時間を疎かにしてしまう人がいます。人は基本的に幸せな人生を歩むために働いているので、時には休暇制度を利用して仕事をセーブすることも大切です。もちろん一生懸命なスタッフには助けられていますが、その人がいないときは違う人が対応してこそ「組織」だと思っています。

こうした考えに至ったきっかけは、2013年に雑居ビルから大きくステップアップして、高層ビルの新宿NSビルに入居したことです。転居にあたって銀行からお金を借りるなど、リスクを負った際に「なぜこんなことをしているのか、自分は何がしたくてこんなことをしているんだろう」と自問する瞬間がありました。その時に「この会社はここで働くみんなが幸せになるためにある」と実感したのです。

オーナーの味方となるべく新たな戦略を展開

ーー貴社の強みを教えてください。

藤澤雅義:
不動産の価値(値段)は、家賃収入をそのエリアのキャップレート(期待利回り)で割り戻すことで決まります。つまり、いかに物件の家賃収入を上げられるかにかかっているのです。お預かりした不動産の価値を高めることを目的に「オーナーのエージェントに徹する」というのが弊社の特徴です。

オーナーのリスクを減らすべく、不良借家人を退居させやすい「定期借家権」にもいち早く取り組み始めました。新しいチャレンジとして、最近は宮古島にホテルや飲食店が集う「宮古横丁」をつくり、観光発展事業にも注力しています。

ーー入居者増加に向けた独自の工夫にはどのようなものがありますか。

藤澤雅義:
管理戸数1万戸を達成するために、会社のブランディングとマーケティングに努めています。営業の力でというよりも「組織全体の力で契約を増やす」という考え方です。セミナー開催やWebサイトの運営、書籍出版もブランディングに活かしています。今後はコンセプトを含めたデザイン性にもこだわり、独自の物件を建築・販売していく予定です。

個々の生産性に基づく給料アップで、さらなる高みを目指す

ーー今後の展望をお聞かせください。

藤澤雅義:
これからも賃貸管理とコールセンター事業を2本の柱とし、新規事業にもどんどんチャレンジしていきます。たとえば、多額の資金や土地を持っていない方でも不動産に投資しやすいスキームをつくれないか模索中です。

会社の規模を拡大し、生産性を向上させるため、2030年までに従業員800人、売上500億円を目指しています。また、この4年間は平均6%の昇給を実現しています。仕事の評価はやはり数字で示すべきなので、極論としては「給料の高い会社」にしたいですね。

編集後記

オーナーや社員をはじめ、「目の前の人に誠実でありたい」という藤澤社長の思いが株式会社アートアベニューを引っ張り上げてきた。昨今、賃貸市場が拡大傾向であることや、不動産投資に興味をもつ人が増えつつあることから、オーナーとエンドユーザーにとことん寄り添う藤澤社長は、柔軟にアイデアを形にして事業を拡大し続けることだろう。売上500億円を達成する日もそう遠くはないと思われた。

(オフィス内にあるバーカウンターにて)

藤澤雅義/1961年生まれ。大学卒業後、賃貸仲介会社やハウスメーカー、賃貸管理会社を経て1996年に独立。株式会社アートアベニューを設立し代表取締役社長に就任。2001年にオーナーズエージェント株式会社、2017年に株式会社アートアベニュー宮古島、2018年にオーナーズエージェント沖縄株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。