※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

美しさと豊かさを追求すること。株式会社サンコールは一貫してそれを目指した商品開発に取り組んでいる。代表取締役社長として会社を率いる今牧亮輔氏は、美容を通じて人々の人生に寄り添い、心の豊かさを育むことこそが自らの使命だと話す。その言葉には頭髪化粧品の総合メーカーとしての誇りとこだわりが込められている。今回のインタビューではその経営哲学と同社のものづくりにかける思いに迫った。

父親の背中が教えてくれた、経営者としての原点

ーー社長ご自身のキャリアと経営者を志したきっかけを教えてください。

今牧亮輔:
大学卒業後はエンジニアとして働いていましたが、すぐに美容の世界の魅力に引き込まれました。やがてアメリカに留学して美容師の資格を取得し、その後日本に戻り弊社に入社しました。

私が経営者を志したのは、前社長である父親の姿がきっかけでした。父は経営者として働いていましたが、本当に楽しそうに仕事に取り組んでいました。自分も同じように楽しめる仕事がしたいと思ったことからいずれは経営者になりたいという思いを強くしました。

ーー入社後のキャリア形成はどのような流れだったのでしょうか。

今牧亮輔:
入社後は営業部に配属となり、美容室への営業活動に従事しました。お客様のニーズを肌で感じることができ、商品開発へのアイデアも数多く得ることができました。その後、経営企画室と企画部で経験を積み、2015年に代表取締役社長に就任しました。

時代を超えて愛されるブランドづくりを目指して

ーー競合が激しいシャンプー業界で貴社の強みは何でしょうか。

今牧亮輔:
弊社の大きな特徴は、ブランドのライフサイクルを非常に長く設定していることです。美容業界は流行り廃りが激しく、短期間で次々と新商品が投入されることが特徴ですが、弊社は1ブランドを長い年月をかけて育てていきます。

たとえば、ロングセラーのシャンプーは発売から25年以上たった今でも多くのお客様に愛用していただいています。リニューアルなどで時代に合わせた改良は行いますが、基本的にはブランドを長期的に大切に育てていく方針です。

ーー商品開発に対するこだわりを教えてください。

今牧亮輔:
私たちはさまざまな商品開発に取り組んでいますが、開発段階の優先順位としてはあくまでも最高のものをつくることが一番で、コストに気を囚われすぎてしまわないよう心がけています。原材料ひとつとってもできる限り妥協せず、美容師の方々が満足し、施術を受けるお客様にも喜んでいただけるものを積極的に使っています。

たとえば、弊社の主力ブランド「ボタニエンス」の開発では、名前の由来でもある「ボタニカル」と「サイエンス」の両方の発想を取り入れた成分を配合することで頭皮や髪に多角的にアプローチできる商品づくりを実現しました。結果として良い商品ができれば、それに相応しい価格を付けて世に問うのが弊社のスタイルです。

ーー開発した商品を販売する際にどのような戦略をとっていますか。

今牧亮輔:
弊社では、営業とインストラクターの役割を一体化させています。それにより、単に商品を販売するだけでなく、美容師の方々に対して専門知識を直接お伝えできるメリットがあります。つまり、製品の特性や使い方を熟知した営業スタッフが実演を交えながら丁寧に説明を行うことができるのです。

たとえば、あるトリートメントの販売時には、髪質に合わせた使い方や、他の製品との組み合わせ方など、細かいポイントまでお伝えしています。このような販売戦略は弊社ならではと言えます。

美容の未来を切り拓く、新たな販路開拓への挑戦

ーー近年の美容室の動向について教えてください。また、その変化に対して貴社はどのように対応していますか。

今牧亮輔:
近年、美容室の数はコンビニエンスストア以上に増加しています。一方で、一店舗あたりの従業員数は減少傾向にあり、少人数体制での運営が主流になりつつあります。こうした環境の中で、私たちは新規取引先の開拓に力を入れています。業界の展示会への出展を通じて、多くのディーラー様とつながりを持つことができました。

また、商品の品質の高さから、一般のお客様からもお問い合わせをいただくことが増えてきました。こうしたご縁を大切にしながら、着実に販路を広げているところです。ただし、私たちは一般消費者への直接販売ではなく、あくまでも美容室経由での販売を基本としています。プロの美容師によるカウンセリングこそが、お客様に最適な商品をお届けするために欠かせないことだと考えているからです。

美容室のない地域にお住まいの方からのご相談も増えてきたので、そうしたエリアでの販路拡大も検討しています。美容師の方々とともに、美容の未来を切り拓いていきたいと考えています。

美しさを通して人々の心を豊かにする経営哲学

ーー美と豊かさを追求するという経営理念について、その思いに至った背景をお聞かせください。

今牧亮輔:
利益を追求することも大切ではありますが、それだけが目的になってしまえば本末転倒です。美容業界で働く私たちにとって、本当に重要なのは「美」と「豊かさ」を提供することなのです。金銭的な富だけが豊かさではありません。美容を通して人々に喜びと心の豊かさを届けることこそが、私のライフワークであり、経営の原点なのです。

たとえば、新社屋の建設に関するエピソードはその思いを具体化したものです。以前の社屋は老朽化が進み、美容メーカーの建物とは思えない佇まいでした。そこで私なりの理想を形にしようと、新社屋を建設することにしました。

広々とした開放的な空間、工夫を凝らした内装など、この建物には私の美と豊かさを追求する哲学が詰まっています。社員や来訪者からお褒めの言葉をいただくこともあります。これからも私たちの理念を体現するような活動を続けていきたいと思います。

編集後記

今牧社長の「ブランドを長期的に育てる」という信念に強く心を打たれた。一時的な利益を追求するのではなく、お客様に末永く愛されるブランドを目指す姿勢は、流行の盛衰が激しい現代においてこそ、必要とされるものではないだろうか。目先の売上よりも、100年後も愛され続けるブランドをつくることへの並々ならぬ情熱で走り続ける同社がこれからも美容業界をリードし続けることを期待したい。

今牧亮輔/1977年生まれ。大阪府立大学在籍中にオーストラリアに留学。卒業後、アメリカでコスメトロジーを学ぶ。2004年、株式会社サンコールに入社。営業部、経営企画室、企画部を経て、2015年より代表取締役社長に就任。